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異界調整官 ~異世界で官僚、奮戦す~  作者: 水乃流
第五章

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妖精たちと冬の訪れ

昨日投稿する予定だったのですが……(;´Д`)

 私がこの世界(インタタス)に戻ってきた頃に話を戻そう。


 私が飛ばされていた世界の精霊は、完全にやる気をなくしていて妖精も存在していなかったのだけれど、異界(この世界)の精霊は彼女(?)ほど絶望していたわけではなかった。積極的に関わろうとはしていなかったけれど。そうした態度も私たちと出会ったことで、気が変わったらしい。

よく分からないけれど、どうやらニブラム――というか(ドラゴン)と何かあったらしい……らしい、らしいばかりで要領を得ないが、どちらも詳細を話したがらないのでしょうがない。というか、あの精霊と細かい意思疎通ができる人間がいるだろうか?


 そんなこんなで、蓬莱村に数人の妖精が住むことになった。妖精たちにとっても人間や人間の暮らしは珍しかっただろうが、村の人たちの反応はもっと凄まじかった。なにしろ物語の中にしか存在しないと思われていた妖精が、目の前を優雅に飛び回っているのだ、興奮しない方がおかしい。新しい移住者も増えていたところだし。噂では、自衛隊の人たちも含めて、ファンクラブも出来たらしい。


 妖精の存在は、日本政府を通じて全世界に伝えられた。蓬莱村に来てひと目妖精を見たいという人間が後を絶たず、外務省はてんてこ舞いらしい。もちろん、簡単にホイホイ異界(こちら)に来られても困るので、ほとんど断っている。その代わりと言ってはなんだが、妖精の様子を撮影して送っている。名目は、記録用としてだけれども。


「サクラ、サクラ~」

「んー、ルシアどうしたの?」


 私が(最近手狭になってきた)事務所で報告書をまとめていると、開けてあった窓から妖精が飛び込んで来た。妖精の身長は、15~20センチほど。気が付くと、どこからでも入ってくる。移住者の中にはそれを嫌がる人がいる。今飛こんできた妖精――ルシアとは別の世界も一緒に旅した仲で、もう親友といってもいいけれど、でも、ちゃんと言っておかないと。


「部屋に入るときは、窓からじゃなくてドアをノックしなさいって、言ったでしょ?」

「窓から入る方が、かんた~ん」


 折角、事務棟や私の事務所兼自宅に妖精用の出入り口を付けてもらったのに、ドアをいちいち開けるのが面倒なのか、あまり使われていないようだ。


「まったくもう。で、何かあった?」


 開いたノートパソコンの上にちょこんと腰をかけて、ルシアはニッコリと笑っている。純真で素直な笑い顔。私最近、こんな風に笑えてないなぁ。


「うーんとね、広場でね、サーラとミーラがばーってやるの。サクラ呼んできてって」

「そうなの。それじゃ、今すぐ行かないと」


 サーラもミーラも蓬莱村(うち)に来た妖精だ。妖精が近くにいるようになってわかったのは、妖精の性格にも個体差、個性があるということだ。サーラは歌が好きで良く歌っている。身体は小さいのに、良く通る美しい声でとても癒やされる。ミーラは、踊りが得意でいつも村人の前で踊りを披露している。アーフは責任感が強いし、ティーンはいつも食べてばかりいる。お陰で飛ぶのが苦手になってきているらしい。その他の妖精たちについても、それぞれに得意不得意がある。人間とあまり変わらない。


 広場に着くと、目敏く私を見つけた詩がこっちよと手を振っていた。その腕の中に抱かれている律ちゃんも、一緒に小さな手を振っている。チックショウ、かわいいぜ。


「サーラとミーラが何かするって?」

「うん、空自(航空自衛隊)の人があんなもの作って」


 うん、気が付いていた。広場の真ん中にドーンと置かれているのは、アイドル歌手のコンサートみたいなステージセットだった。ただし、妖精サイズ。


「一応、村長として許可はしたけれども――あ、始まるみたい」


 音楽が鳴り始めると、ステージの照明がキラキラと輝きだした。そして中央の穴から。


「イエーイ!」


 元気なかけ声とともに、妖精が飛び出してきた。サーラだ。あぁ、歌舞伎でいうところのセリね。飛べる妖精にとっては、単なる穴だけど。


「今日は、来てくれてありがとーっ! 早速、一曲目、いっちゃおう!」


 激しい音楽に乗せてサーラが歌い出した。いつの間にかミーラ後ろで踊っている。曲は日本で今流行っているというアイドルの曲。ちょっとちょっと、確かにサーラは歌が上手いけれど、ケルト民謡みたいなゆっくりした歌だったじゃない。踊りが上手いミーラも、あんな踊りじゃなかった。誰が教えたのか。“文化を伝える時には最新の注意を払って”って口うるさく言っているのに。


「まぁ、いいじゃない。あの子たちなら教えられなくても、いつかは自分で調べたはずよ」


 詩の言うことにも一理ある。妖精たち(かれら)の知識欲は、(全員じゃないけれど)人間の子供以上だし、小さな身体を活かしてどこにでも入ってくる。歌の好きなサーラなら、隊員の聞いている音楽に興味を持っただろう。いや、おそらく興味を持ったことがきっかけで、こういうことになったのだろう。やり過ぎの感はあるけれど。


「ほら、律だって喜んでいるし。今は、妖精たちの歌とダンスを楽しみましょ」

「そうね……そうしましょ」


 コンサートは、アンコールも含め2時間ほどで終了した。バラードもあったけれど、激しめの曲が多かった。ちょっと疲れたかも。……今、歳のせいって言った奴、出てこい。



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