表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界調整官 ~異世界で官僚、奮戦す~  作者: 水乃流
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/188

ふたつの報告

 朗報と悲報が、同時にもたらされた。


 朗報は、迫田さんたちからの連絡があったことだ。といっても、本人が直接通信してきたわけではないけれど。ガ=ダルガは通信圏内から外れているので、<らいこう>が迫田さんのメッセージを持って北上、通信圏内に入ったところからバケツリレーのようにしてテシュバートまで伝えられてきたのだ。

 内容は、ガ=ダルガの艦隊がすでに出航したこと(うん、知ってる)、グ・エンのお父さん、ディナ氏族の氏族長に接触できたこと、もしかしたら、艦隊を引き返させることができるかも知れないこと等々。迫田さんも、頑張ってくれているみたいだ。


 一方、悲報とは。


「わが艦隊が、負けたと申すか!」


 その報告がエバ皇后にもたらされた時、彼女は私と一緒にテシュバートにいた。艤装が終わった<プリムズ・エバ>を見に来ていたタイミングだった。


「陛下、落ち着いて。報告を聞きましょう」

「うくっ! ええぃっ、申せ!」


 エバ皇后の前で平伏しまくった帝国騎士が、恐る恐る報告を始める。同時に、私のタブレット端末にもレポートが送られてきた。こっちを読む方が早い。


――帝国領内にある、比較的大きな島であるバシュワ島で補給を受けた艦隊は、そこからガ=ダルガに占領された島々の奪還に向かったが、バシュワ島の南南西およそ五十キロメートルの海域で敵に遭遇した。霧を見つけたら回避する予定だったのだが、気が付いた時にはもう囲まれていたという。

 そして、敵艦の位置を把握することもできないまま、一方的に砲撃を受けた。帝国の主な攻撃方法は魔法による打撃(法撃)で敵艦にある程度損害を与え、しかるのち接舷して白兵戦に持ち込むというものだが、相手が見つけられなければ法撃を当てることもできない。勘で撃ったりしたようだが、相手に損害を与えたかどうかもわからない。


結局、霧から抜け出した時には、十五隻中、撃沈二、大破三、中破八。やだ、ほとんどが被害を受けているじゃないの。ニホンの技術協力によって一部近代化された艦艇だったので、昔に比べれば人的被害は少ないというが、それでも二百名を超えている。その大半が、魔法使いだ。

 戦力のほとんどを失った帝国艦隊は、後方の補給基地バシュワ島の港まで、満身創痍の状態で帰投したようだ。敵の追撃がなくて助かったわ。


「なんという……こと……」


 エバさんが、言葉を失ってパイプ椅子に座り込んだ。パイプ椅子は皇后の椅子としては相応しくないけれど、しょうがないじゃない。ここプレハブだもの。

 ずいぶんとショックを受けたようだけれど、それでもエバさんは気丈に指示を出した。


「艦隊は……もはや艦隊とは呼べぬか。残った兵をまとめバシュワ湾で待機。負傷した者の治療を最優先で。死者の弔いも忘れずに」


 海洋国家であるファシャール帝国では、海で死んだ者はその遺体を海に還して弔うと聞いた。


「それから、グード宰相に伝えなさい。『遺族への補償を十分に』と」

「はっ!」


 命令を受けて、騎士はプレハブを飛び出していった。数秒間の静寂を挟んで、エバ皇后が爆発した!


「あの皇帝(ロクデナシ)はどこに行ったっ!」

「わが妻、愛しのエバよ。ロクデナシとは誰のことだ?」


 騎士が開け放していった入り口から、ひょっこり姿を現したのは、ファシャール帝国皇帝その人だった。てか、どっかで入るタイミング見計らっていたりしないよね?


