表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界調整官 ~異世界で官僚、奮戦す~  作者: 水乃流
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

152/188

<統括>と<解読者>(1)

 ♪ドナドナド~ナドォナァ~


 あの歌が頭の中でリフレイン。まさに今私は、売られていく子牛のようだった。拘束はされていないので動くことはできるが、円筒たちから生えた触手が私を抱きかかえていて、抵抗をしても逃れることができない。そのまま、彼らに連れられて、どこかへ向かって移動中。


 以前、竜の護りをもらった時、御厨教授が大喜びで検証をしたことがあった。その結果、私に敵意や害意を持って行われた攻撃に対して、竜の守りは発動する。たとえば、トラックに乗って突っ込んでくるとか、道具を使った攻撃でも同じ。だけれど、突発的な事故――クレーンが倒れるとか鉄骨が落ちてくるとか――では発動しない。また、ロボットにプログラミングして襲わせた場合にも発動しない。つまり、今のような状況は、御厨教授の実験で可能性が指摘されていたのよね。

 油断したわけじゃないけれど、たしかにここ最近、竜の護りに助けられる場面が何度もあって、無意識に依存していたのかもしれない。うーん、反省。


 というわけで、今はなにも出来ない状態なので、抵抗せずに状況を見極めようと思っている。幸いなことに、このドラム缶たちは私を攻撃しようとはしていないしね。それにしても、どこへ連れて行こうと言うのだろう?


 私を乗せた神輿(?)は、街の中心部へとズンズン進んで行く。正面に見えている一際高いビルが近づいてくるのが見える。そして、誰何されることもなくビルの中へ。いや、遠巻きに見ている人たちの視線は感じるけどさ。

 ビルの中は、(見える範囲では)明るく綺麗だった。あまり使われていないのか、それとも掃除が行き届いているのか。そんな考察をしているうちに、大きな扉の前で止まった。二トントラックが、楽に入りそうな大きさだ。その扉が左右に開いていくと、さらに小さな(といっても幅は二メートルくらいかな)扉がもう一枚。その小さな方の扉も、ゆっくりと開くとドラム缶たちは私をその中へと運び込んだ。


「おやまぁ」


 思わず声が漏れた。

 その部屋は、白で統一された部屋だった。その部屋の中央で、私は解放された。ドラム缶たちが入って来た扉から出て行くと、扉は音も無く閉まった。周りを見渡すと、結構広い。昔蓬莱村で使っていたプレハブ事務所の三倍はありそうだ。正面には二つのドアがあって、まだ奥にも部屋がありそう。

不思議なことにソファやベッドなどの調度品もある。そういえば、エスリー村でベッドは見たけれど、ソファは見なかったな。机や椅子はみんな石か金属に布を張ったものだった。ここでは違う。触ってみると、プラスチックみたいな感触だ。ただ、冷たさは感じない。ほのかに温かい気もする。


「ようこそ、お客様」


 突然、目の前に女性が現れた。あれ? 何もなかったよね? 思わず手を伸ばしてみたら、触れなかった。これ、ホログラムって奴だ。地球でも、こんなのなかったのに。旧世界って、どれだけ文明が発達していたんだ。


「あなた、誰?」

「私のことは、<ナビゲーター>とお呼びください。この()()の管理を担っております。貴方様のお世話をさせていただきます」


 余計なお世話よ! と悪態が出かかったけれど飲み込んだ。


「そのナビゲーターさんが、こんな所に無理矢理連れてきて、どうするつもり? 拷問でもするの?」

「少々乱暴な形で招待させていただきました。ご不快を感じたのであれば、謝罪いたします。私どもには、貴方様を傷つける意思はございません」

「……傷つけないとしても、これは拉致よね? 私をどうするつもりなの?」

「その点に関しましては、重ねてお詫び申し上げます。私どもにはあまり時間が残されておらず、このような手段を執らせていただきました。これから貴方様には中央都市にて、<統括>と面会して頂きたく考えております。もちろん、貴方様が望まぬのであれば、ここから外へ出られても構いません」


 元々中央都市にある<書庫>が目的だったから、中央都市に連れて行ってもらえるのはありがたいけれど。


「<統括>って?」

「<統括>は、統べるモノです。文字通り私たちを含め、現存人類が旧世界と呼ぶ技術すべての統括管理・運用を行うモノです」


 つまり、黒幕――は言い方悪いか。一番偉い人ってことね。


「いいわ。会いに行きましょう」

「ありがとうございます。移動には貴方様の時間単位で、二時間ほどを要します。その間にゆっくりとおくつろぎください。奥に洗面所および浴室も準備しております」


 手回しのいいこと。でも、身体を洗えるのはうれしい。エスリー村を出てからトイレにも行ってないし。


「ルシア、もう出てきても大丈夫みたい」

「ぷはぁぁっ~外だ~あれ? お部屋の中だ」

「うん。お風呂も入れるって。一緒に行きましょ」

「はぁ~い。ルシア、お風呂好き~ぃ」


 <アテナ>を脱いで外に出ると、むわっとした蒸気がこぼれて少し恥ずかしかった。<アテナ>の中にいると、この蒸気も回収され濾過されて冷却水や飲料水にリサイクルされるのよねぇ。あ、水の補給ってできるのかしら? 私は、<アテナ>を待機モードにしながら、疑問を口にした。


