5.準備をしたよ
ちょっと難産でした。
健康診断の後、寮の自分の部屋へ戻ると学校の制服と大きな全身鏡が届いていた。
届いた制服のサイズと鏡に映る自分の姿を見て、今の自分の手足の大きさから予想はついていたのだが、それが目に見えた事の衝撃で、私は少しの間かたまった。
鏡に映っているのは黒目黒髪の、これぞ日本人! と言った顔の2~3歳くらいの女の子であった。
私が右を向けば鏡の中の女の子も右を向き、私が左を向けば鏡の中の女の子も左を向く。
そう、今の私は2~3歳くらいの幼女姿なのだ。
部屋に届いていた制服も、小さくかわいいサイズである。
「……神の器にって言ってたから、その影響なのかしら?」
呟いてから、学校長ルナティムクーンさんの言っていた言葉――新しく作った神の器に美和子の魂を転生させて定着させた――を思い出す。
そうかそうか、新しい身体だから、まだ若いのか。
「それにしたってこの姿では、いろいろと不便なのではないかしら」
1時間くらいその事について考えていたが、考えてもどうしようもない事である事に気付いたので、考えるのをやめた。
そして制服を着てから鏡を見たら、ため息がひとつ出た。
☆ ☆ ☆
「あ、あとこれね!」
「おっけーおっけー、これだねお嬢ちゃん」
私が指差した本を他の物――筆記用具やノートなどの文房具――と一緒に店員さんが袋へとしまってくれる。
授業で必要なものを買いにきたのだが、それらを全部詰めた袋は思っていたよりも大きくて、部屋まで持って帰れるだろうかと不安になった。
ここは学校の敷地の隅にある売店。
私は今、学校の授業に必要なものを買いにきたのである。
いや、正確には買いに、ではなく、受け取りに、だろうか。
先ほどまで部屋にいた私は、部屋の机の上に一枚の紙が置いてある事に気づき、それに売店で必要なものを受け取るようにと書いてあったので、一緒に書いてあった地図を頼りに売店へとやってきたのだ。
そして、売店というからにはお金が必要なのだろうかと悩んでいたら、青黒い髪の「一球入魂!」と書かれたエプロンを着けた店員さんが出てきて「学生からはお金とらない事になってるから気にせず必要な物を言ってね!」と言ってくれたのだ。
なので、遠慮なく紙に書いてあった教科書から参考書、運動着に杖のような棒、筆記用具やノート等の必要な物を選んでいったのだが、やっぱりどう見ても、それらの入った袋と私の身体のサイズが同じくらいである。持てる気がしない。
店員さんはそんな私の心の声に気付いた様子もなく、袋をリボンで閉じて私に聞いた。
「これで全部?」
「あ、はい。そうです!」
「そっかそっか。授業大変だと思うけど、これから頑張ってね!」
にこにこと店員さんが言いながら私にその袋を差し出した。
ありがとう! と言ってその袋を受け取ろうとすると、横から手が伸びてきてそれをさらっていく。
「十夜さん!」
見れば十夜さんがにこにこと、私が受け取るはずだった袋を持って私を見ていた。
私には持てなさそうなサイズのそれを、軽々と片手で持っている。
それを見た私は、やはり大人サイズじゃないと、不便だよなぁとしみじみと感じた。
「部屋まで運びます。美和子様にはまだこれは持ち歩けませんからね」
「あ、ありがとうございます! 助かります!」
十夜さんの言葉に私は素直に甘える事にし、感謝を言うと十夜さんはフフフと満足そうに笑った。
なぜそんな顔で笑うのかはわからないけれど、その笑顔につられて私も笑顔になる。
釣られて笑顔になった私に気付いた十夜さんは素敵な笑顔ですねと言い、私の頭をひとつ撫でた。
「では、行きましょうか」
「はい!」
親切な十夜さんと手をつないだ私は上機嫌で、部屋へと戻るのであった。
プロット通りに書けなさすぎて、最初から見なおした方がいい気がしてきた今日この頃です。
なので、そのうち最初から全部書き直すかもしれません。
※2015年1月28日 少し修正しました。