偉大なペリカンとホームズのお家
「それで、なんで猫が海にいる?」
そうだった。はじめに質問されていたことを答えていなかった。
だから、僕はミサさんのお家の出来事からちゃんと話してあげることにした。
「白い砂のあった場所だったら、あっちか」
僕の話を聞き終わったペリカンはそれだけを言って、方向を変えて飛び始めた。
「どこへ行くの?」
「猫は海にいない」
よく分からないけど、ペリカンはやっぱりミサさんに似ていた。
僕はペリカンの口の中から海を見下ろして、そんなことを考える。
途中カモメがやって来て、ペリカンをからから笑ってからかった。
「猫まで食べるようになったのか? ほんと、なんでも食うな」
ペリカンはまっすぐ前を見たままだ。
「ペリカンは僕を食べないよ」
ペリカンが何も言わないから、僕が代わりに食べられていないことを教えてあげる。カモメは少し面白くなさそうに、だけどやっぱりからから笑って「頭悪いからなぁ、そいつらは。気をつけろよ」と飛んで行った。
ペリカンは、偉大な白い魔女さまにすごいと言われているミサさんに似ているんだから、頭が悪いわけないじゃないか。
なんだか、嫌な気分になる。
そんなことも分からないカモメの方が、頭が悪い。
そう思って、とげとげの自慢の舌をべーっと出しておいた。
海の色はまた少し深い青になってきていて、太陽の高さもずいぶんと低くなってきていた。とっても暑いはずなのに、海の上に吹く風はとても気持ちよく、僕の耳を撫でていく。ほんの少しお魚のにおいもするから、とっても気持ちいい。
なんだかおなかも減ってきた。
そう思っていると、見たことのある白い砂のある場所が見えてきた。
「猫、あそこか?」
「うん」
ミサさんの家も小さく見えるし、白い砂と黒い砂が見えるし、海が行ったり来たりしているし。
ペリカンは僕を口の中に入れたまま、黒い砂の方に着地し、ゆっくりと下ろしてくれた。
「またね」
そう言って別れたけれど、ペリカンは何も言わずに大きな翼を広げて飛んで行ってしまった。とってもかっこよかった。
あの翼はどこへでも行けるとてもかっこいいもの。猫にも人間にもない。
きっと、ペリカンはずっとペリカンでいたいんだろうな。そんなペリカンに僕はただ手を振って見送った。
「おい、どこへ行ってたんだよ」
ペリカンにさようならを言って突っ立っていたら、足元から不貞腐れたような、そんな声が聞こえてきた。
「あ、ヤドカリノホームズ」
「一緒に探すって言ってたのに」
あ、……
「ごめん、ヤドカリノホームズ。あのね、僕……」
そこまで言うと波が僕の足を攫いにきて、ほんの少し僕を沈めた。もう、砂が僕の足を食べても平気。もうびっくりしない。だって、大丈夫だもの。だから、そのまま「ごめん」をもう一度、言おうと口を開いた時に、僕の足元にいたヤドカリノホームズが声をあげた。
「ねぇっ。これ、見つけてくれたの? わぁ、すっごくかっこよくて綺麗で、ちょうどいい大きさ。わぁ、ありがとう」
ヤドカリノホームズの嬉しそうな声に、首をかしげると、そこには白いしましま模様が綺麗な三角帽子が落ちていた。ヤドカリノホームズは、ハサミでその三角帽子をつつきながら点検した後に、ひょこっと帽子から出てきた。
ヤドカリノホームズって僕と一緒のしっぽがあったんだ。もしかしたら、僕と同じ猫だったのかもしれない。そう思うとなんだか嬉しくなって、僕のしっぽもぴこんと上がった。ヤドカリノホームズはとても器用に、新しい帽子のお家の中にしっぽから入っていく。そして、「どう?」と言って、僕を見上げた。ヤドカリノホームズは、ほんの少し白い魔女さまと同じになっていた。
「うん、かっこいい」
僕が見つけたものじゃないけど、ヤドカリノホームズが嬉しそうだから、それでいいや、と思った。
それから、ヤドカリノホームズと海に溶けちゃう夕陽を見ていたら、ヤドカリノホームズが大事にしていた茶色の方のお家をくれた。
ずっと大切にしていたお家。
「ありがとう。宝物にする」




