第43話 ただの領主が魔王の軍勢と邂逅した件
「来たか。2人も一緒だな。」
「あぁ。さっそくだが話を聞かせてくれ。この後そのまま襲撃をかける。」
「本当にやるのか?調べてからより一層勝てる相手に思えないぞ?」
「やるしかないんだ。」
「そうか。ではこちらで整理した情報は提供しよう。まずは魔王ディアブロについて歴史書からの記述だ。およそ5000年前この世界に7体の魔王を名乗る魔物が現れた。しかし、当時の魔物は今ほど強力ではなく、その王とて人類が対処できるレベルだったそうだ。しかし、魔王ディアブロだけは違ったようだ。」
「それで封印が施されたと?」
「そうだな。術者10人が命と引き換えに展開した封印結界だったそうだ。時限式なのは分かっていたことだが今とはな。」
「過去の魔王の中ではディアブロは圧倒的に最強だった、と。今の魔王だとしてもこの世界で生まれたものの中では最強に近いかもしれない。」
「それは間違いないよ。異世界から来た3人は別格すぎるけど、ディアブロは軍勢を使えばその3人と互角に戦えるくらい強いから。」
「そうか。続けるぞ。魔王ディアブロの力はその圧倒的な魔力に依存したものだ。1つは今、話に出てきた軍勢だ。奴の呼び出す悪魔は総じて神聖属性に強い耐性を持つ。無効化というほど強いものではないようだが、弱いものであれば意味をなさない上に上位のものでも一撃で消滅させることは不可能だそうだ。」
「厄介だな。本体が強いサノイみたいなものか。」
「そのようであるな。本人も魔法に卓越していて神聖属性以外のすべての魔法を習得していると書かれている。」
「そうなると、弱点もなく、魔法をバカスカ打ってくる悪魔と戦えってか?」
「そういうことだ。そのうえ奴には通常の物理攻撃は通用しない。」
「どうやって倒せっていうんだ?」
「神聖属性をまとった武器であればダメージ自体はあるようだが、奴の魔力効率は相当高いようで腕の1本くらいだと軽々と再生するそうだ。」
「一撃で倒しきる必要があるのか。」
「その様だ。魔力の回復速度も速く、何度致命傷を与えても再生されてしまうそうだ。」
「面倒だな。」
「これを聞いても本当にやるのか?」
「心配しすぎだ。無事に倒してくるさ。」
「死なずに戻って来いよ。」
「あんたを王位から引きずりおろして休ませるまでに死ぬ気はねぇよ。」
「それなら安心だな。」
本音を言うと逃げたい。どうやって勝てばいいかわからない相手なんてどう戦うんだよ。だがやるしかない。
俺たちはブレクルス王都から離れ世界樹の中に籠った。
「アラン、今回は私も一緒でいいんだよね?」
「正直神聖魔法への耐性が高いなら連れて行きたくはないが、ヒナツも来たいんだろ?」
「うん。私だってずっと2人に守られるだけってのは嫌だもん。それにちょっとは役に立てそうだし。」
「何かあるのか?」
「秘策がね。今は秘密だよ。」
「そうか。それじゃ前回世界樹を展開した位置に世界樹を生やす。すでに軍勢は離れているだろうが、軍勢が近くにいた時のことを考えて包囲される前に一気に飛び出す。アラは1人で、ヒナツは俺が連れていく。そこから先はアドリブだがいいな?」
「「うん!」」
「いい返事だ。行くぞ!」
外に飛び出したものの、軍勢は遠くにすら見えない。かなりコリスまで近づいているみたいだな。
キラ
なんだ?何かが光ったような・・・
植物の感覚で探るか。」
「バレたな。」
「え?」
「ボクですらわからなかったんだけど。」
「ちょっと遠くに光るものを見つけて植物の感覚を共有したら悪魔がいた。おそらく偵察兵だろう。飛び立ったようだし敵軍にバレているとみていいだろうな。バレているなら隠密行動をとる意味もない。一気に仕掛けるぞ!」
飛び去ってくれたおかげで軍勢の方角は把握できた。一気に駆け抜ける!
走り出して数分、遠くに軍勢が見えてきた。まずは軽く下調べと行くか!
「植手流 彼岸籠!」
これまで使用した彼岸籠とは少し違う。敵軍全体を覆い、それでは刃が届かないため、籠内壁に神蔦剣を創り飛ばしまくる!
中からは悲鳴にならない悲鳴が大量に聞こえてくる。
「それじゃ今のうちに私の秘策も行くよ!神聖結界 神の領域」
これまでに感じたことがないほどの神聖さを感じる結界が展開される。それも彼岸籠の範囲全体、すなわち数千はいるであろう軍勢すべてを覆うほどだ。
「すごいな。これが秘策か?」
「うん。リア様のおかげで成長限界を突破できたときに同時に習得したの。多分リア様から直接力を分けていただいたからじゃないかな?」
「そうか。ヒナツも成長してるんだな。俺も頑張らないとな!」
俺の彼岸籠はここからだ!




