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ようこそ混沌!グッバイ平穏!  作者: 夢野天瀬
02 未来へ向けての復興
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42 反撃の狼煙


「くそったれーーーーーーーー!」


 無意識のうちに、天を貫かんばかりの怒声をあげていた。

 何もかもに怒りを感じていた。

 何もかもが気に入らなかった。

 何もかもを呪いたかった。

 自分自身も、ベヒモスも、この世界も、自分達が置かれた状況も、全てが憎く、全てを破壊したかった。


「まただよ……くそったれ!」


 力無く膝を突き、血塗れの手で凍り付いた川の表面を殴りつける。

 だけど、非力な僕が殴ったくらいで、氷華が作り上げた氷が割れるはずもない。

 逆に、自分の拳が鈍い音を立てて砕けただけだった。

 拳の痛みは感じない。なにより心の痛みが桁外れに大きかったからだ。

 心に突き刺さる無念の痛みは、相対してるベヒモスのことすら忘れさせるほどに、激しい苦痛を与えてくる。


「ちくしょう……何が炎獄の魔法使いだ。仲間すら守れないじゃないか……くそっ!」


 自分の力の無さに絶望し、何度も氷の川を殴りつける。

 無意識に涙が零れ、氷の上で赤く染まる血と混ざりあう。

 ぼやける視界でそれを目にして、ふと疑問を抱く。


「ん? 氷……川が、川が凍ったままだ……もしかして……まだ生きてるんじゃ……」


 そうだ。まだ何もしていないじゃないか。彼女達の生死を確かめることも、助けることも、お礼参りも、何もしていない。血だ。僕の血だ。そうだ。これを飲ませれば……


 彼女達が生きている可能性に、自分がとことん愚かだったことに気付く。

 身体の痛みも忘れて立ち上がり、慌てて彼女達の元へと向かう。

 ところが、その途端に、背筋が凍るような感覚を受けて身をすくませる。


 何かくる!


