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異界調整官 ~異世界で官僚、奮戦す~  作者: 水乃流
第五章

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ヴァレリーズは目立つ

「これ」


 高速道路に乗ったところで、アンナさんが10枚くらいの紙の束――資料を手渡してくれた。なにげに文字がびっしり。車内で読むには、すこししんどいかなと思っていたら、セナさんが、ハンドルを握りながら口頭で概要を説明してくれた。


「“(ザ・ホール)”を抜けるためのDIMO調査員というIDは、巧妙に偽造されたものだったっす。で、白人の方は、裏社会では名の知れた運び屋で、本名ジーン・ヨーク、通称スクリズヌォとか言う奴です。もうひとりの方は本名不詳で、通称ハンマー。こっちは……あー、いわゆる殺し屋っすね」

「ぶ、物騒な人たちですね」


 私、そんな人たちとヘラヘラ握手したのか。うぅ、ぞっとする。それにしても、運び屋と殺し屋が妖精を誘拐してどうしようというのだろう? 妖精の胆が不老長寿の妙薬! なんて伝説はなかったと思うけど。


「それにしても、短時間でこんなに情報を集められたんですね」

「ラングレー」

「え?」


 助手席からの返答に、戸惑う。ラングレーさんという方が、情報を集めてくれたのかな?


「すんません、アンナは見た目かわいい系なのに口下手なんすよ。ちな、ラングレーってのは、CIAのことっす。奴ら元々、CIAからマークされてみたいなんすよ」


 アンナさんもそうだけど、自身の言葉もギャップがあるセナさんの解説に、今度はヴァレリーズさんが疑問を口にする。


「CIAとはなんだい? サクラ」

「えぇとですね、異界(あっち)と同じようにこの世界(インタタス)にもいくつか国があって、その中でもっとも力のあるアメリカという国の情報機関です」

「アメリカは知っている。王宮にも特使とやらが来たからな。上から目線で気に食わん奴だった」


 あっははー、ハミルトン特使のことかな? 私の赴任前に一悶着起こした人だ。


「それはそれとして、CIAさんはなぜ彼らを止めてくれなかったんですかね?」

「目的が分からなかったからでしょうねぇ。それに、自分のとこ(アメリカ)に影響がなければ、彼らは基本、情報を集めるだけ干渉しないっす。正義の味方、って訳じゃないっすからねぇ。今回も、誘拐されたのが妖精じゃなければ、こんな風に情報を流してくれることはなかったでしょうね」

「そんなものですか」

「そんなものっす」


 福島県内の東北自動車道は、わりとカーブが多い。乗り物酔いの薬を飲んでいても、ヴァレリーズさんにはキツかったみたいだ。栃木に入っても顔色が優れない。


「もうすぐ蓮田サービスエリアですね。少し休みますか?」

「すまない、そうしてもらうと助かる」

「わかりました。セナさん、悪いのだけれど、次のSAに停まってもらえる?」

「了解、っす」


 しばらくして、車はSAで止まった。ヴァレリーズさんと私、セナさんが降りた。


「<パム>はお留守番ね」

『了解しました、マム……可能であれば、何か食べるものを買って来ていただけませんか?』

「いいわよ、って、あなた食べもの必要なの?」

『いえ、私は食物を摂取する必要はありません……この世界を理解するためです。お願いします』

「そう、なの? わかった」


 そういってスライドドアを閉める。最近のスライドドアって、自動で閉まるのね。


「なんだか、ごちゃごちゃとしているな、ここは」

「いや、そんなことは……よくあるSAですよ?」


 平日のSAだ、それほど人がいるわけではないが、ヴァレリーズさんにとってはごちゃごちゃとした印象なのだろう。


「王都の市場より、人少ないでしょ」

「言われてみれば、そうなのだが。全体的な印象というか」

「慣れてください。東京はもっとゴミゴミしていますよ」

「そうなのか。うむ、覚悟しておこう」


 売店の方でセナさんが、手を振って呼んでいる。あれ、アンナさんは? と思ったら、私たちの背後にいた。いつの間に。


 その後、売店でお茶を買ったり、軽食を買ったり。あぁ、ス○バのコーヒー久しぶり。ヴァレリーズさんは、自動販売機に興味を持ったようだ。


「魔法か?」

「いえ、機械です。そもそも、こちらの世界では魔法は使えませんよ」


 いや、そうでもないとヴァレリーズさんが呟いた。


「ジョイラント師も言っていたが、こちらの世界にも魔素(マナ)の流れがある。微かだがね」

「そうなんですか? ダニー君の時には、魔石のお陰って聞いていますけど」

「もしかしたら、彼が来た時よりも魔素(マナ)が増えているのかも知れないな」


 かなりの量の魔石がこちらの世界に輸入されているので、もしかしたらそのせいかもしれない。私たちには感知しようがないので、どうすることもできないけれど。


「ヴァレリーズさん、ご気分はどうっすか?」


 セナさんが、ヴァレリーズさんに問いかけた。


「あぁ、ありがとう、もう平気だ」

「それでは行きますかぁ」


 彼の顔色も元に戻ったし、そろそろ移動しないと。人が少ないとはいえ、ヴァレリーズさんの容姿は人目を引く。せめて服はスーツとかにしてもらえば良かった。目立つことこの上ない。


 <パム>には、鯛焼きを買ってあげた。



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