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異界調整官 ~異世界で官僚、奮戦す~  作者: 水乃流
第四章

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エスリー村

「最初見た時は、ガンデスの化け物かと思ったよ」

「ガンデスって?」

「洞窟に出るっていう、岩と金属の魔物だよ。お伽噺さ」

「こどもの頃は、怖くてなぁ。それがまさか、中身がこんなべっぴんさんだったとはねぇ」


 あら、やだ。お世辞でも嬉しい。

 私がメリラに出会ってから、はや四日が過ぎた。集落の人たちに受け容れてもらえるのか心配だったが、メリラの証言もあって溶け込むのに時間はかからなかった。半分以上は、ルシアのお陰かも。彼女――性別はないらしいけど、見た目が女の子だから彼女で良いよね?――は、エスリー村のアイドルだ。この世界にも、妖精のような神秘的な伝説・伝承があって、(もちろん実在するとは思われていなかったが)幸福を届けてくれる存在として肯定的なイメージだったらしく、ルシアは大歓迎を受けた。私は、そのおこぼれをあずかったようなものだ。で、当のルシアは、昼間遊びで疲れたのか、今は<アテナ>のバックパックに括り付けられた籠の中でスヤスヤ寝息を立てている。籠は、この村の人たちがルシアのために作ってくれたものだ。寝心地は良いらしい。それにしても、妖精も寝るんだねー。


 ルシアが村の人たちと交流を深めている間、私は何をしていたかといえば主に情報収集だ。私が調べた範囲で、やはりここは異世界なのだと革新した。しかも、これまでに“(ザ・ホール)”で繋がった世界とは別の世界だ。

 日本にある<ホール1>の世界は中世風で魔法のある世界、アメリカの<ホール2>は吸血鬼や狼男など異形の者たちが住まう世界、オーストラリアの<ホール3>は廃墟、アフリカにある<ホール4>は大海原が広がる世界と言うことが分かっている。もちろん、すべての世界をくまなく調べた訳ではないから(特に<ホール4>はほとんど手つかずだし)、どこかと地続きという可能性もゼロじゃないけれど、別の世界なんだと肌で感じられる。


 その理由のひとつが、ここエスリー村の現状だ。村全体が、地下にあるのだ。


「昔は、外で暮らしていたのじゃがな」


 と、エスリー村の村長であるヌーリランさんが教えてくれた。彼は、かつて<風読み>と呼ばれた階級の人で、村にとって私が無害であると言って受け容れてくれた人だ。彼曰く「風が教えてくれる」のだそうだ。さすがに「別世界から来た」という話はすぐには信じてもらえなかったが、ルシアと<アテナ>装備(“みくりん”には余計なこと喋るなと口止め済み)の存在もあって、半分くらいは信じてもらえた感じ。

 そんな理由で気に入られた? 私は、彼からいろいろと話が聞けたわけ。


 そもそもエスリー村が地下にある理由は、戦争のせいらしい。バーリアントとタルーアンの戦争は二百年に及び、今から百年ほど前にエスリー村を含むバーリアントの人々は、古代遺跡を蘇らせたこの地下施設に移り住んだ。エスリー村は、私の目測で直径一キロくらいのドームで太陽の光がまったく差し込まないのに、天井から光が降り注いでいる。彼らが“旧世界”と呼ぶ前文明の遺産なのだそうだ。旧世界文明のお陰で、技術レベルはバーリアントの方が高いけれど、人口はタルーアンが圧倒しているようだ。


 エスリー村以外にも地下ドームがあって、その中には太陽光を取り込むことができる施設もあるそうで、そこでは太陽光が必要な穀物などの生産が行われているけれど、一方で、タルーアンに見つかる危険性も高いという……戦争は、まだ続いているということね。

