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呪われた天使と悪魔 下

作者: 桜巳

■ 小指と小指の誓い


新緑の姫は 毒をもつ美しい花のように

見る者の心を捉えて離さないほど 美しい姫に成長しました

叔父であり 養父である国王は 五人の妃がいましたが

新緑の姫を 自分だけのものにしようと 考えていました

優しい乳母は 新緑の姫の身を案じて 密かに城外へ逃がしました


紫水の貴族は 闇の仲間たちでは誰もが認め

国内外に名が知れるほどの 殺し屋になりました

将来を案じていた伯母は 心無い者の策略によりその生涯を終えており

紫水の貴族を 理解し 守るものは何もありませんでした

紫水の貴族は 双子の天子と共に 闇を駆け 命を奪っていました


ある日 紫水の貴族は 一人の少女の暗殺を引き受けました

それは とても簡単な仕事でした

新緑の姫は 国を逃れ 目を逃れ

人知れる門を抜けて 星が瞬く場所にたどり着きました

とても懐かしい場所

初めて外に出た彼女が 懐かしさで涙を流した場所

そこを なんと呼ぶのか 新緑の姫は知りませんでした


そこは 煌めく星粒の河

遠い昔 星が優しさで満ちていた頃

小指と小指で約束を交わした 二人が出会った場所


新緑の姫の対岸に 一人の青年が立っていました

新緑の貴族は 一目で 殺すべき少女と悟りました

何をすべきかは わかっていました

一跳びで 煌めく星粒の河を渡り

立ち尽くす少女のか細い首を 切り裂けばよいのです


流れるように動く彼を 新緑の姫はただ見つめていました

恐怖よりも ただ 彼が美しく見えたのです

煌めく白銀は しかし 彼女に触れることはありませんでした


オモイダシテシマッタカラ


それが 幸せなことだったのか

それが 最良なことだったのか

二人をさらに苦しめることになるのに


小指と小指の誓いを 二人は覚えていました

ありえるはずはない けれど ありえたのです

二人は ただ微笑み 抱きしめあいました

己が生まれた意味を やっと見出せたから



■ 裁かれた日


新緑の姫は 国へ戻り その身に代えて乳母を助けました

紫水の貴族は 新緑の姫を守るために 駆けました

再び逢うことは 叶わないことを知っていながら

二人は それでも 良かったのでしょう


ソシテ マタ 狂イダス

悲シミノ物語ナラバ 何ユエ 二人ヲ巡リアワセタノカ


 堕ちる 落ちる 呪われた王妃

 伸ばしても 伸ばしても 届きはしない

 ただ ただ 声が耳に残る

 どうぞ お逃げください 私と弟が防ぐその間に

 そして 私たちの分まで 生きて幸せに と


-嘘だと そうおっしゃってください

 乳母が 私を殺そうとしたことを

 嘘だと そうおっしゃってください

 使い魔の姉弟が 業火で身を滅ぼしたことを

 全て嘘だと そうおっしゃってください

 神の憎しみを 私が背負わねばならないことを


新緑の第六王妃は 国王を殺そうとした

根も葉も すべては作りもの それでよいのでしょう

新緑の第六王妃は その身を業火に焼かれる

呪われた妃が滅ぶ それでよいのでしょう

姫を悪の手から救うのは 王子の役目ですが

悪の姫なのだから 悪の王子は救えないのが決まりなのです


-嘘だと いってください

 彼女が この世にいないということを

 嘘だと いってください

 彼女を 守ることも助けることもできなかったことを

 全てが嘘だと いってください

 魔王の憎しみが 僕を縛りつけているということを


 堕ちよう 落ちよう 君の元へと

 届くことのない言葉よ 深く沈め 深く沈め

 ただ ただ 綴るのは逢いなのか

 また 逢おう また 逢える

 そして 生きて 幸せになろう と


紫水の王子は 青い海へ その想いと心を深く沈め

生涯尽きるまで 命を奪い続けたのでした



■ 終息の詩


小指と小指で繋ぐ 誓いの物語


ただ 逢って 生きて 幸せになりたい と

簡単で 難しい 二人の望み


幸せとは 何を指し示すのか

ただ 紡がれゆく 二人の物語


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