 嫌な予感に襲われ、ベヒモスのことを思い出す。

 すぐさま視線を向けると、奴はその巨大な口を大きく開けていた。


「何度もやらせるか! 喰らえ! こんちくしょうーーーー! 大災害!」


 怒りを声に変えて放つと同時に、大きく開かれた奴の口に向かって渾身の爆裂魔法をぶちこむ。

 耳をつんざく爆裂音が響き渡る。なんども、なんども、奴の状態を確認することなく、立て続けに魔法をぶちこむ。


「大災害! 大災害! 大災害だーーーーーーー! クタバレ! この野郎! よくも……氷華……一凛……」


 怒りに我を忘れて、ベヒモスに際限なく魔法を叩き込む。ただ、そこで氷華と一凛のことを思い出し、慌てて彼女達の元へと向かう。

 取り敢えず、ベヒモスなんてどうでもいいのだ。お礼参りはあとでいい。


「ひょ、氷華……うっ……なんて酷い……いや、今は――」


 無惨にも腕が千切れかけ、脚が抉られている彼女の姿を見て、思わず嗚咽を漏らしてしまう。

 だけど、直ぐに正気を保つと、俯せに倒れている彼女をそっと仰向けにし、心臓の鼓動を確かめる。

 彼女の柔らかな胸の間に耳を当てる。

 聞こえる。確かな鼓動が聞こえてくる。


「生きてる! うん。生きてる。よし――」


 生きていることに歓喜の声をあげ、すぐさま拳から流れている血を彼女の口に注ぐ。


「あれ? こんなもの?」


 彼女の胸を動かす心臓の鼓動は感じる。傷も治り始めているようには見える。

 ただ、その速度は眼を瞠るようなものではなく、少しずつ、ほんの少しずつだ。

 それを疑問に感じて、あの時のことを思い起こす。そう、ショッピングモールでの出来事だ。


 あの時は……あっ、傷はココアが直してたんだ……


 彼女達の傷をココアが舐めて治していたことを思い出し、自分の血で命を吹き込むことはできても、傷を即座に治癒するような能力がないのではないかと考える。


「じゃ、どうすれば……いや、先に一凛にも……」


 とにかく、命を救うことが先決だと考えて、ゆっくりと氷華を横たえると、急いで一凛のもとに駆け付け、同じように拳の血を注ぎ込む。

 どうやら、二人とも命を繋ぎ止めることはできたようだけど、傷の治りは異様に遅い。

 このままでは、せっかく命を取り留めたのに、奴の餌食になってしまう。

 最悪の事態を考えつつ、その元凶へと視線を向ける。

 そこでは、やっとダメージから復帰したのか、奴が再び大口を開けていた。


「くそっ! 性懲しょうこりもなく! 喰らえ――」


「・・オ!」


 憎たらしいベヒモスへ再び爆裂魔法を叩き込もうとした時だった。背後から相変わらずの一語が聞こえてきた。

 途端に、空からは大粒の石――いやいや、巨岩がベヒモスに目がけてピンポイントで降り注ぐ。

 その大きさたるや、一つ一つが軽自動車くらいに見える。オマケに、それは灼熱の炎を纏っているのか、燃えたぎっているように赤く染まっている。


「葵香!」


「ん!?」


 慌てて振り向くと、天に向けて両腕を上げた葵香が首を傾げていた。

 どうやら、怪我は大したことなさそうだ。

 彼女は「どうかしたの?」と言いたげな視線を返してきた。もちろん、「ん」としか言わないのだけど……


「良かった。無事なんだね。というか……」


 彼女の無事に安堵しながらも、降り注ぐ隕石を見て不思議に思う。


 いつのまに……これほどの威力を?


 疑問を抱きつつも、視線をベヒモスに戻す。

 燃え滾る隕石の攻撃を嫌がったのか、奴は頭を巨大な甲羅の中へと引っ込めていた。


「ちっ! 姑息な奴! 蓋までしてるし……いや、この間に……」


 危機が迫ると丈夫そうな甲羅に入り込む手管に、思わず舌打ちするのだけど、直ぐに意識を二人の仲間に戻す。


 どうしよう……みつるも居ないし……


『あなたは、あの暴食の獣を倒すおつもりですか?』


 大怪我をしている氷華と一凛を前にして途方に暮れていると、突如として頭の中に見知らぬ女性の声が響いた。









 透明――そんな印象を抱かせた声は、あたふたする僕の頭の中に響き渡った。

 その声が何処から発せられたのか、誰のものなのか分からない。

 不安を感じて即座に周囲を見回す。

 しかし、その声は気にした様子もなく、再び問いかけてきた。


『あなた達は、全てを食らい尽くす、あの暴食の獣を倒すために戦っているのですか?』


 頭の中に直接聞こえてくる涼し気でいて、優しさを、温かさを、感じさせる声に驚きつつも、警戒は解かない。

 すると、突如として氷華が凍らせた川の氷が隆起する。

 それは、みるみるうちに人の姿を成した。


「えっ!?」


 美しき女性――女神と言われたら、そのまま納得してしまいそうな神々しいまでの綺麗な女性だった。

 氷で形を成しているはずなのに、人と変わらぬ姿……いや、人ならざる美しさと透明感を持った女性の姿に、存在感に、威光に、思わず見入ってしまう。


「女神……」


 まるで氷の精霊――氷の女神だと思えた。

 その女性像は気にすることなく、息を呑んだまま押し黙る僕に視線を向けてきた。


『どうするおつもりですか?』


「あっ、ああ……これは、あなたの声ですか?」


 いまだ混乱していることもあって、問われている返事ではなく、彼女と聞こえてくる声の関係について問い返してしまう。

 それをどう感じたのかは分からない。

 ただ、彼女は全く表情を変えることなく頷いたかと思うと、再び同じ問いを繰り返した。


『あの暴食の獣をどうなさるおつもりですか?』


「あ、ああ、暴食の獣って、ベヒモスのことですよね? 倒せればいいんですけど、多分、僕等の力じゃ無理だから……なんとか追いやりたいと思ってます」


 神々しさに当てられた結果、ですます調で答えてしまう。

 彼女は返答の内容に満足したのか、ゆっくりと頷く。


『ならば、力を貸しましょう』


「えっ!?」


 何が何やら理解できずに混乱する。

 しかし、彼女は気にした様子もなく両腕を真横に上げた。


『リリ、ララ、いらっしゃい』


『はい! ベラクア様』


『は~い。ベラクア様、どうしたの?』


 氷の女神が声を放つと、北千住側の河川敷――密林から、小さな物体が元気な返事と共に飛んできた。


 小人? 掌サイズだけど、羽が生えてるし……妖精?


