精霊探索へ
「それって、丸投げじゃないの」
<統括>の提案を聞いた、私の素直な感想だ。彼は、私に<システム>とやらの管理者権限を渡すと言ってきたのだ。つまり、私になんとかしろと……。もちろん、そんな提案突っぱねてもいいんだけど、管理者権限を譲渡してもらえば、<書庫>にフルアクセスできるという。違う世界の責任まで負うか、元の世界に帰るヒントを捨てるか。
えぇい、今更だ。今までだって、私の実力を越えた責務を負わされてきたんだし。そもそも、元の世界に戻る前に、この惑星が壊れちゃったら死んじゃうし。それに、メリラやエスリー村のみんなも助けたい。
……よく考えれば、<統括>の願いを受けるしかないわね。
「いいわ。管理者権限を預かりましょう。でも、一時的によ?」
『感謝する。……これを』
私をここに案内した棒ロボットが、トレイを掲げてこちらに近づいて来た。手、あったのね。
そのトレイには、金属製の腕輪? が置かれていた。腕輪にしては大きいわね。
『<システム>との連絡用デバイスです。上腕部に装着してください』
<アテナ>の上腕部、って大きさじゃないわね。私は、一旦<アテナ>の中から出て、腕輪をはめた。
『マーク部分を触るとロックされ、<システム>との回路が繋がります。もう一度、同じ部分に触るとロックが解除されます……可能な限り装着し続けることを希望します』
「分かった」
マーク部分を触ると、カチリと小さく音がした。
「これでいいの?」
『はい。権限は正常に譲渡されました』
そうよかった。それじゃぁ、精霊がいるという山の情報を……。
『その前に、二、三片付けなければならないことがあります』
□□□
軍事のこととか分からないけれど、戦況が良くないことは素人の私にも分かった。
「ねぇ。この戦闘って、続けなきゃいけないの?」
『続ける必要はありません。資源や人員の損耗を考えれば、直ちに中止すべきです』
「なら、全員引き上げ……あ、できるだけ損害は出さないようにね。人命優先で」
『了解しました』
「それから、可能ならタルーアン側との和平交渉を検討して」
なんとかなる、とは言わないけれど、権限を得た以上、できることはやっておきたい。そのほか、大きな方針――人命優先、戦闘回避、節約――を指示。細かいことは<統括>に任せた。で、こっちの希望も叶えてもらわないと。
『かつて伝説に“精霊の住まう山”などと呼称されていた地域が存在します。シェラ山と呼ばれていました』
「それね。そこに行ってみたい」
『あまりお勧めはしませんが……お望みとあれば、移動手段を手配いたします』
そう言って<統括>が準備してくれたのは、一人乗りようの小型飛行機だった。
『シェラ山までの往復は十分可能ですし、いざとなればこちらからもエネルギーを伝達できます。ただ、タルーアンの勢力圏内ですので、相手に発見されると攻撃される可能性があります』
「そのくらいのリスクは承知の上よ」
『操縦方法は、<アテナ>に転送してあります』
『私が補助しよう』
久々にみくりん登場。御厨教授譲りの上から目線で、操縦方法を教えてくれた。これがアクセルで、こうすれば方向が変わると……基本、スクーターみたいなもんね。いいわ。とっとと行きましょう、精霊を見つけに。




