第58話 ただの領主が魔導国女王の身を案じた件
沈黙が流れる。当然だろう。自国の王都に魔王が潜伏している可能性が出てきたのだから。
「あなたはどう思っているのかしら?」
震え声ではあるが頭は回っているのだろう。だが恐怖が勝つのも当然か。
「今思い返してみれば明らかにおかしくはあった。」
「具体的に教えてもらえる?」
「この国の人間はほとんどが魔法に精通している。要は魔力のない人間や俺のように魔力量がバカみたいに多い人間は目立ち、魔力量がそれなりに多い人間が多い以上そういう人間は目立たない。」
「そうね。」
「それ達が出会った魔王を名乗る少女は不自然なほどに魔力が揺らがず、量も少なく感じた。もちろんこの国の人間としては少ないと感じるくらいで普通なら多いほうなのだろうが、魔力を視ることが出来る人間の魔力は俺を見るとどうしても揺らぐ。圧倒的な魔力量を前に委縮するようにな。だがあいつの魔力は異常に安定していた。少なくとも何か隠し持っていることは確かだ。」
「なるほどね。王都内で暴れられると厄介ね。」
「多分それはない。あれが魔王、もしくはその手先だった場合、可能性は2つ。1つは偵察。この国を堕とすための用意をしている。もう1つはミラン女王、あなたの暗殺だ。」
「国の頭を殺せばどうとでもなるとでも?」
「いや、そうではない。というより、この可能性は例の少女が魔王だった場合のみ考えられる可能性だ。」
「どういうことかしら?」
「アラ、あの少女に見覚えはあるか?」
「ボク?ないよ。魔王にあんな顔の奴いないもん。」
「そういうことね。少女が魔王だとすると、元魔王のアラさんが知らないということは姿を変える力を持っている可能性が高いのね。」
「強力な魔法力を有する魔導国の力を手中に収めることが出来る。それこそブレクルスでも国王選抜にディアブロの配下が乱入してきたんだ。魔王が国を手中に収めようと動く可能性は十分にあり得る。」
「そうね。護衛を増やすとするわ。」
「万が一の備えとしてこれを渡しておく。」
「この種は?」
「魔力を注ぐことで神盾という強力な盾が注がれた魔力の持ち主への攻撃を3分間自動で防いでくれる。展開された際の位置情報も俺に伝わるようにしている。その3分の間に俺が駆けつける算段だ。」
「頼もしいわね。ありがたく使わせていただくわ。」
「あとは、これだな。」
「こちらは?」
「寝室の侵入しうる場所に仕込んでおいてくれ。最初に魔力を流した人間が睡眠をとると強力な蔦が展開され、誰一人として通れなくなる。目を覚ますと5分かけて徐々に蔦が消えていく。寝込みが一番危ないからな。城下にあんな危険人物がいて、姿を変えられる以上王城に入られない保証はない。今後は身内すらも疑うことだ。」
「分かったわ。」
「できる限り早い討伐、最低でも追い出すよう努力はするが・・・」
「お願いね。これからあなたたちの拠点にする場所に案内させるわ。」
一度ミラン女王との話は切り上げ、俺たちは城下のそれなりに大きい家へと案内された。
「なんだか落ち着くね。」
「まだまだ城暮らしにはなれないか?」
「うん。なんだか落ち着かなくって。」
「まぁ、分からなくはない。さてと、明日から本格的に動くんだ。夕飯を食べたら早めに休むぞ。」