 初めは羽虫かと思ったのだけど、それが近づくにつれて、再び驚愕に固まってしまう。

 なにしろ、アニメなどで見る妖精――羽の生えた小さな人が飛んできたからだ。


『リリ、ララ、あの二人の力になってもらえませんか?』


 僕のことなど全く眼中にないのか、氷の女神は視線を二人の妖精に向けると、己が願いを口にする。


『はい。畏まりました』


『合点承知の助!』


 ピンクの羽をバタつかせる妖精が頷きつつ笑顔で了承した。

 それに続いて、緑の羽を持った少しわんぱくそうな妖精はサムズアップで答えた。


 てか、合点承知の助って……もしかして、僕の脳内変換なのかな?


 思わず妖精の台詞が気になってしまうのだけど、その間に、二匹? 二体? 二人は横たわる氷華と一凛の上に舞い降りる。

 次の瞬間、己が目を疑う出来事が起こる。


『では、失礼します』


 そう言うと、ピンク羽の妖精が氷華の胸の中に溶け込むかのように消えていく。


「ちょ、ちょっと、なにやって――」


 慌てて氷華の身体に近寄るのだけど、今度は一凛の方でも声が上がった。


『おら~~~人精がった~~~い! きもちいい~~~~~ん』


 ヤバイ……この脳内変換って、僕の好みに色付けされてるんじゃ……確かに、アク〇リオンは好きだけど……いやいや、そんな問題じゃないよね……


 ツッコミどころ満載なのだけど、それよりも緑羽のわんぱく妖精が一凛の胸の中に消えていくの見やり、妖精が溶け込んでしまった氷華と一凛のことが気になる。


「ちょっと、勝手に何やってるのさ!」


 あまりの出来事に動転しながらも、すぐさま抗議の声をあげたのだけど、その途端、二人がまばゆい光に包まれる。


「うわっ! 一体なにごと? なにっ、これ!? 氷華! 一凛!」


『大丈夫です。彼女達の命や精神に異常は起きませんから』


 サングラスをしているのにも拘わらず、全く彼女達の姿が見えなくなるほどの発光ぶりに、焦りを感じて声を放つと、すぐさま氷の女神が安心しろと告げてきた。

 大丈夫と言われて、はいそうですかと安心できる訳がない。

 それどころか、大切な仲間に何かをされて黙ってはいられない。


「いったい、何をしたんですか!?」


 込み上げてくる怒りを抑えきれず、思わず激怒する。

 そのタイミングで光が収まる。それも、何事もなかったかのように綺麗さっぱり消えてなくなった。


「氷華! 一凛! 大丈夫!?」


 怒りも忘れて、すぐさま氷華と一凛に視線を向ける。

 そして、彼女達を二度見、いや、三度見してしまう。


「うっ、ん~、あれ? ここは……あっ、そうか。ベヒモスと戦ってたはず……」


 氷華は何事もなかったかのようにゆっくりと立ち上がった。

 その様子からして、怪我は完治しているみたいだ。それはいい。それはいいのだけど……


「一凛! なにそれ!? なんて格好してるのよ」


 記憶が飛んでいる所為か、自分の置かれた状況に首を傾げた氷華は、そこで一凛を目にして素っ頓狂な声をあげた。


「くはっ~、よく寝た……ん? あっ、そういや、やられたんだっけ? ええっ!? 氷華……その恰好……マジか、恥ずかしくないのか?」


 氷華から指を突きつけられた一凛と言えば、まるで冬眠から起きた熊みたいだ。

 そんな彼女も、指を差す氷華を見て呆れた声を発した。

 どちらも、自分自身の格好に気付いていないみたいだ。


 大怪我をしていた事実など無かったかのように、ピンピンとした二人が立って居るのは嬉しい。実に嬉しいのだけど、あまりの光景に声が出ない。


「なによ、これ! これじゃ、美少女戦士じゃない。というか、これ、スカート短すぎよ。それに、露出が……く、黒鵜君、こっちを見ないで!」


 超ミニのセーラー服姿となった氷華が、真っ赤な顔で必死にスカートを押さえる。


「うぐっ、なんじゃこれ!」


 恥ずかしそうに身をよじる氷華に続いて、一凛が自分の姿を確かめて絶句する。


 ナーーーーーイス! 妖精さん達、君等、最高だよ! いい仕事してますね~。


 戦いも忘れて、氷華と一凛を変身させた妖精に賛辞を贈る。

 なにしろ、彼女達の姿ときたら、激ヤバだ。それはミニスカートだけではない。セーラー服の上着は殆どブラと変わらないくらいで、お腹が丸見えというか、下乳すら覗いている。

