25 決意と団結
夜もすっかりと更け、空には二つの月が浮かんでいるだろう。
その一つは見慣れた黄色い月なのだけど、もう一つはこの世界を尋常ならざる混沌へと陥れた張本人であるかのようだ。
そう、それは鮮血のように真っ赤な月なのだ。
ただ、現在、その毒々しい月が目に映ることはない。
というのも、僕等は建物の中、更にはもっと狭い場所に閉じこもっているからだ。
「ちょ、黒鵜君、どこさわってるのよ」
散切りショートカットだけど、可愛い顔のお陰で全く違和感のない氷華が、眉を吊り上げて睨んでくる。
でも、全く心当たりがない。
「ぼ、僕じゃないよ?」
「うそおっしゃい! 今、私のお尻を触ったわよね。それも思いっきり撫でてたわ」
「撫でてって……ぼ、僕じゃないってば!」
その可愛い顔を歪めて立件する氷華に、必死になって無実を主張する。
恐らく罪状はワイセツ罪なのだと思うけど、冤罪に決まっている。
なにしろ、全く触った記憶がない。それこそ、夢遊病的に行動しない限りには起き得ない。
そして、このことで、電車で痴漢に間違われるオジサン達の気分が嫌というほどに解った。
ただ気になるのは、横で笑いを噛み殺している一凛の態度だ。
彼女は短めに切った髪がスポーツ女子を連想させる健康的で可愛い女の子だ。そして、その見た目に違うことなく脳筋でイタズラ好きだ。
そのイタズラ好きの一凛がクスクスと笑っているのだ。彼女が犯人であること間違いなしだ。
「うっ、一凛なのね」
「一凛!」
「こらこら、大きな声を出すとバレるぞ?」
「あう……」
「うぐっ……」
なぜか真犯人に怒られて、渋々と押し黙る。
因みに、ココアはといえば、彼女は盛りの所為で肉体的に辛いらしく、足元でウニャウニャと呻きながら身悶えしている。
現在の状況はというと、実は一つの更衣室に三人で閉じこもっている。
割と広い更衣室だったのだけど、さすがに三人が入ると手狭に感じる。というか、身体が密着状態になりそうなくらいだ。
だから、その気がなくとも、彼女達の身体に触れてしまう。恐ろしく危険な状態だ。
ああ、何が危険かと言うと、触れた後の僕の身が危険なのだ。そう、氷漬けにされては堪ったものではない。
そんな不安を他所に、下半身はかなりやる気を出している。
まあ、その辺は、思春期の男子ということで、情状酌量の余地があると思う。
ただ、それを悟られると大変だと感じて、必死で身を捩っているのだけど、どうやらそれも無駄な抵抗だったようだ。
「ん? 暗くてよくわからんけど、これって……」
「こ、こら、どこをニギニギしてんのさ」
「ふむ、やっぱり。というか、なんでこんなに気合が入ってるんだ? クククッ」
下半身の事情に気付いた一凛が、遠慮なく触り捲っている。
それに抵抗するために更に身を捩る。ところが、彼女の手は誘導ミサイルの如く執拗に追ってくる。そして、彼女は答えられない問を口にすると、ニヤリと嫌らしい笑みを零した。
ああ、もちろん、氷華や一凛にとっては暗闇なのだけど、僕にとっては普通の明るさに見える。
だから、一凛が嫌らしい笑みを浮かべているのも丸見えだ。
それはそうと、いつまでも下半身を触り捲る一凛の行動に不満を感じてしまう。
最後まで面倒をみるのならまだしも、弄ぶのはやめてよね……
憤りを感じながらも、何とか左手で彼女の手をシャットアウトする。
ただ、寂しいかな、こんな密室で身を捩っても、身体を動かしても、どちらの少女からも柔らかい膨らみを感じない。
きっと、僕には乳運がないのだろう。
まあ、それを公にすると、僕自身の運命が終わりそうなので、決して口外することができない。
「ほら、来たわよ。二人とも静かに」
顔を赤らめながらも眦を吊り上げた氷華が、敵が来たことを知らせてきた。
