第54話 ただの領主が国王として会談に参加した件
会談の間に入るとすでにミラン女王とドルマニス王が着席していた。
「お待たせし申し訳ございません。」
「いえ、わたくし共も先ほど来たばかりですので。」
「改めて、英雄王アラン殿、ブレクルス国王就任、ルアミール王国国王としてお慶び申し上げる。」
「そうですね。私からもお祝いを申し上げます。」
「ありがとうございます。改めまして、英雄国ブレクルスの新たな国王として即位したアランと申します。同盟国として今後もよろしくお願いします。」
「それでは、あいさつはこのくらいにしてさっそく会談に入りましょう。」
「そうであるな。旧居の呼び出しに応じてくれてうれしく思う。今回我が貴殿らを呼んだのは他でもない、同盟国における新国王即位の祝いと同盟関係について協議するためだ。」
「そういえば、アラン王は護衛をお付けになっておられないのですね?」
「はい。ローブで顔を隠して1人で参りましたので。いつどこで魔王の存在が確認されるかわからない以上、身軽なほうがいいと考えまして。」
「世界樹を利用した転移ですよね?」
「はい。王都からは少し離れた場所ですが、私のスキルがあれば移動は自在ですので。」
「さすが勇者ですね。」
「ゴホン。今後の同盟関係に関してこれまで通り存続という形でよいであろうか?我としてはアラン王がそれを受け入れるかが気になるところである。」
「そうですね。少々これまでの関係に手を加えたいとは考えております。」
現状この3か国の同盟関係では、戦争や、魔族による大規模な侵攻が確認された際に軍事的、資本的な援助を行うというものだ。しかし、魔王がいつ現れるかもわからない今の状況、世界各国と関係を結びいち早く発見する必要がある。
「具体的にはどうなさるおつもりで?」
「先日、私のスキルは進化を果たし、植物を今まで以上に自在に操ることが出来るようになりました。それを利用し、国家間の伝達手段の向上を図り、各国で魔王の捜索に力を入れていただきたい。はっきりと申し上げるのなら魔王の捜索に協力していただきたい。」
「具体的にその伝達手段はどのようなものなのですか?」
「お見せしたほうが速いでしょう。」
俺の言葉に呼応するように神蔦でできた門のようなものが現れる。ただ、見た目的には形だけで特に何かあるようには思えない。
「これは何なのだ?」
「その前に、こちら、何の変哲もない植物の種子でございます。そして、これをこの門に投げ込むと・・・」
門を通過した瞬間種子が消える。
「消えましたね。何が起きているのです?」
「今この種子は私の管理する異空間に保管されています。この異空間に干渉できるのは私のみ。ですが、このように門を用意していれば誰であろうと中にものを入れることが出来ます。そして私はものが中に入ったことを知覚することが出来ます。」
「なるほど。文を送れば一瞬で届く、と?」
「その通りです。これから私は世界各国の国家と面会をし、各王城にこの門を設置する予定でございます。もちろんこの門から私が干渉することを疑う国家もいるでしょうから、普段私がすべての植物に付与している炎に対する耐性は失わせております。これで火をつけるだけで消滅させることも可能です。」
「なるほど。魔王がいち早くいなくなることが世界のためになるというのなら各国に協力を願うのは素晴らしい考えであるな。」
「魔王といわず、騎士団に対処できないほどの強力なモンスターであれば私が駆けつけて即座に対処するつもりです。問題がないようでしたらドルマニス王とミラン女王にはこちらを。」
「これは?」
「これを先ほどの門を設置したい位置に置き、魔力を流すことで門が開きます。生物は通れないようにしているので安心して設置してください。維持に必要な魔力はすべて私の体から供給されていますのでご安心を。」
と、まぁ大事な話はこれくらいで終わってその後は少し話をして会談は終わった。
待機室に戻り、ブレクルスに戻ろうかと考えているところにノックの音が聞こえてきた。
「どうぞ。」
入ってきたのは1人のメイドだ。
「失礼いたします。魔導マジクルス王国ミラン女王陛下の使いとしてまいりました。」
「いかがしましたか?」
「これより会食を、とのご案内です。」
「分かりました。私は護衛をつけておりませんし、城下で素性を知られるわけにもいきませんので場所を教えていただけますか?」
「特別な場所ですのでわたくしがご案内いたします。ご安心ください。変装は私の得意分野ですので。」
瞬きの隙に冒険者風の装いに変わっている。さすが魔導の国だけあるが魔法使いか。
「分かりました。それでは案内をお願いします。」
城を離れ狭い路地の先にあるレストランに連れてこられた。隠れ家のような場所だな。
「お待ちしておりました。」
「会食のご案内感謝申し上げます。」
「堅苦しいのは無しにしましょ。気を抜いてもらっていいから。」
普段のこの人はこんな感じか。普通の優しいお姉さんという感じだな。お姉さんというには歳が行っているだろうが。
「分かった。そうさせてもらう。」
「以前あった時よりも随分と強くなったようね。」
「分かるものか?」
「私は魔力の動きが普通の人以上に見えるの。以前のあなたは無限の魔力があふれてるって感じだったけど、今は制御しきれてるとは言わないけど、以前ほど荒々しくないわ。」
「そんなものか?スキルの進化でスキルが使う魔力が増えたからかもしれないな。」
「アラン王って我が国としてはすっごく欲しい人材なんだけど、魔王を倒した後、どう?うちの国に来ない?」
「その時次第だな。確かに魔導の国からしたら魔力が無限に湧く人間なんて研究対象だよな。」
「その通りよ。まぁ、この話は置いておきましょうか。今日呼んだのは他でもない勇者のあなたにお願いがあるからなの。」