 チラリズム派の僕にとって、これは飛竜に負けぬほどのご馳走だ。ただ、胸のボリュームが足りていないのが少しばかり残念に思える。

 いや、それよりも、今はその露出されている肌に傷一つない事が最高の出来事だった。


「氷華、一凛、良かった。君等、大怪我してたんだよ」


「ええっ!? そうなの?」


「確かに、なんかめっちゃ食らったような気が……」


 恥ずかしそうにしていた二人も、怪我をしていたと聞いて真剣な表情になる。

 ただ、直ぐにそれどころではないと気づいたみたいだ。


「それよりも、ベヒモスは?」


「おお、そうだった! あの亀野郎! 百倍返しにしてやる」


 焦った様子の氷華が咄嗟にベヒモスへと視線を向けた。

 それに続いて、一凛が左の掌に右の拳を打ち付ける。むざむざとやられたことに怒りを感じているみたいだ。

 でも、彼女が受けた攻撃を百倍にしたところで、然して奴にダメージを与えられるとは思えない。


「今は、葵香がメテオで……葵香!」


「葵香!」


「お、おいっ! 大丈夫か!」


 ベヒモスを食い止めてくれているはずの葵香を見やって、僕は凍り付き、氷華は声を張り上げ、一凛は駆け出した。

 空からは未だに隕石が降り注いでリる。しかし、その魔法を食らわせている葵香は、氷上に倒れていたのだ。


「葵香、大丈夫?」


「ん……」


 良かった……生きてるみたいだ……


 一番に駆け寄った一凛が葵香を抱き上げると、彼女は弱々しくも声を漏らした。

 外傷はない。ただ、とても弱っているみたいだ。

 多分、魔力枯渇で倒れたのだろう。


「葵香、ありがとう。あとは僕等に任せてゆっくり休んでね」


「そうね。葵香。あなたは最高よ!」


「グッジョブだぜ。あとで美味い物でも食おうな」


 葵香に感謝の気持ちを伝えると、氷華が彼女を褒め称え、一凛が優しく頭を撫でていた。


「ん!」


 感謝や称賛が嬉しかったのか、葵香が嬉しそうに小さく頷く。

 すると、ココアの声が森林の中から聞こえてきた。


「ウガ~~!」


「ココア、どこまで飛ばされ――はぁ~?」


 ココアの声を聞いて安堵の息を吐く。

 しかし、次の瞬間、森から出てきた黒い物体を見て唖然とする。


「ココア?」


 森から出てきた黒い物体は、羽付きの大きな黒豹だった。


「も、もしかして、黒豹?」


「さすがに黒猫には見えんな……てか、魔物じゃないのか?」


 氷華と一凛も驚きを隠せないみたいだ。反応が遅れている。

 ところが、当の本人は全く気にしていない。


「ガウガ~~!」


 颯爽と現れると、慌てる僕等の足元でお座りした。


「うわっ! って、ココアだよね?」


「ク~~~~ン」


 やはり、これはココアで間違いないみたいだ。


「それにしても……」


 それにしても、黒猫の頃とサイズが全く違う。というか、その大きさはトラを超えるサイズだ。


「なんか、一気に大きくなったわね」


「まあ、うちらの恰好よりも自然だけどな……」


 氷華と一凛が感想を述べる。

 確かに、彼女達の格好よりも現実的だと思うのだけど、それを聞き流して目の前で腰を下ろすココアに話し掛ける。


「ココア、葵香を頼める?」


「ガルッ~!」