因みに、更衣室の扉はカーテンではなく板の扉となっている。
だから、そこに風刃で小さな覗き窓を作り、そこから明かりをつけた居場所を確認しているのだ。
そう、向こうは奴等と対峙した場所であり、囮でもある。そして、僕等は違う場所で奴等の裏をかく作戦なのだ。
当然ながら、あっちには明かりがあるので、こちらから丸見えという寸法だ。
「まだ氷壁が残ってるんだけど、どうやら痺れを切らしたようね」
「みたいだな。取り囲んで一斉に撃ち捲る気か。犠牲も已む無しと思ってるんだろうな」
「爆弾を使われたらどうしようかと思ったけど、そこまでの物資はないみたいだね。というか、飛竜を倒した話を信じてないんじゃないかな?」
氷華と一凛が囁くように感想を吐き出すのを聞いて、それに答える形で思いを口にした。
実を言うと、奴等が爆発物を持ち込んだら、即座に戦闘を開始するつもりだった。
だから、氷のバリケードも作って、それを衣服で隠していたりする。
ただ、その場合は、奴等の命を刈り取ることになるだろう。
なにしろ、奴等は近代兵器を持っているのだ。こちらが油断すれば、瞬時にトムとジェリーで登場するチーズの如く穴だらけとなるだろう。
それ故に、奴等の行動を見てホッとした。
だって、穴だらけになるのは嫌だし、それと同じくらい人の命を刈り取る覚悟ができていないのだ。
「じゃ、予定通りにいきましょう」
「りょ~かい。うちは後始末でいいんだよな」
「僕は相手の武器を壊せばいいんだよね」
「そうよ。くれぐれも建物から出ないこと、狙われるかもしれないわ」
やるべきことを確認して頷き合うと、静かに更衣室から抜け出し、氷のバリケードを盾にして魔法を発動させる。
銃だけを狙い撃ちか……イメージ、イメージ……よし!
「風刃!」
かなり手加減するつもりで、人差し指を敵が持つ機関銃に向ける。
すると、機関銃が弾倉の取り付けられた辺りでスッパリと二つに分かれた。
その切れ味は、まるで元々二分されていたものを接着剤でくっ付けていたかのように、見事に真っ二つとなっている。
ただ、初撃ということもあって、加減を誤ったらしい。
「うわっ! ぐふっ!」
銃を持った者の胸まで切り裂いてしまった。
ただ、奴等も完全装備だったようで、死に至るほどではないように見える。
「あちゃ……やり過ぎた……」
「大丈夫だ。あれくらいじゃ死んだりしないさ。それよりも、じゃんじゃんやらんと一斉攻撃を喰らうぞ?」
「う、うん。そうだった……」
胸を抑えて退避する敵を見て、思わず怯んでしまう。だけど、隣にやってきた一凛に諫められて魔法を放つ。
「風刃! 風刃!」
そうだ。やらきゃ、奴等はきっと手加減なんてしてくれないんだし、隙を見せたらこっちが殺されてしまうんだ。
己の弱き心に言い聞かせ、次から次へと風の刃を放っていく。
「ぐおっ、な、なんだこりゃ……」
「おい! どうした! うわっ、ハチキュウが……」
「うわっ、オレのもだ」
「どういうことだ」
「まさか、狙われてるのか。拙い、て、てっ――ぐぼっ」
機関銃が次々と壊れる様に、襲撃者の声が上がる。直ぐに僕等の仕業だと気付いたのだろう。即座に撤退を声を上げようとした。
ところが、声を上げようとした男は、声ではなく自分が舞い上がることになった。いや、殴り飛ばされたと言った方がいいだろう。
「ぐあっ!」
「げふっ!」
「が、ガキだ。それも女――ぐぎゃ」
「ば、ばけものか! げほっ」
「だれがバケモノだよ。こんな可愛い乙女に失礼極まりないな。そんなんじゃ若い子にモテないぞ」
一凛は武器が破壊されて戸惑う襲撃者を蹴り飛ばし殴り飛ばす。
憤慨した様子で罵るのだけど、どこか緊張感に欠けているように思う。