 だから、バーリアントは徴兵制を敷いていて、若くて健康な男女は兵士としてかり出される。道理で若い男女が村にいないわけだ。ただ、負傷して戦えなくなった者は故郷に戻れるらしく、私と一緒にお酒を飲んでいるハーラさん、ヒェッタさん、ナクレさんも、傷痍(しょうい)軍人だ。みんな、どこかしらに欠損を持っている。大変そうに見えるけれど、みんな明るい。村の人たちも明るくていい人たちだ。外では戦争していて、こんな地か生活を強いられているのに。まだ出会って数日だけれど、なんとかしてあげたいと思ってしまう。異界(インタタス)なら、少しの無理はできたけれど、ここでは無力だ。


□□□


 地下都市ということで、私がまっさきに思ったのがビタミンD不足だ。日光を浴びないとビタミンD不足に陥りやすく、骨の発達などに影響がある。メリラも日本の子供と比べると背が低い。エスタも落盤で外傷はほとんどなかったけれど、左脚を骨折していた。骨が脆いのかも知れない。

ビタミンDを多く含む食材って、たしかさんまとかしらすぼし? うーん、魚はここでも手に入るのかな?


「地下にも川はあるぞ。魚もおるにはおるが、流れが速いので労力の割に獲れる量はすくないぞ」


 なので、この村の主食は、洞窟に生える茸や苔なのだそうだ。あとは、国からの配給。家畜もいるけれど、労働力として使っているので食肉になることは稀なんですと。

 とりあえず、ドームの中を流れる川に案内してもらった。<アテナ>を装着してきたのは、調べれば何か分かるかもと思ってのことだ。皮に近付いてみると、村長の言うように、かなり流れが速い。でも、ポンプで皮から汲み上げた水を生活用水として利用し、排水は下流に流す形で利用している。その光景を見て、思い出したことがある。建設中の都市、エデン(仮)のある計画だ。それをここで流用出来るかも知れない。当然、規模は小さくなるけれど。


 村長に許可を求めて、川の近くに直径二十メートルほど、深さ一メートルほどの凹みを掘ることにした。<アテナ>があっても重労働なので、村からも手伝いを募ったら、ハーラさんたちが名乗りを上げてくれた。「軍では、土木作業は日常茶飯事」だったらしい。

 ハーラさんたちが手伝ってくれたお陰で、凹みを掘るは一週間で終わった。次に、穴の底と周りに石を積んで固めていく。材料の石は、豊富にある。今でも、地下ドームから横穴を掘っていて、掘り出した石が山積みになっていたものを使わせてもらった。

 同時に河へと繋がる二本の水路を作る。取水用と排水用ね。取水用は、流れの勢いをできるだけ抑えるように……本当は細い支流を作ってそこに繋げたいところだけど。取水口は強度を考えて鉄管を使って、と。地下(ここ)だと、鉄よりも木材の方が入手しにくい。排水側は、逆流を防ぐような構造に。いざと成れば、ポンプを使えばいい。


「よし、それじゃぁ水門を開けてみましょう」


 水門を開けると、川から水が水路へと流れ込む。その様子を見て、村の子供たちがはしゃぎだした。ルシアは飛び回らないで、ほら、危ないから水には近付かないで。


 半日もすると、そこそこ立派な溜池ができた。池の周囲は掘り返した土で盛り土をしてあるので、酔っ払って落ちることはないだろう。ないわよね? あとで柵を作っておこう。ここまでが前段階。つぎに、川の流れに対して斜めに網を張る。泳いでいる魚を溜池に誘導するのよ。


「ありゃま。ほんとうに魚が泳いでおる」

「おおー。本当だ」

「これなら魚も獲りやすいでしょ? でも、できればここで魚を育てた方がいいかも」


 作ったのは、魚の生け簀。将来的には、養殖場になるといいな。ちなみに、川に張った網は回収した。長く入れておくと、すぐに破損してしまうらしい。これは要改良ね。


ドームを支える壁面に対し、地面は比較的柔らかく土木作業は容易です。ドームというより球状に空間をくりぬいて、半分くらいを土で埋めたという構造です。

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