第48話 ただの領主が冒険者たちを脅した件
翌日、ブレクルス王に言われた通り、城の訓練場へと向かった。そこには確かに100人以上の冒険者が集まっていた。
「これより国王選抜武闘大会について英雄王よりのお言葉を頂く。皆、心して聞くように。」
訓練場には入り口側に王が立つのであろう1段高い足場が設けられ、俺はその下、冒険者側に王が向く方向と同じ、つまり冒険者たちに向いて立つよう命じられた。
「皆のもの、よく集まってくれた。名乗るまでもないであろうが、余は英雄王ブレクルスである。昨日、ここにいる勇者アランが帰還した。勇者アランの判断にゆだねた結果、明日の武闘大会はここにいる全員を同時に勇者アランが迎え撃つ形式とする。勇者アランに5分以内に一撃を入れたものが現れればその者を、誰一人として一撃を入れることが出来なければ勇者アランをこの国の王とする。」
「英雄王よ、それは我々に対する侮辱か?」
冒険者側はもともと発言代表が指定されていたようで、1人の男が口を開いた。
「断じてそのようなことはない。ここにいる者は余と勇者アランの決闘を見ていないのであろう?あの決闘を見たものであれば勇者アランを相手にしようなどとは思わぬのだがな。」
「たしかに決闘を見た者は今回参加を拒否した。だからといって勇者アランが100人を同時に相手するなんて俺たちからしたら舐められているようにしか見えねぇんだよ!」
「王、発言をしてもよろしいでしょうか。」
「許可する。」
「皆さんお初にお目にかかります。アランと申します。確かにあなたのおっしゃることは正しい。ですが、これだけの人数、どのような形式で執り行っても王が決まるまでにかなりの時間がかかってしまいます。はっきりと申し上げますが、100人程度であれば魔王1人を相手にするほうが骨が折れます。1つお聞きしたいのですが、ここにいる皆さんは魔王の能力について知っているでしょうか?そうですね。知っている方は挙手をしてください。」
もちろん手は上がらない。当然だ。
「魔王の能力の中には一部の魔物、魔族を操るというものがあります。私が先日ブレクルス王の助力を頂いて討伐した魔王サノイはすべての魔物を召喚し、操る力を所持していました。つまり、100体程度では済まないということです。そんな私が100人を同時に相手にするといって何かおかしい点はあるのでしょうか?」
「だ、大多数を殺す前提だからこその広範囲攻撃だろうが!俺たち相手にそんなものは使えない!」
「そう思うのでしたら猶更今回の提案を受けるべきでは?あなた方が王になるチャンスではないですか?」
「そんなハンデの中で王になったってちっともうれしかぁねぇんだよ!」
「分かりました。あなたと後ろにいるそこのあなただけはそれぞれ一騎打ちを受けて差し上げましょう。しかし、わざわざ分けるのも面倒なので、ほかの全員を処理するまで待ってください。まぁ、待つほどの時間はかからないでしょうが。」
「分かっているだろうが、使えるのは剣術とスキルだけだぞ?それでこの人数をすぐに処理できると?」
「勇者ですので。」
俺が指名した2人以外はすっかり青ざめている。俺の発言から勝てないことを自覚したんだろうな。言葉を発するこの男と、後ろのほうにいる細身の女はまだ余裕があるように見える。
「決まったようであるな。明日の武闘大会は余が当代の王として最後に見届ける正式な決闘である。皆、心してかかるように。」
ひと悶着はあったが訓練場での話は終わり、俺はブレクルス王に呼び出され煽りすぎだとこってりと怒られ、翌日を迎えるのだった。




