普通の人間と猫耳の少女
2つの大国に挟まれた小さな国がある。名前を「茶狐」というこの国は、狐の耳を生やした種族が住んでいた。
そんな国の辺境で、普通の耳をした普通の人間が1人寂しく住んでいた。
「こんなところか」
薪を割り終えて、少年は大きな伸びをする。割った薪と、薪を割るために使った道具を片付けてから少年は周りを見渡す。少年とっては見慣れた山々が広がるのみだ。
「茶狐」では珍しく、普通の耳をした普通の人間がであるこの少年の名前は「ヒョウシギ」という。しつこいようであるが、ヒョウシギの住んでいる場所は国の辺境、いつもであれば彼以外に人影はいない。
しかし、この日はいつもと違った。
突然、どこからともなく動物が爪で木を引っ掻くような音がする。
(何だろう?)
ヒョウシギは首を傾げた後、物音をたてないように慎重に歩を進める。
木を勢いよく引っ掻く……いや、正確には木を伐ろうとしているが、上手くいかずに木を引っ掻いている「それ」を見た時にヒョウシギは目を疑った。そこにいたのは、この「茶狐」では珍しい猫の耳を生やした人だったのである。見たところ、木を切ろうとして斧を振っているのだが、上手くいっていないようである。
猫の耳をした人がいくら頑張っても、木を切れないようであったので、ヒョウシギみかねて声をかける。
「大丈夫か?」
そう口にしたヒョウシギに対し、この猫の耳をした人がやったことはとんでもなかった。 まず斧を投げ、それをヒョウシギが避けると今度は足下の石を投げ、これもヒョウシギが避けると今度は蹴りを放ってきた。ヒョウシギは蹴りをいなし、その蹴りを出した本人の額へと軽く手刀を入れた。猫耳は額を押さえてうずくまり、文句を垂らす。
「何よ、痛いじゃない」
この猫耳の言葉を聞いて、ヒョウシギも口を開く。
「いいじゃないか。その代わり俺の凄い手刀を食らうことができたんだから」
この二人の出会いから暫くして……歴史が大きく変わる大発見がされることになる。