そんな彼女にコンバットナイフを手にした男が後ろから襲い掛かる。
「うぎゃ! ぐあっ……こ、これは……氷?」
男はコンバットナイフを床に落として己が右手を左手で支える。そして、その有様に慄いてガタガタと震え始めた。
そう、その男の右手には氷の矢が刺さっているのだ。
「別に油断した訳じゃないからな。ちゃんと気付いてたぞ」
己が右手を抱えて呻く男に回し蹴りを叩き込みながら、一凛はへの字口で弁解の声を上げた。
氷華はといえば、魔法を放ちつつも呆れた声色でツッコミを入れる。
「何も言ってないじゃない。それよりも、さっさと倒さないとやられるわよ」
機関銃を切り裂かれた者達が、今まさに襲い掛からんとしているのだ。
ただ、そこで読みを違えてしまう。
「死ね! このクソガキども」
一人の男が拳銃を取り出すと、すぐさま構えを取ったのだ。
やば、拳銃も持ってたんだ……直ぐに片付けなきゃ、風刃!
一凛に向けられた拳銃を切り裂くべく、慌てて風の刃を放つ。
ただ、その一撃は焦っていた所為で精度を欠いていた。
「ぐあっ、手が、オレの腕が……」
制御を誤った風の刃は、せん断機の如く鋭利な刃物となって、襲撃者の両腕を切り落としてしまったのだ。
拳銃を握りしめた両手が床に転がり、襲撃者の両腕からは鮮血が吹き出す。
呻き声を上げる男を目にして、それが自分の所業だと認識しところで、今更ながらに対人戦闘の恐ろしさに、ガタガタと脚を震わせることになるのだった。
耳をつんざく男の悲鳴が響き渡る。
それだけでも、心臓が止まりそうになるのに、その悲鳴を生み出した原因が自分であることを考えると、胸を鷲掴みにされたような気分だった。
両手を無くした男が苦痛と恐怖でのた打ち回る姿は、罪悪感という枷となって僕の動きを封じる。
だけど、仲間がもがき苦しむ姿に動揺しつつも、奴等はやはり戦闘のプロなのだろう。
すぐさま、意識のある全員が拳銃を抜こうとする。
「拙いわ。黒鵜君! 急いで! 黒鵜君? くっ、氷雨!」
襲撃者が攻撃に転じるのを目にして、氷華が慌てた様子で声を掛けてくる。だけど、今はただただ赤い赤い鮮血に目を奪われたままだった。
それに気付いたのか、彼女はすぐさま己が魔法を放った。
「ちょっ、ちょっと待てーーーー! うちまで穴だらけにする気か!」
襲撃者の真っただ中にいた一凛が、苦言を漏らしながら一目散に逃げ戻ってくる。
面白いことに、氷華が放った氷の礫は、そんな一凛を避けるようにして降り注ぐ。
「フレンドリーファイヤーなんてしないわよ」
氷華の言葉は、それが偽りではないと証明するかのように襲撃者へと降り注ぎ、彼等の身体を撃ち抜いていった。
その光景を目の当たりにしたところで、意識を引き戻される。
「えっ! 大怪我してるじゃないか……手加減してないの?」
「馬鹿じゃないの!? やらなきゃ、やられるのよ?」
身体を撃ち抜かれて呻き声を上げる襲撃者を目にして、思わず氷華を責め立てるように視線を向けたのだけど、逆に叱責されてしまう。
ただ、それを頭で理解していても、心はなかなか割り切ってくれない。
「そうだけど……そうだけどさ……分かってるんだけど……」
煮え切らないことを不快に思ったのか、氷華は眉間に皺を刻んで毒を吐いた。
「もういいわ。戦えないたら更衣室にでも篭ってなさい。ここに居るだけ邪魔よ」
確かに、何もかもが彼女の言う通りだけど……でも、だからって簡単に割り切れないし……
恐らく、彼女は発破を掛けたのだろう。まさか、そのまま更衣室に篭ると思ってはいないはずだ。
ただ、今は本当に更衣室へと逃げ込みたい気分だった。
そんなグダグダな僕は、立つ瀬がなくて視線を降ろす。
すると、そこに氷華の脚が見えた。そして、己が目を疑った。
えっ!? もしかして震えてるの?
