第57話 ただの領主が魔王と思わしきなにかと遭遇した件
ミラン女王からの文も届き、俺たちはその場所へ向かって世界樹で出立した。
「事前に聞いてはいたが本当に人のいない場所だな。ここからは神蔦で高速で移動するが用意はいいか?」
「うん。」
「ボクもいいよ、ご主人」
「なら行くぞ。」
神蔦で3人を包み込みそのまま地面から進行方向に向かって生やした蔦を転がすように動かし、通り過ぎた蔦は消滅させる。これを繰り返し超高速での移動を可能にする。
「あれ?意外と平気?」
「次元門の応用だ。ここは異空間、あの神蔦の球体の中がそのまま異空間につながっている状態だ。」
「外に出たらあれが王都近くまでついてるってことね。」
「そういうことだ。」
「さすがご主人だね。」
かなり早いが到着までは20分ほどかかる。到着後の動きや万が一、予期せぬタイミングで魔王に遭遇した場合の対処などを話しているとあっという間に時間が経ったようで王都近くの目立たない場所に到着した。
「着いたみたいだ。ここからは少し歩きだ。」
「さすがにあんなのが急に王都の近くに来たら騒ぎになっちゃうもんね。」
「あぁ。だが、王都に相当近い森までの人目につかない道を教えてもらってここまで来た。人には見られてもないだろうし、ここから出て王都に向かえば問題ないだろう。魔物が出没する可能性もある。慎重に行くぞ。」
結局魔物に遭遇することもなく、王都の検問所までたどり着いた。魔物が強くなっていることで警戒が強化されているのだろう。
「貴様、魔物を連れているな。従魔登録書を見せてもらおうか。」
「俺の国では従魔登録書は不要なので申し訳ないが持ち合わせていない。代わりといっては何だがこれを確認してくれ。」
兵士は女王からの招待を証明する書類に目を通す。
「これは失礼いたしました。どうぞお通りください。」
すんなり通してくれ、王都に入ることが出来た。魔法の国ということもあり、多くの人が魔法使いのようだ。検問の兵士たちも剣術も鍛えてはいるようだが魔法が中心の戦闘スタイルなのだろう。
「ねぇ、そこのおにーさん。」
「ん?俺のことか?」
「うん。おにーさんも従魔を連れてるの?」
「あぁ。も、ってことはお嬢ちゃんも連れてるのかい?」
「そうだよ。お友達がいっぱいいるんだ。」
「あまりむやみに従魔を増やすとその力を奪おうとする人間だっている。気を付けるんだぞ。」
「大丈夫だよ。」
そういうと俺の横を過ぎ去ろうとする。そして俺の真横を通過した瞬間、俺にだけ聞こえる声で
「だって魔王だもん。」
慌てて振り返るが人でごった返しているうえにおそらく気配を隠すのがうまいようですでに見当たらない。
「アラン、慌ててどうしたの?」
「いや、何でもない。それよりも早く女王に謁見しようか。」
この場はいったん考えないことにしてミラン女王と謁見することにする。さっきの件はミラン女王にも共有しておいたほうがいいな
「アラン王、此度は我が国のためにご足労頂き誠に感謝いたします。」
「こちらこそ、魔王への足掛かりになりうる情報を頂き感謝いたします。さて、世辞はこれくらいでいいでしょうか?」
「えぇ。どっちにしろ誰かに見られているわけでもないのだから気楽にいきましょ。さっそくだけど、こちらの状況からでいいかしら?」
「あぁ。問題ない。」
「マジクルスでは私がエルミーアに出向いている間も含め強力なモンスターが各地で目撃されているわ。討伐されたものもいるみたいだけど、その大半は取り逃がしているわ。」
「状況は理解した。こっちからも報告だ。途中まではヒナツ、いいか?足りない部分を俺が補足する。」
「うん。ミラン女王初めましてヒナツと申します。」
「えぇ。あなたももっと気楽にしてくれていいわよ。」
「はい。それじゃ、王都に入ってからのお話なのですが、アラを見てなのか従魔を従えていることに反応する少女に出会いました。アランに興味を持っているようでしたが、アランが多くの従魔を持つことに注意を促すと大丈夫だと言い残して去っていきました。」
「従魔に興味を持つ?しかも多くの従魔を従えているですって?そんな研究者はいないと思うのだけれど。」
「そいつは俺とすれ違う瞬間俺以外に聞こえない声で一言だけ言い残していった。」
「なんと?」
「『だって魔王だもん。』だそうだ」




