第4話 ただの領主が1年たっても勇者になれない件
勇者認定されてから大楯を使い始め早1年。俺は今日も仲間と一緒にクエストに出ていた。
「アラン!正面はお願い!先に裏に回ったコボルトを倒すから!」
「分かった。」
すっかりパーティにもなじみ、タメで話せるようになってきた。最初のほうは研究ができないストレスがあったが、魔王との戦いが終わりさえすれば研究三昧だと考えればそんなストレスも感じなくなっていった。
だが、問題がないわけではない。いまだに魔力の制御は少ししかできないし、勇者の種とやらに変化があるわけでもない。大楯の技術だけが成長していた。
今はコボルトの群れの討伐クエスト中、挟み撃ちに合ったので、裏に回ったコボルトをレンゾが食い止め、レナとチョスが仕留めて行っている。正面から来ていた群れは俺だけで十分食い止められる。ただ、俺には敵にとどめを刺す手段がないから食い止めることしかできないのだが。
「よく持ちこたえてくれましたね。行きますよ!{インフェルノ}!」
チョスの魔法だ。さすがというべきかコボルトの群れは一掃された。俺ごと巻き込むよう魔法を使用したが、鎧のおかげでノーダメージだ。
「急だったけどありがとね、アラン。」
「このくらいどうってことない。」
「それにしても今日で1年ですか。」
「あっという間だった。」
「だね。でも、これだけ戦っててなんのスキルも獲得しないし、魔力制御もここまでできないなんてね。」
「不思議。魔力の制御に関しては技術は完璧なのに・・・」
「そうですね。私から見ても技術自体は完璧ですが、魔力量が多すぎるのか、制御のキャパを超えているのでしょうか?」
「魔法に長けたヒナツとチョスにそういってもらえるだけでうれしいよ。」
「でも大楯の技術はすごいよね。」
「そうだな。大楯使いが少ないとはいえすでに国一番の大楯使いを名乗ってもいいほどだろうな。」
「そんな褒めたってなにも出ないぞ。褒められて悪い気はしないけどな。」
今のところ魔王たちに動きはない。所在すらわからないからいまだに鍛錬を積んでおけという国からの通達が来ている。魔王が1人でも確認され次第こちらも動くことになっている。
「早く街に戻って今日はゆっくりしようぜ。まだ昼時だしな。」
「思ったよりも早く終わっちゃったもんね。そうしよっか。」
仲間たちと町に戻り、俺は自室のベッドに横になり、植物に思いを馳せる。こういった暇な時間のこんな時間が俺にとっては至福のひと時だ。
ただ、みんな暇なときは大体ヒナツが俺が引きこもってることを良しとしないのかどこかしらに誘って連れ出してくる。外に出て遊んだりするのも悪くはないが、やっぱり植物のことを考えるのが一番楽しい。
「ほんとに植物馬鹿だね。」
「たまには植物に思いを馳せたって・・・」
そこまで言って俺の脳内に疑問が浮かんだ。俺の仲間にノックをせずに他人の部屋に入るような仲間はいない。それに今の声は部屋の中からの声だ。
「誰だ!?」
「おひさー。私だよー」
「神様?」
「その呼ばれ方はちょっと嫌だけど、そうだよ。神様のリアちゃんだよ。」
「どうしてここに?この世界には干渉しないといっていたはずでは?」
「そうなんだけどね。ちょっと事情が変わったというか、まぁ、私が気まぐれで遊びに来たとでも思っててくれればいいよ。」
「そうなんですか。」
「まぁ、来た理由なんだけど、簡単に言うとちょっと面白いことになってたんだよね。なんか魔王同士が牽制しあってるみたいでさ。向こう10年くらい人類側への干渉しなさそうな勢いなんだよね。それにあなたに関しても。」
「俺?」
「そ。あなたの体ちょっと特殊だったみたいでね。」
そういって俺の胸元、心臓のある位置に触れる。
コンコン
タイミング悪いな。ヒナツだろうが・・・
「アラン、入るよ。」
「ちょっ・・・」
ガチャ
ドアが開かれる。俺の胸元に手を置く少女の姿を目にしているはずだ。
「あちゃ、さすがにちゃんと隠しとくべきだったかな?」
「アラン、その人は?どうやって入ったの?ここ2階だよ?」
なぜか圧を感じる。まぁ、勝手に人を上げたって見られてるよな。
「ごめんね。私が勝手に入ってきちゃったの。私はリア。多分この勇者から聞いてるだろうけど魔王討伐を依頼した張本人。あなたからしたら信仰の対象になってるのかな?」
「リア様?確かに私はリア様を信仰してるけどその名を騙るのは・・・」
「ヒナツ、本当に神様だ。いったん俺の言葉を信じてくれ。」
「アランがそういうなら・・・」
「プリーストちゃんだね。せっかくだしこの子にも聞いてもらおっか。今アランの体に起きてるちょっと不思議なことについて話してて、勇者についてどこまで聞いてるかな?」
「勇者の種が発芽したらスキルを得られるくらい。」
「大体全部話してる感じだね。勇者の種の発芽って人それぞれいろんな条件があるんだけど、アランの場合、それが特殊なんだよね。」
「というと?」
「発芽の条件自体はよくある条件なんだけど、それをアランの体質が邪魔してるって話だね。アランの魔力量が異常に多いのはわかるでしょ?」
「それは、うん。」
「それが問題でね。アランの特殊な体質は魔力が無尽蔵に湧き出るっていうものみたいなんだよね。だからどうやっても魔力の制御なんてできないし、魔法を使う以外に消費、制御する手段は存在してない。でも、アランは魔法適性がないときた。」
「それと何の関係が?」
「それだけならよかったんだけど、それがまずい理由が2つあって。1つはスキルが獲得できないんだよね。スキルって魔力とかかわりがあるんだけど、細かいところは省くね。その魔力が無限にあふれ出続けるせいでスキルが入り込む隙間がないって感じ。」
「なるほど。」
「もう1個の問題のほうが厄介で、勇者の種の発芽に必要な条件がモンスターの魂を100個集めることなんだけど、これは近くで死んだモンスターの魂って勇者の種を持つ人の中に勝手に吸い込まれるの。それを100個集めればいいんだけど、あなたの場合、無尽蔵にあふれ出る魔力が体外に勝手に排出されてるんだけど、それと一緒に魂も流れ出ちゃってるみたいなの。だから一気に100体のモンスターを倒すとかしないと発芽しないってわけ。」
「1度に100体のモンスター・・・」
「ちなみにさっきコボルトの群れを倒してたけど、あの魂ももうとっくに流れ出ちゃってるね。多分倒してから3分もしたら流れ出ちゃうと思うよ。」
「速い。」
「そう。だから種の発芽は大変だね。まぁ、さすがに自力での発芽ができないだろうから教えに来てあげたけど深入りする気はないからね。頑張って自力で種を発芽させて魔王を倒してね。魔王同士のいざこざに関してはこっちから天啓を下ろしとくからね。」
そういってリア様は消えていった。唐突に表れて唐突に消えていくな。
「本当に神様なんだね。」
「こういう人間離れしたものを見せられると実感するよな。」
「だね。あっ!植物園のチケットをもらったんだけど一緒に行かない?」
「今日は部屋でゴロゴロしとこうと思ってたんだけどな。」
「行かないの?」
「行くよ。」
リア様の降臨という突然の一大イベントがあったものの、そんなこと忘れたかのように植物園を満喫し、日が沈み切ったころにみんなの家へと2人並んで帰るのだった。




