ぼっちで飲み会行ったら、自殺した件。
大学生の醍醐味であるゼミ。
自由の身になった大学生でも一番コミュニケーション能力が問われるこの授業。
コミュ障な私にとっては地獄の時間。今回の主人公猪狩にも共感できる人はいるのではないでしょうか?
今日は、大学卒業した後の最後のゼミの飲み会である。
今回はいわゆる送別会である。
でも今回だけは強制参加であり、今まで避けていたのにこの会だけは逃げることができなかった。(この時代に強制参加とかプライバシーに問題があると思うが・・。)
私はこのゼミでいうとTHE 空気の役割を担っている。だから友達もいなければ、しゃべったことも一度もない。教授とは卒論で喋ったことはあるが、終始気まずい雰囲気が漂うのがどうしてもコンプレックスだった。それにこの教授、ゼミでいつもキャッキャとしている陽キャたちにだけに授業中意見を求め、いつも楽しそうにしている。
私と喋っている時はそんな顔全然見せないのに。
まあ文句や不満は喋れば喋るだけ、ごっそりと出てくるわけだ。
それはさておき、本題に入ろう。
開始は19時。私は店にぎりぎりにまざとついた。きっと早く行けば行くほど、いきっているやつらがいつも通り騒いでいるような気がしたからだ。
店のドアを開けると、すでに送別会は始まっていた。一気に私の方に多方面から視線が集まっていることに気づく。そして教授が私の所にすたすたとやってくる。
「えっと、待って名前が・・。」超失礼な教授である。本当に・・。
「猪狩です。」私はボソっと名を口にしてやった。
「そうだ猪狩さん!猪狩さんの席は・・あそこね!」
教授が指さした場所はキャピキャピ四年女子が座っている。飲み会でしか会うことのなかった三年生の席なら静かに時を待つことができると思ったが、結果教授と仲の良いメンバーが集まった席であった。
しかもその席に教授も座っているようだ。
(最悪だ。)
私の読みが外れた。これから二時間、私はどうなってしまうのだろう、そんなことで頭がいっぱいになる。
でも私は言うとおりに黙って座るしかない。周りの目を気にしながら座る。
私が座るのを確認してやけにハイテンションな教授が「猪狩さんがきたからカンパーイ」といって女子たちに絡みに行く。私はまだ飲み物を頼んでいなかったため会釈だけしてその場をやり過ごしておいた。
「教授、面白い話してくださいよ。」
とキャピキャピ女子がいつもの様になれなれしく言う。
「愛してるよ、君達の事。」
「きゃー!!いい話!」周りの女子たちがざわつく。(いや、私を除いてだと思うけど。)
「ホント、○○ちゃんも僕の事愛してくれてるでしょ?」
キャピキャピ女子の一人にそう言う。
(うわ、教授酔っぱらってる女子に下ネタかよ)と心の中でつっこむ。
「えー、愛は感じてたけど、へんな意味じゃないのであれば?」
「もう僕の生徒じゃないんだから、こういう話もしていいと思うよ。」
(キモ。)
この飲み会を通して知ったこと、この教授悪い意味でヤバいのかもしれない。
一気に私は深くかかわらなくて良かったと心底思った。
「そうだ。四年生、みんな立ってください!」
キャピキャピ女子4人が先陣をきって話し出す。
みんな立ちだしたから私もこっそりと立つ。
「木下教授、今までありがとうございました!これみんなで作った色紙です!」
(色紙なんて書いたこともなければ、みんなで作った記憶などない。)
これは一部の人間だけで作った色紙なんだろうなと察する。
でも教授は「いいの?ありがとうございます。」と嬉しそうだ。
「写真撮ろ!」そう言って
「四年生集まって!」とその場をしきられた。
でもおかしな話である。寄せ書きにも参加していない人間が写真だけ写って欲しいと言われても私にとっては後味が悪い。書いて欲しいと彼女らが言ってくれたら書いたのになと思うことは募るが、納得のいかない微妙な顔で私は写真に写った。
その後、彼女たち四人と教授はツーショットやらみんなで撮って盛り上がっていた。
達成感を感じていて、この空間に満足しているのは彼女らなのだなと思いながら、酒を飲み独りぼっちの席で遠くから眺めてみる。
私は一人で思う。もっとこのゼミで友達作りとかコミュニケーションだとか上手くできていたらこの子たちみたいに充実した二年間が過ごせたのかなと。
私が今日みたいに一人ぼっちで誰からも相手にされないのは、きっと今までの行いがすべてだと実感させられる。
私だって、ゼミの子たちに好かれたかったし、教授からも信頼されたかった。
二年間ボッチでゼミに参加するつもりではなかった。
考えれば考えるほど虚しく思う気持ちで満たされていく。そのたびに酒が進んで気づいたらもう七杯くらい飲んで、くらくらしてきた。
でも周りの目と飲まなければこの場にいられないと思うと酒が進んでしまうのだ。普段酒を飲まない私だがこれが大人が酒を飲みたくなる衝動の根源かと思う。
そんなこんなで時間が経って二時間も過ぎようとなる時間になった。
一人で飲んでいた私のもとに教授がやってきた。
なんだ?と不審がった私だったが私に話しかけてくれにきたと思い少しうれしかった。
「猪狩さん、会費の2000円持ってきてくれたかな?」
お金・・・。少し期待した私がばかだった。
しかしお酒の力を借りれる今、「あ!ごめんなさい。渡すの忘れてましたね!」といつものテンション以上に明るく振舞って見せながら財布を開ける。
「あ、はい。」ちょっと教授は戸惑っているのが分かる。
「すいません。お札折れちゃってるんですけど!」教授の戸惑い無視して私らしく話しかけてみる。
「あ、大丈夫です。ありがとう。」そういって教授は2000円を受け取ったらすぐに女子たちの方に行ってしまった。
今日初めて話しかけてくれたことに舞い上がってしまった私に恥を覚えた。
そして
「じゃあ今日はお開きにしましょう。一本締めでお願いします。よーお!」
パン!
これをもってゼミの送別会は終わりを告げた。今までで一番長い二時間だったと感じた。
“しゃぼんだま とんだ
やねまで とんだ
やねまで とんで
こわれて きえた”
歌いながら一人で暗いホームを歩いた。誰もいないホームでなんとなく口ずさむ。
電車が来る案内が流れブオン!と電車が音を立てて後ろから走ってくるのが分かった。
私はくるりとふりかえる。
「あ。。。」体勢を大きく崩し体が落ちていく。
ひとつの魂がこわれて きえた。
ご覧いただきありがとうございます。
ゼミ選びも大学生活を充実させるためにも大事なものであることを感じていただけると幸いです。