強者の言を放つ彼女の脚が震えているように見えて、何度も眼を擦るのだけど、やはり震えているようにしか見えない。
なにしろ、今にも失禁でもするのではないかと思うほどに、両脚をガクガクと震わせているのだ。
か、彼女も本当は怖いんだ……でも、僕がこんな調子だから……きっと、無理をしてるんだ……やっぱり、僕って馬鹿だよね……ごめん、氷華……
必死になって戦っている氷華の姿に、己が弱さを責めながらも、自分も戦うべく襲撃者へと視線を向けた。
その時だった。入り口に隠れていた者が片手を振り上げていた。
ま、まさか、手榴弾!? ま、拙い!
どうやら、氷華はそれに気付いていないようだし、一凛も隠れて氷壁近くの敵を注視している。
ただ、それも仕方ないだろう。入り口の近くは明かりがなく、彼女達の眼では何も見えない状態なのだ。
そんな自分にしか知り得ない状況に、呻きを漏らしながら慌てふためいて魔法を発動する。
「くそっ、爆裂!」
正直怖かった。人を傷つけることに抵抗があった。
だけど、あの手榴弾で自分のみならず、氷華や一凛が死んでしまうことを想像した途端、意識が鮮明になった。
彼女達が死ぬくらいなら、あいつを殺す。息の根を止めてやる。
瞬間的にそう感じてしまった。その途端、意識することなく爆裂の魔法を放っていた。
鼓膜が破れんばかりの爆発音が響き渡る。
それに混じってガラスの割れる音や人の悲鳴が聞こえてきた。
ただ、意識は既に別次元へと移り変わっていた。
やらなきゃ、二人ともやられちゃうんだ……絶対にやらせないぞ!
「絶対に二人を傷付けさせないぞ! 爆裂!」
手榴弾を持った者のみならず、先程まで一凛とやり合っていた襲撃者のところにも爆裂の魔法をぶち込む。
それが冷めやらぬうちに、今度は外に向けて魔法を放つ。
「お前等なんて、消えてしまえ! 爆裂!」
恐らく正常な精神状態ではなかったのだろう。だけど、今は敵対する者を根絶やしにする気持ちしかなかった。
そう、人間も魔物も、既に同じ存在となっていた。
そんな僕の右腕に重さが加わる。それに続いて背中に温もりを感じた。
「もういいぞ! 魔物じゃあるまいし、これで動ける奴はいないだろ」
「そうよ。もういいわ。黒鵜君、ごめんね。無理させちゃって。こんなつもりじゃ無かったんだけど」
右腕を掴んだ一凛が寂しそうな表情で首を横に振って見せると、背中の温もりから氷華の声が聞こえてきた。
ああ、二人とも生きてる……生きてるんだ……
ただただ一凛の腕を眺め、氷華の温もりを感じ続ける。
すると、背中の氷華が震えていることに気付いた。
ああ、やっぱり彼女も怖かったんだよね……僕は本当に愚かだ……彼女達こそ無理をしてたんだ……
氷華の言葉で理解した。
僕等にとって、この戦い自体がとても重い経験だったんだと。
それを彼女達は理解していて、僕は全く理解できていなかったのだと。
弱い心を鍛えるために、彼女達自身が無理を押して戦ったのだと。
そうでなければ、無理をさせたなんて思う訳がない。
氷華も、一凛も、なんて好い奴なんだ……僕のことをそこまで考えてくれてたなんて……
粉塵が収まり、辺りには引き千切れた衣服が散乱し、それに隠れるようにして、人の四肢が転がっている。
それは、手の先だけだったり、腕だけであったり、脚だけだったりもする。