 どうやら問題ないようだ。ココアは一声あげると、立ち上がって背中を向けてきた。

 恐らく、乗せろと言っているのだろう。

 そう感じて、葵香をココアの背中に俯せに乗せる。

 ココアは一つ頷くと、そのまま森林の中へと消えて行った。


「ふ~む、思うところは色々あるけど、取り敢えずは後にしようか。さあ、ここからが本番かな?」


 ココアを見送ったところで、振り返ってベヒモスを睨みつける。

 すると、氷華が一歩前に出て右横に並んだ。


「そうね。色々と気になることがあるし、この格好はかなり恥ずかしいのだけど……さっさと片付けましょうか」


 自分が穿いているミニスカートの裾を摘まんだ彼女は、自分の姿を見下ろし、少しばかり頬を染めながらも同意した。

 どうやら、彼女も現在に至った経緯については棚上げにしたのだろう。すぐさま視線をベヒモスに移したかと思うと、右手を突き出して魔法を発動させる。


「氷槍!」


 彼女の凛とした声が響き渡る。その途端、空から巨大な氷の槍――東京スカイツリーくらいはありそうな氷の柱がベヒモスに襲い掛かった。

 まさに天誅と言わんばかりの氷華の攻撃は、ベヒモスの甲羅を貫くことこそ叶わなかったが、その一撃は奴に悲痛な呻き声をあげさせた。


 なんてこった……これこそ、人外……いや、ご都合主義だよね。


 氷華の攻撃に驚きと呆れの入り混じった感情を抱いていると、今度は一凛が左側に並んだ。


「葵香までやりやがって。ぜって~許さねーー! スッポン料理にしてやる」


 いやいや、葵香はやられてないから、魔力枯渇だから……というか、あれは亀の化け物だけど、すっぽんじゃないんだって……てかさ~、この状況でも食欲第一なの?


「喰らえ! か〇はめ波!」


 ちょーーーーーーー! パクリはダメだって! それに、亀に向けてか〇はめ波って……寒いよ……


 食欲魔神のツッコミどころ満載な台詞に心中でツッコミを入れていると、彼女は転用禁止の技を披露してしまった。もちろん、許可は取っていない。思いっきりパクリだ。


 彼女の突き出した両手からは、いったい何かも分からないエネルギー波が飛び出してベヒモスを直撃する。

 しかし、残念ながら当たった場所は甲羅だった。

 ただ、彼女の正体不明の攻撃を喰らった場所は、少しばかり変色しているように見える。

 それに喝采を上げたいところだけど、敢えて違う言葉を口にする。


「君等、今度から僕を破壊神扱いするの禁止ね。君等の方がよっぽど破壊者だよ。てか、思いっきりご都合主義じゃんか」


「うっ……」


「ぐがっ……」


 氷華の攻撃はその衝撃でベヒモスの周囲にある建造物をなぎ倒し、一凛のパクリ技はそれを粉々に砕いていた。

 その光景は、きっと戦争で爆撃被害を受けた街の惨状と大差ないだろう。そう、焼け野原と同じだ。


「まあ、その力については、あとでゆっくりと聞かせてもらうとして、まずは奴を倒すとしようか」


 ツッコミを受けて呻き声を上げる二人を見て、少しだけ気を良くした僕は、彼女達の力、妖精、更には既に居なくなった氷の女神、そんな沢山の不思議な出来事を棚上げして、ここぞとばかりに反撃を開始することにした。


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