「陛下! お戻りになったのですか!」

「おぉ、戻ったぞ。愛妃よ。おぉ、そこに麗しのサクラ嬢も。これは眼福」

「何を言ってんですか、状況判ってます?」


 どうも、この人との会話は調子が狂う。


「分かっているとも! 帝国を留守にして住まなかった、エバよ。しかし、もう安心だ。援軍を連れてきたぞ」


□□□


 数日後、私は護衛艦<らいこう>に乗って、帝国南方のバシュワ島に向かって進んでいた。併走するのは、帝国艦<プリムズ・エバ>、<ノルム>の同型艦<ベルーラ>、そして、小型空母<ウーラ・エルファ>。空母という概念は異界(こちら)にはなかったが、誰からか知識を仕入れた皇帝がウルジュワーンで造らせていたらしい。もちろん、飛行機は存在しないのだが、もっと小回りが利く航空戦力が帝国にはあった。翼竜だ。サリフ皇帝は、クライ君の仲間を説得し味方してもらうため、彼の故郷に行っていたのだそうだ。こと、戦争のことになると先見の明がある男だなー。


「先の艦隊が大打撃を受けたのだ。そのままぶつかっても勝ち目はあるまい。何か策はあるのか?」


 艦橋で、デジタル海図を見ながらルートが聞いてきた。なぜか彼も参加したいと言って、<らいこう>に乗って来た。助けが多い方がいい。彼のオリジナル・ボディは格納庫にある。今は、ヒューマノイドユニットの姿だ。お腹の部分がルート・コアという、ちょっと笑える感じになっている。


「これまでのデータから考えると、相手(ガ=ダルガ)の兵器でも<らいこう>が損害を受けることは考えにくいが、帝国の艦隊は敗北する可能性が高い。具体的な数値を示すか?」

「いえ、数値は結構よ」


 私が海図のある地点をスタイラスペンで指し示すと、情報がポップアップ表示された。“バシュワ島”という名前の横には、いくつかのアイコンが並んでいる。港のアイコン、通信塔のアイコン、病院のアイコン等々。矢印アイコンを触れば、より詳しい情報が表示されるが今はいらない。


「島からの連絡では、敵艦隊はまだ現れていないそうよ。帝国軍は、バシュワ島を目指して、そこの残存兵力を再編成、南下する予定。私たちは、それに随行する形だけれど……霧を見つけたら、<らいこう>が前に出ます」

「<らいこう>を盾に使うのか?」

「盾というかおとりというか。なんとか、敵艦とコミュニケーションを試みたいと思っています」


 すでに無名島が攻撃されているので、ここでガ=ダルガへの攻撃をすることは可能。集団的自衛権の解釈範疇ということで、国会の承認も出ている。何事に付けても判断や処理の遅い永田町・霞ヶ関界隈にしては、今回は対応が早い。

 我が国の領土が攻撃されたということで、国民世論も攻撃止むなしの声が大きいそうだ。その一部は、積極的にガ=ダルガを攻撃しろと言っている。もちろん、戦闘行為そのものに反対する勢力もある。

 ぶっちゃけ、許可はあるというものの、政府も国会も調整官(わたし)の判断に任せるということらしい。指示書を読んだ時には“丸投げじゃん”、と頭を抱えたが、ま、政治家に首を突っ込まれるよりは、まだましね。なので、指示が曖昧なことをいいことに、私は敵との交渉を行うことにした。本当は迫田さんがいれば心強いのだけれど。

 あ、クレアも乗っていたわね。交渉時には、彼女の力も借りましょう。



<プリムズ・エバ> 全長280m

<ベルーラ> 全長160m

<ウーラ・エルファ> 全長180m

 推進は、電動モーターによるスクリュー推進。基本は木製、竜骨および装甲板は魔鉄鋼などの金属製。地球の艦船との比較はできないため、排水量はスペックから除外、ということで。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければ、こちらもご覧ください。
異世界転霊 ~祓い屋のアフターライフ
転生ではなく、霊体で異世界に行ってしまった男のお話です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