第7話 ただの領主が仲間と今後の動きを決めた件
魔王と出会った翌日、俺とヒナツは墓に花を手向けにいき、その後今後について詳しい話をするため一度拠点に戻ってきていた。
「そういえば昨日言ってた覚醒って?」
「勇者の種が『発芽した』って言ったんだよ。つまり、その先があるってことだ。植物だってそうだろ?発芽し、茎をのばし、花を咲かし、種を残す。種を残す部分はどうか知らないが、おそらく力を開花することはできるはずだ。それも同じ条件で。」
「なんでそう思うの?」
「感覚的にそう感じるっていうかなんというかそんな感じだ。それにわざわざ種という表現をしているのも気になるしな。」
「アランがそういうならそうなのかもね。」
「それじゃ、今後の話をするぞ。あんまりうじうじしてるとみんなに怒られちまうからな。まずは今日国王の使いとの会談を設けてある。そこで覚醒に関する詳細を詰める。」
「私も同席していい?」
「もちろんだ。場所は王城にあまり出入りしているのを他国から見られると問題になりかねないってことで仕方なくこの拠点を指定した。ほかにこんな話をできる場所もなかったからな。」
「それもそうだね。いつ頃に来るの?」
「あと2時間くらいだったと思う。大体の時間しか決めてないから向こうの都合次第になるだろうが。」
「じゃあそれまではゆっくりだね。」
「だな。そろそろ昼になるし、来る前に何か食べに行くか?」
「しばらくクエストもまともに行けないかもだから節約しない?」
「大丈夫だ。一応貴族時代の俺の資産ってことで置いておいた金が結構な額残ってる。みんなに何かあったときとかのために置いておいたんだが今使うべきだろう。」
「研究資金にしようと思ってたお金じゃないの?」
「そうだが、どうせ魔王を全員倒せば国からいくらでも金を絞れるだろ。」
「それもそうだね。」
「ってことで何か食べ行くぞ。」
「うん!」
みんなでよく通っていた定食屋で昼飯を済ませ戻って少し待っているとドアをノックする音が聞こえた。
「はーい。」
ヒナツが出迎えてくれた。
「お初にお目にかかります。私、国王様の名代としてまいりました。モスと申します。以後お見知りおきを。」
「知ってるとは思うが、勇者のアランだ。この子はヒナツ。今回の魔王からの奇襲で生き残った俺の唯一の仲間だ。」
「お話はお聞きしております。お悔やみ申し上げます。」
「世辞はいい。早く本題の話を済ませてしまおう。」
「アラン様がそれでよろしいのでしたらそうさせていただきましょう。ヒナツ様も同席されますか?」
「はい。同席させていただきます。」
「かしこまりました。それではさっそく本題に移らせていただきます。勇者の覚醒についてお話したいのですが・・・」
「それは俺から。俺は昨日勇者として発芽した。ここで気になるのは発芽という表現だ。まるでその先があるかのような表現。」
「つまりその先があると睨んでいると?」
「確信しているといったほうがいいな。条件はモンスターの魂を大量にかつ、短時間で獲得すること。それも時間は3分以内だ。俺から一定範囲内で同時にモンスターを倒せばいい。1000体もいれば足りると思うが、それを準備していただきたい。できないのなら他国に移ることも辞さない。」
「時間がかかってもよろしいのならご準備いたしましょう。他国に移ってこの国を滅ぼすなんて言われては敵いませんからね。」
「分かってくれるのならいい。今後要求がある場合どうすればいい?」
「あまり過度なものでなければ私の直接言いつけていただいて大丈夫です。その代わり、月に1度こちらに伺わせていただきますがよろしいですか?」
「そのくらいはいいだろう。」
「ありがとうございます。それでは本日はこれで失礼いたします。覚醒についてこちらでご用意でき次第月一の訪問とは別で突然お伺いする可能性がありますのでご了承ください。」
「分かった。」
「覚醒の用意が整わなければ次回は本日よりちょうど1月後にお伺いさせていただきます。それでは失礼いたします。」
「帰ったね。」
「だな。俺は少しやることがあるから部屋に籠る。ヒナツはどうする?」
「一緒にいちゃダメ?」
「まぁ、いいが面白いもんじゃないと思うぞ?せっかくヒナツが付き合ってくれるなら訓練場に行くか。」
「どうして?」
「ちょっと見てもらいたいことがあってな。」
「いいよ。それじゃ行こ!」
訓練場は国王から好きな時に使っていいと俺たちように常に貸し切り状態にしてある。
訓練場の中に入り、さっそくスキルの発動を試みる。
「ヒナツ、俺がスキルを使った時の魔力の流れを見ていてくれ。」
「いいけど、そんな詳しくはわからないよ?」
「大体でいいんだ。いつもと違うところがあるかどうか、くらいで。」
「それくらいならお安い御用だよ。」
「それじゃ行くぞ。」
地面から様々な植物の茎やツタを複合させ、強度を増したツタを出し、それを動かすことで、普段の自分ではできない速度での移動を試みる。
結果だけでいえば成功だ。だが、俺が知りたいのはそこではない。魔力のほうだ。何か変化があればいいが・・・
「どうだ?」
「特に変わらないね。もともと制御してるレベル以上の変化はないと思うよ。魔力が多すぎて観測できてないだけかもだけど・・・」
「それもそうか。ありがとう。それじゃ、もう1つ検証をしよう。」
さっきのは複数の植物の複合で現実に存在しない植物を顕現できるかという実験。次にやりたいのは現実に存在しない植物を顕現させることができるか。過去の文献に記されていたものの、最近の研究で実際には存在していないことが立証されたマンドラゴラの亜種モンドラゴラ。マンドラゴラは鳴き声を聞くと呪われるという迷信があるが、モンドラゴラはその声を聴いたものには幸運が訪れるといわれているとされていた。
だがマンドラゴラの鳴き声を聞いたものが偶然幸運に見舞われ、そういう迷信が生まれていたという研究結果が出たことで完全に存在が否定された植物型モンスターだ。
姿はマンドラゴラと同じ、その性質だけを変える。それをイメージして顕現する!
「これはマンドラゴラ?」
「どうだろうな。実際に存在しないものを出せるかを試したくてモンドラゴラというマンドラゴラの亜種として存在するとされていたものを作り出したつもりなんだが・・・」
「見た目は完全にマンドラゴラだね。抜いてみる?」
「そうだな。」
抜いても泣き叫ばない。それどころかとてもおとなしい。マンドラゴラは抜いた瞬間に泣き叫び、モンドラゴラは抜いても基本的には鳴かないという言い伝えもある。ということは成功したとみていいな。俺が植物として定めて世界の秩序から外れていなければどんなものでも顕現させることができるスキルということだ。
「泣かないね。」
「成功したってことだろうな。俺が植物と定めたものなら基本的に何でも作れるみたいだな。」
「すごいね!何でもできるってことじゃん!」
「そうだが、できること自体は結局限られている。これをどう使うか、だな。」
「魔王との戦いだもんね。いろんな使い方ができるようにしっかり準備しないとね!」
「だな。しばらくの間は訓練場で戦い方の研究と身体能力と向き合うことにするか。」




