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異界調整官 ~異世界で官僚、奮戦す~  作者: 水乃流
第五章

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月日は百代の過客にして

ひとつ前に、登場人物紹介を投稿しています。

 ガ=ダルガとの混乱も、デラ・バウの捕縛によって一応の収束を見た……らしい。“らしい”っていうのは、私はデラ・バウが裁かれるところに立ち会っていないからだ。そもそも、私が別の世界に飛ばされている間に、デラ・バウは大陸からガ=ダルガに移送され、部族裁判にかけられるという、スピード展開。日本の司法も見習って欲しい、は言い過ぎか。異界(こっち)は、必ずしも人権が守られているとは言えないし。ガ=ダルガの内情についても詳しくないし。ただ、聞いたところによると、デラ・バウは別人のように大人しく、迫田さん曰く『魂が抜けてしまったかのよう』らしい。それはあれだ、“心が折れた”って奴ね。私としては、今後トラブルを起こさず罪を償ってくれればそれでいいかな、と思う。


 私が、いなかった間にもいろいろなことが進行していって、それは結構なことなんだけど、戻ってきた途端目が回るような忙しさで、精霊の里(“巣”って言うのには少し抵抗があってね)とオアシスとの往復と、ヴェルセン王国、ファシャール帝国との交渉(ま、これは迫田さんにぶん投げたけど)、日本政府への説明・報告等々、仕事に振り回されてあっという間に時間が過ぎてしまった。

 ゴタゴタし過ぎて、毎年蓬莱村で開催していた収穫祭が見送りになってしまったのは、なんだか申し訳ない。詩は、「(酒の肴)が不在で盛り上がらないから」なんて、言っていたけれども。その代わり、村へ戻ったら帰還を祝う大宴会をすると予告されている。うれしいような、恐ろしいような。


 そんなこんな、あれやこれがありながらも。

 季節は、春に移り変わり。日本の暦で4月1日。この日は、この世界にとって記念すべき日となった。ひとつは、かねてから建設が進められていた交流都市「エデン」の正式運用開始。まだ工事が終わっていない部分もあるけれど、行政地区や交通の要となる物流ターミナル、桟橋、滑走路は完成しているので、十分に機能を発揮できるはず。

 もうひとつは、大陸における暦と時刻の設定。大陸といっても、現時点ではヴェルセン王国とファシャール帝国だけだけど。大陸には他にも小さな国家がいくつか存在するし、東の大山脈を越えた所にある砂漠、さらにその砂漠を越えた先にも国家があるらしいが、日本(わたしたち)とはまだ接触がない。いずれ行くことになるのかな。古代竜(ゴクエンさん)もそんなこと言っていたような……。


 それはともかく、王国と帝国(ガ=ダルガも加わる予定)の時刻や暦が統一されるということで、今日はエデンの(できたばかりの)中央広場で盛大なセレモニーが行われていた。屋外になったのは、予想外に人が多くなったからだ。

 広場はエデン中心にあって、大河エイシャの方向には、この世界では初となる15階建ての高層ビルとそれに連なるビル群が見える。こちら側だけ見ると、元の世界と変わらない風景だけど、振り返れば異界(こちら)の風景が広がっている。広場周辺は3~5階建ての建物が多いので、どうしてもヴェルセン王国風に見えるけれど、エデン全体では王国風帝国風の建物が入り交じっている印象だ。ちなみに、エデンの周囲に壁はなく、大河エイシャに沿って羽根を広げた鳥のような形をしている。広場から見て北東と南東に、石造りの塔が立っていて、ちょうど鳥の脚くらいの位置かな。


 広場の中心には、円形の舞台が立てられている。ここでさっきまで賓客の挨拶が行われていた。今は、立食パーティだ。純白のクロスが掛けられたテーブルの上には、さまざまな食べものや飲み物が並べられている。王国で良く食べられている揚げ芋や豚に似た獣の肉を使った煮込み料理、帝国では定番の魚のフライや蒸し料理、イカにそっくりな煮物。日本からはローストビーフとかステーキ、肉料理がメインかな。お刺身もあるけれど、食べているのはほぼ日本人だけだ。


「ヴァレリーズさんも、お刺身食べてみます?」

「いや、遠慮しておこう」


 異界(こちら)には、魚を生で食べる習慣があまりない。帝国の一部には、生魚を食べる風習もあるみたいだけど、干したり浸けたりして食べる方が一般的だと聞いた。残念、美味しいのに。

 

 「いや、刺身も食べられないわけではないのだが、今はこちらを食べているのでね」


 そういってヴァレリーズさんは、皿から一枚の厚切り肉を持ち上げて見せた。


「黒角猛牛のステーキだ。サクラも食べてみないか?」


「え? 魔物(クリーチャーズ)じゃないですか!」


 黒角猛牛と言えば、獰猛な魔物(クリーチャーズ)のひとつだ。平原に生息しているので蓬莱村近くにはいないが、街道を移動中の商隊が襲われるということが良くある。


「ガ=ダルガで家畜化した黒角猛牛だそうだ。家畜化したから、猛牛ではなく只の牛だな」

「ただの、うし……」


 それなら食べてもいいかな? と思ったところで、スピーカーからアナウンスが流れてきた。


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