「ご使用になられている装備の補給は可能です。必要な物資があれば、ご命じください」


 私は水と食料の用意を頼んで、奥へと向かった。そんなに信用していいのか、と脳内迫田さんが怒っているけれど、いまさらだ。

 奧の壁に近付くと、自動的にドアが開いた。洗面台とその奥にまたドア。たぶん、お風呂ね。私は急いで<アテナ>用ボディスーツを脱ぐと、奥に向かった。やっぱりお風呂だ。しかもなみなみとお湯が張られている。うーん、湯船につかるのなんて、何週間ぶりかしら。

 とりあえず、面倒なことは横に置いておいて、私とルシアはお風呂でリラックスした。


□□□


 ナビゲーターは、中央都市まで二時間と言っていたけれど、何か乗り物に乗っていくということではなく、この部屋全体が移動しているようだった。それに気が付いたのは、湯船につかってグダァっとしていた時に感じた、軽い加速度のお陰だった。その後も何度か加減速があったが、非常にスムーズで注意していないと気が付かないくらい。


「お召し物は、洗濯をしておきました」

「補給の品はこちらにご用意いたしました」

「湯上がりに、お飲み物をどうぞ」


 なんだか至れり尽くせりだ。だけど、これから行く場所や相手のことを聞いても、答えてはくれない。そうした機能がないのか情報が与えられていないのか、それとも私に情報を渡したくないのか。ま、考えても仕方ない……そういえば、この世界に飛ばされる前にも、私は決断はするけれど、考える方は迫田さんやヴァレリーズさん、田山二佐なんかに頼っていた気がする。もう少し、考えて行動するようにしよう。帰れたなら。


「そろそろ到着いたします。ご準備をお願いします」

「わかったわ」


 与えられていたパジャマみたいなリラックスできる部屋着を脱いで、下着を着けてボディスーツに潜り込む。<アテナ>を纏って準備万端。


「ルシアはお外にいる?」

「ルシア、サクラの肩に乗ってる。狭いと疲れる」

「そか。いきなり動くかも知れないから、落ちないようにしっかり掴まっていてね」


 そして、私が着替えるタイミングを待っていたかのように、部屋が減速をはじめしばらくして停まった。


「到着いたしました。出迎えの者が参ります」

「ありがとう、リラックスできたわ」

「それはなによりでございます。では、お気を付けていってらっしゃいませ」


 扉が開くと、細長い棒が立っていた。


「お待ちしておりました。私の後についてきてください」


 棒がしゃべった。これもロボットか。棒ロボットは、音も無く廊下みたいなところを進んで行く。私の歩調に合わせているのか、それほど速くはない。

 五分ほど歩いたら、ホールのようなひらけた場所にでた。照明が抑えめになっているせいで、中央に置かれた機械群のインジケーターがちかちかと眩しく光るのがよくわかった。


『ようこそいらした。私は<統括>。主人たち(マスター)より、この施設の管理運営を任されているモノ』


 声はすれども姿は見えず。機械のうしろに隠れているのかな?


『これは失敬した。あなたの目の前にある端末こそ、私――より正確にいえば、私のインターフェース』


 ここでようやく私は勘違いに気が付いた。そりゃそうだよね、巨大な旧世界の運用を人間がやっているわけがない。つまりあれだ、これは管理コンピューターってことね。ルートの親戚みたいなものかな?


『私、<統括>は、あなた方の言うところの“コンピューター”と同じようなものだ。より発展した存在ではあるが』

「ちょっと待って、あなたがコンピューターだってことは分かったわ。“あなた方が言うところの”って、どうしてそんなことを知っているの?」

『もちろん、君の装備に――<アテナ>というのだね――に搭載されているコンピューターから情報をもらったのだ。まだ初歩的ではあるが量子コンピューターを実装できる文明なのだろう。エネルギーの取得方法は未知の技術(モノ)だね。主人たちが生きていれば、興味深く思っただろう』

「つまり、あなたは絶滅してしまった旧世界人が残したコンピューター、ってことね」

『その認識に誤りはない』


 いったん、落ち着こう。


 こちらとしては、<書庫>を見せてもらって、元の世界に戻る手段を見つけられればいい。ただ、こちらから提供できるモノは何もないので、相手の好意にすがるしかないのだけれど、相手が機械じゃなぁ……泣き落としとか効きそうにないし。

 でも、ここに呼んだのはあっちだ。何か私にやって欲しいこと、提供して欲しい何かがあるに違いない。それを交渉材料にできれば……。


「わざわざ私をここに呼んだのは、なぜ?」

『うむ、単刀直入に言おう。異世界からの来訪者よ。どうかこの世界を救って欲しい』


 え? なんですって?


しばらく更新できませんでした(;´Д`)

プライベートが切羽詰まっていて、書く時間がなかなかとれません。

そしてこの章のプロットも大筋は決まっていますが、ちょっと迷っている部分も。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければ、こちらもご覧ください。
異世界転霊 ~祓い屋のアフターライフ
転生ではなく、霊体で異世界に行ってしまった男のお話です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