表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界調整官 ~異世界で官僚、奮戦す~  作者: 水乃流
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

165/188

冬は娯楽が少なくて

 季節は、秋から冬へと移り変わる。


 空から白いものがちらちらと舞い降りたその日、蓬莱村は大騒ぎになった。騒いだのは妖精たちだけどね。


「キャー、なにこれー」

「冷たーい」

「ひえひえー」

「ふわふわー」


 吐く息が白くなるような寒さの中、精霊たちが雪とダンスしている。妖精たちの翅と白い雪がキラキラと陽光に反射している様は、まるで一枚の絵画のようで時間を忘れて見入ってしまいそう。妖精たちの故郷、精霊の巣では雪が降らないという。初めて見る雪に驚いているのかもしれない。


「ああっ、だめよティール、雪を食べてはだめ」


 ティールは、落ちてくる雪を掴んでは口に運んでいた。本当に食いしん坊だ。


「冷たくて、おいしいよ」


 子供の頃、妹とふたりで新雪を集め、かき氷のシロップをかけて食べようとしたことを、ふと思い出した。とても美味しそうに見えたのだ。


「冷たいからお腹壊すのよ」


 妖精ティールに自分の経験から来る忠告をする。冷たくて美味しいと思っても、あとで公開するのだ。その時、はたと気が付いた。妖精も人間と同じようにお腹を壊したりするのだろうか? 


「食堂に行って、何か温かい飲み物をもらってらっしゃい」

「そうするー」


 他の妖精と比べて少し丸みを帯びている身体が、ふわふわと食堂の方へ向かって跳んでいった。


「みんなも、風邪引くからあんまりはしゃがないでね」


 手遅れだった。


「寒いよぅ、サクラ~、さむい~」

「ううう、うまく、とべなぁい」


 案の定である。私は、近くにいた人たちに手伝ってもらって、妖精たちを集めいそいで屋内に戻った。エアコンの暖房を最大にして入れる。残念ながら、安全面を考えて事務等にはストーブがない。とりあえず、手近にあったタオルなどを掛けてあげる。しばらくすると、気を利かせた誰かが毛布を持ってきてくれた。ありがたい。


「雪は珍しいかも知れないけれど、身体のことを考えてあまりはしゃがないこと。いい?」

「はぁ~い」


 少しずつ暖かさを取り戻したらしいルシアたちが、弱々しく返事をした。これで、少し大人しくなってくれると良いのだけれど。


 ……と、思った自分が甘かった。


 翌日。前日の曇天からすっかり晴れ上がった眩しいほどの陽光の中、妖精たちがはしゃぎ廻っていた。なにしているの、また凍えるわよという言葉が喉のてっぺんまで出かかった時、妖精たちが昨日と違うことに気が付いた。


「あ、サクラ~、みてみて~」


 私に気が付いたルシアが、近くに飛んできた。


「どお? かわいーでしょ」


 しっかりとコートを纏っていた。聞けば、昨日の騒動を知った移住者の中で、裁縫が得意という有志が集まり、妖精用の冬用コートを一晩で仕上げたのだという。


「みんなも服、もらったのぉ」


 妖精たちが私の前にやってきて、作ってもらった服を自慢げに見せてくる。さながらファッションショーのようだ。


「よかったわね。でも、寒くなったらすぐ家の中に入るのよ、わかった?」

「「「はーい」」」


 妖精たちの返事を聞きながら、よく観察する。その服は、とても一晩で作られたものとは思えない出来だった。これは想像だけど、前々から準備していた人たちがいるんじゃないだろうか。深くは追求しないけど。


□□□


 妖精が村に来て困ったこと。苦情が増えた。


「重機の周りでウロウロ飛ぶのを止めさせてください。センサーに反応しにくいので、巻き込み事故の可能性が……」

「立ち入り禁止の場所に入ってくるのをなんとかしてください」

「せっかく取り寄せたアイスを、横からつまみ喰いされたのー」


 いや、私は妖精たちのクレーム担当じゃないから!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければ、こちらもご覧ください。
異世界転霊 ~祓い屋のアフターライフ
転生ではなく、霊体で異世界に行ってしまった男のお話です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