#1 不思議な妖怪
全てが、どうでも良くなった。視界に入る全てが嫌になった。もちろん、俺が悪いのは知っている。それでも、全てが嫌になった。
きっかけは、小学校の頃。俺は俗に言う「いじめ」を受けていた。理由? ただ単に、俺が気に入らなかったから。いじめなんてそれだけで起こるんだ。世間はいじめられる側が悪いと言うが、"気に入らないだけ"。それも、いじめっ子にとったら立派な理由だ。だとしても、いじめはダメだろうが。
そこからというもの、俺は精神が弱って言った。次第に、もうどうでも良くなり死のうとした。
だけど、神はそれを許さない。何度も何度も自殺未遂、お陰で後遺症ばかりが残った。神からのお土産とでも言いたそうだな。腕は使い物にならなくなり、目は片方しか見えない。オマケに耳も聞こえないときた。これじゃいじめの時よりよっぽど酷い。まぁ、それが俺の罰なんだろうけどさ。
こう見えても俺は仕事をしている。とは言っても仲間からは暴言を言われたり愚痴を吐かれたりするが、それはもう俺の耳に入らない。都合のいいおもちゃだ。
「死にてぇ……」
自分の声なんて久しく聞いていない。どんな声か忘れちまった。
「お、おい! そこの兄ちゃん!」
あ〜、帰って何すっかな。特段することはねぇけど。
「止まれって! 車来てるぞ!」
「……え?」
俺は言葉に驚いたのではなく、横から来る大きな影に驚いたのだ。
「はは、結局……こんなオチかよ。最初から俺なんかを産むんじゃねぇよ、クソ野郎が」
グシャっと、街中に嫌な音が響き渡る。
「救急車呼べ!」
「ぁ……あ」
視界がぼやける。そうか、これが死ぬってやつか。
定義ならここで走馬灯が流れるところだが、生憎と、俺には流れてこなかったようだ。
「あは……はは」
何年も、何年も流れなかった涙が今、ここで流れた。今まで蓄積されたのが解放されたかのように、一気に溢れ出す。
「なんで、俺なんかを産んだんだ。ごめんよ、こんな俺で。別の人が産まれてれば、結果は変わったのによぉ。く……はは、あはははは!!」
狂ったように笑い出す。それが、"この世界"での最後の声となった…………
「ん……あぁ」
ゆっくりと、ゆっくりと目を開ける。俺は助かったのか? いや、助かって欲しくない。それにしてもどこだここ。
「森……? こんなに深い森、あったっけな」
そこで、ようやく違和感に気づいた。
「え、なんで俺、声が聞こえて……」
先程までは聞こえなかったはずの声が聞こえている。どういう、ことだ。
「それでも、思いは変わらない、か」
そんなことを思い俺は、森を歩く。腕は、片腕だけなら使えるようだ。両腕は使えない。
「腕があるのって、違和感だな」
今まで腕がない生活になれていた為、すごく違和感だった。その時、ガサッと草むらが揺れる。
「あ……? 誰かいるのか?」
今の時間帯は夜。誰かいても不思議では無いが……
「なんだか不気味だな、まぁ死ねるなら本望か」
俺はいつでもどこでもネガティブ思考。これが俺の唯一の取り柄だ。
「あなた……」
すると、草むらの奥から少女の声が聞こえた。
「人間……?」
「妙な言い方をするな、まるで自分がそうじゃないって言ってるみたいだぞ?」
「実際そうだよ〜? 私は妖怪だもん」
「……妖怪?」
声の主は草むらから飛び出し俺の前に現れた。
見た目は金髪のいかにもアニメのヒロインのような少女で、服は黒色、見た目は……幼い。
「うん、妖怪。あなたは人間なのか?」
「そうだな、俺は人間だ」
「じゃあ、食べてもいいのかー?」
食べる……? その言葉を理解するまでには時間はかからなかった。なんせ……
「あぁいいぞ、このまま生きてたってしょうがないからな、好きなだけ食べるといい」
「……え」
その少女はきょとんと呆けた顔をして、数秒固まった。それから……
「……あなた、もしかしてドMってやつ?」
「いいや、違うぞ」
部分的にいえばそうなのかもしれないが、俺は死にたいがために行動している。それだけなのだ。
すると、少女は俺の隣にちょこんと座る。なんとも可愛らしい。
「なんで、そんなに食べられたいの?」
「色々あったんだよ、それでも全部どうでも良くなった。生きててもなんの価値もないからな、死にたいんだ」
「……そういう人間もいるのね」
「まぁ、いるだろうな。そういや名前は?」
「私はルーミア。闇の妖怪」
「妖怪にも色んな種類がいるんだな」
そうか、妖怪と言っても一括りでないんだなぁ。
「俺は……そうだな、幸輝とでも名乗っておこう」
「幸輝……? いい名前だね」
「そうか? そりゃありがとな」
と、適当に返しておく。
「そういや、食べないのか?」
「うーん、幸輝の話を聞いてたら、食べる気がなくなっちゃったー」
それよりも、と、ルーミアは一度体制を崩してから……
「それよりもさー、私のここ、寝る?」
ルーミアは膝をポンポンとしている。え? どゆこと?
「いいのかよ、俺なんか」
「ううん、幸輝だからいいの」
「お前、見ず知らずの男に、しかも1分くらいで膝を貸すって……」
「何かあったら食べれるしー、私妖怪だもん」
「そういやそうだった」
まぁ、なら問題ないか。
「それじゃ、お言葉に甘えて」
ルーミアの膝の上に寝転がる。膝枕というものは産まれて初めてだ。
「気持ちいいな、予想以上だ」
「良かったー。おやすみなさい、幸輝」
「夜、だったな。おやすみルーミア」
俺は、闇の中に意識を落としていくのだった。
幻想入り小説を書いてみました。こちらは不定期で投稿しますのでご理解をお願いします。