最悪のパターンは、頭だけが転がっていたりもするはずなのだけど、なぜか不思議なことに見なくてもいいと言わんばかりに、沢山の衣類が襲撃者の無残な骸を覆い隠していた。
一凛の腕から視線を外し、その光景を己が戒めであるかのように見渡す。
死した者に対する謝罪ではなく、己が弱い心を叱咤しているのだ。
この光景を目に焼き付け、何を守り、何と戦うのか、己に言い聞かせているのだ。
周囲の様子を確かめ、生ある者が僕等だけであると知ると、ゆっくりと体の向きを変えた。
すると、なぜか氷華は慌てて俯く。一凛に関してはそれを見てニヤリとしている。
そんな二人に向けて、偽りない本心を口にする。
「ごめん。それと、二人ともありがとう。二人が居なかったら、僕はいまごろ死んでたと思う。君達に会えて本当に良かったよ。もっと心を鍛えるから、これからも一緒に居て欲しい」
気持ちが高ぶっている所為か、普段なら恥ずかしくて口に出来ないような言葉をスラスラと話せた。
本来なら人の命を殺めたばかりで落ち込むはずなのに、なぜかスッキリとした気分だった。
そんな清々しい気分で話し終えると、氷華はハッと頭を上げた。
それを見て、彼女は慌てて俯いた理由が解った。
彼女は泣いていたのだ。大きく丸い瞳からは涙が零れ、頬を伝って顎にまで達していた。
彼女は涙を吹き飛ばすかのように首を横に振った。
「そ、そんなことない。私の方がもっと心が弱いの……それなのに、黒鵜君を試すようなことして……私の方こそ反省することばかりだわ。こんな卑怯でつまらない女だけど、見捨てないで欲しい……」
大粒の涙を零しながら必死に謝り始める氷華は、縋り付かんばかりの勢いで前に出るのだけど、チラリと一凛を見遣って脚を止めた。
一凛はそんな氷華を見てクスリと笑い声をこぼすと、笑顔で告げた。
「別に遠慮は要らんぞ? まあ、それはいいとして、うち等ってみんな長所もあれば欠点もあるじゃん。だから助け合えばいいだけだと思うけど? だいたい、黒鵜のすんげ~魔法がなかったら、うち等ってとっくに魔物の腹の中だろ? いや、とっくに消化されて排泄されてるとこかな?」
「ちょ、ちょっ、一凛! 空気が……台無しだわ」
「あはは、あはははははははは」
しんみりと、でも、しっかりと、仲間としての気持ちを確かめ合っているところに、一凛の空気を読まないジョークが炸裂し、氷華はこめかみをピクピクさせながら苦言を漏らした。
そんな何時もの光景が温かくて、とても穏やかで幸せな気分になると、自然と笑いが込み上げてきた。
「ちょっと、黒鵜君も笑い過ぎ!」
「いいじゃん、変にしんみりするよりも、楽しくやろうぜ。うち等はまだまだ若いんだし、これからだぞ。あははははは」
「そうだね。一つ一つ積み重ねればいいんだよね」
一凛は氷華の苦言を一蹴して笑い始める。
確かにその通りだと感じて、それに同意すると、笑っていた一凛がクレームを入れてくる。
「それはそうと、黒鵜、もうちょっと男らしくなれよ。口調とかも。だいたい、ウジウジしてないで、氷華なんて押し倒しちゃえばいいんだよ。この世界は弱肉強食になったんだからな」
「えっ!? 押し倒してもいいの?」
「だから、真に受けて喰いつかないの! いいわけないじゃない! バカっ! 氷漬けにするわよ!?」
一凛の言葉を真に受けて、すぐさま視線を向けたのだけど、まさに怒髪天の様相となった氷華から、しこたま怒らることになるのだった。