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異界調整官 ~異世界で官僚、奮戦す~  作者: 水乃流
第三章

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打てる手は、打て!

「相手の情報が少なすぎる」


 ロバートさんの言う通り、ガ=ダルガに関する情報が少なすぎる。グ・エンたちへのインタビューでも有益な情報は得られなかったと。それでも彼は五つのシナリオを提示してくれた。その中のひとつ、<らいめい><らいこう>でもって先制攻撃を仕掛けるというのはダメだよ。アメリカだったらやっているかも知れないけれど。最悪のシナリオでは、いくつかの島がすでに占領されているという仮定に立っている。まさか、とは思うけれど。


「とりあえず、帝国領の島を虱潰しに調査しなければ。同時に、スパイの発見と確保が必要だ。捕まえたとしても、入手できる情報は少ないだろうから、泳がせて欺瞞情報を流すという手もあるが……」

「それは、帝国に判断してもらいましょう。私たちは、彼らに協力する形で」


 改めて、ロバートさんと協議をした。現時点で、わかっていることは次の通り。


・赤道を越えた向こうに大陸並みの大きな島が存在するらしいが、まだ確認できていない

・その島には、複数の部族から構成される国がある

・その国の運営は、部族の代表同士が協議する形で、共和制に近い

・赤道を越えて帝国へ侵攻しようとする勢力が優勢

・生活に困窮するなどの危機は起きておらず、侵攻の目的は不明

・蒸気機関を持っており、蒸気機関を搭載した艦船が存在する

・兵器の種類は不明、兵力も不明

・帝国の情報を積極的に集めている

・ガ=ダルガでは魔法は一般的ではないが、使える人間も存在する


「では、これらの前提条件を踏まえ、今後とるべき具体的方策について……」


□□□


 カラートは、ファシャール帝国南方にある島で、およそ五十名の住民は、港に隣接した村に暮らしている。湾に臨む山肌に貼り付くように建てられた住居を除けば、島はほぼ原生林で締められている。いや、それは過去のことだ。現在は、山の頂上付近に日本の通信塔がすっくとそびえている。

 今、生い茂る木々を抜けて、通信塔に近付こうとする人影があった。ひとつ、ふたつ……みっつの黒い影は、周囲を警戒しつつ斜面をゆっくりと登っていた。彼らはガ=ダルガで隠密作戦のスキルを叩き込まれた者たちだった。一般的にガ=ダルガ人は背も高く肩幅も広いが、彼らは少し背の高い帝国人と言われても違和感のない体格、そして風貌をしていた。だからこそ、スパイに選ばれたとも言える。

 これまでに何度も帝国の島に潜入し、情報を集めてきた。その中の一人は、帝都にも潜入したことがあるベテランだった。彼らにとって、“日本”とか言う国が建てた怪しげな塔を調査する、という任務は、とても簡単なものだった。


 だが、彼らは知らない。僅かな星明かりでもくっきりと見ることができる暗視装置や、熱を感知するサーモカメラ、赤外線センサー、集音マイクなどの存在を。島に到着した直後から、自衛隊が彼らを監視していることを。


 通信塔を囲うフェンスの傍までやってきたガ=ダルガ工作員のひとりが、迂闊にも素手でフェンスを掴んだ。彼らには細く弱々しく見えた鉄線には、電流が流れていた。触れた人間が気絶する程度の電流が。


「!」


 訓練された彼らは、声を立てることはしなかったが、急に倒れた仲間を見て驚いた。ひとりが仲間に駆け寄り、もうひとりは周囲を警戒する。が、人の気配はしない。地面に倒れ込んでビクビクと身体を震わせる仲間を見て、工作員たちは恐怖を感じた。ウルジュワーンが叛乱を起こした際、サカニカの街で敵の巨人のふるう棒に殴られた時、彼らの同胞が同じように昏倒したことを彼らは知らない。知っていれば、少しは恐怖が減っただろうか。

 周囲を警戒していた彼らは、樹木の葉が擦れ合う音に交じって、羽虫が飛ぶような音が聞こえることに気付いた。徐々に近付いてくるその音に警戒を強めるが、人や獣の気配はない。


「上だ!」


 工作員の一人が、空を指さして叫んだ。そこには、黒い何かが浮かんでいた。だが、その瞬間、彼らは意識を失った。


□□□


「テシュバートより連絡。カラート島で不審者を確保。習熟航行中の帝国艦<ノルム>が回収してテシュバートに連行しました」

「ありがとう」


 受け取った書類にざっと目を通す。


「これで、帝国内のスパイは全部捕まえたことになるわね」

「えぇ、情報が正しければ」


 堀二尉をはじめとする防衛省の情報部門と、帝国の情報部が手を尽くした結果だから、信頼性は高いと思うわ。でも、スパイからは情報、取れそうにない気がする。


「こちらからの、これ以上の情報流出を止められただけでも良しとしましょ。で、ガ=ダルガとの連絡方法は判明した?」

「工作員が所持していたものから考えると、工作船を使った方法と、気球を使った方法があるようです。工作船については、自衛隊(こちら)で確保しました。テシュバートで分析する予定です」


 気球? 上に上がるか、気流に乗って移動するだけだから、南にはいかないわよね? だとすると、何らかの方法で回収しているはず……方法はわからないけど、あちら側にいいようにされているようね。


 後日。帝国沿岸部から無名島まで、レーダーを設置することが決まった。人員不足なので、ほぼ無人サイトになるし、全域をカバーできるわけじゃないけれど、やらないよりはいいでしょ。打てる手は、打っておかないと。


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