第38話 ただの領主が英雄王と決闘した件
魔王サノイとの戦いが終わり、俺が意識を取り戻してから1週間が経過した。俺の魔力も元通りあふれるレベルまで快復した。そして今俺はブレクルス王都にある巨大な闘技場へと足を運んでいた。
「それではこれより、英雄王ブレクルス王と魔王を討伐し我が国を救った勇者アラン殿による決闘を開始します!」
もともとこの国に来たタイミングで行う予定だったブレクルス王との決闘、国民たちからの声が多かったようで俺の快復次第開催ということになったらしく、現在というわけだ。
「ご主人、頑張って!」
「アラン、無茶しすぎないでね。」
「分かってるさ。それじゃ、行ってくる。」
入場するとすでにブレクルス王が完全武装で待ち構えていた。フルプレートを装備するブレクルス王に対して俺は比較的軽い鎧のみだ。神蔦剣のほうが今持っている剣よりも強度も高く、軽いため、何も持っていない。
おそらく装備に対して不満があるのだろう。客席からブーイングの声が聞こえてくる。
「両者に一言ずついただきたいと思います。まずはブレクルス王から。」
「全力を尽くして勝利する。」
「ありがとうございます。ブレクルス王に全力を出すとまで言わしめる勇者アラン殿、お願いします。」
「あぁ。俺も全力で行く。さっきからブーイングが聞こえてくるが、それは俺の装備についてだろう?俺の戦闘スタイルでは現状これが最適だから、この武装できている。武器を持たないのにも理由がある。その目で見ておけ。」
一気に客席が静まり返る。
「ありがとうございました。それでは英雄王対勇者。試合開始!」
「英雄剣術 兜割」
「神盾」
間一髪で防ぐ。そのまま左腕に神盾を装備する。
「さすがだな。だろ?神蔦剣」
左腕に盾、右腕に剣というもともとの大楯使いとしての俺の戦闘スタイルが確立される。だが、単発の剣鬼の罪剣に反応できるほど俺だって強くなったわけではない。だから意地でも8連を引き出す。隙を見せない。8連であればかろうじて防げる程度の隙はできる。
今回の決闘、俺が致命傷であろうと死んでいなければ全快とはいかないが、傷を塞ぐことが出来るくらいの回復薬を作れる薬草を作ってしまい、殺さなければ何でもありとなってしまった。
だからこそ8連だって引き出せるはずだ。
「戦い以外に意識を割いている暇はないぞ!炎!」
「そうだな!植手流彼岸花!真剣流ソードインパクト!」
真剣流の中でも最も基礎の技だ。それに彼岸花を合わせることで回避ができないほどの物量を叩き込む!もちろん彼岸花が俺に当たらないよう注意しながらになる分、とてつもない集中状態だ。
「甘い!」
!?
神蔦を切り落としやがった。炎をまとっているとはいえさすがというべきか。多少切りやすくはなっても人間、何ならアラですら傷一つつけることが出来ない代物なのにな。
だが・・・
キィィン
キィィィィィン
何度やっても神盾にだけは全く傷がつかない。だが、俺の神盾のストックはあと3つだ。時間制限があるのをどうにかしたいが、これは後々検討だな。
「さすが、神の名を冠する盾だな。余の攻撃で傷一つつかぬとはな。」
「これを超えられたら俺は終わりさ。剣はどれだけやられようと作れるが、これはそうもいかない。」
「残り3つだな。」
「なぜわかった?」
「貴様の服に隠し持っているとはいえ魔力が大きすぎる。貴様の魔力で見づらくなっているが、俺にはわかる。」
「そうかよ。正解だ。だが、3枚もあれば十分だ。その間にあんたを倒す!」
と言いつつ、こっちに有効だがない、どころかこっちの攻撃を入れる隙がないのは事実だ。こうなったら・・・
かなりの時間が経った。俺が準備していた最後の神盾が消滅した。
「終わりだな。」
「あぁ。植手流 植牢」
神蔦で敵を覆うことで閉じ込める型。それを自分自身を対象に発動する。
「最後の鎧というわけか。敬意を表して本気を見せてやろう。英雄剣術 剣鬼の罪剣 8連!!」
「神盾全展開!全反撃!!!!」
グサッ
ブレクルス王が攻撃を仕掛けた次の瞬間、ブレクルス王の鎧を神蔦剣が切り裂いた。
鎧は豆腐のように切り刻まれた。かろうじて攻撃自体は回避したブレクルス王だが、剣鬼の罪剣自体は発動したため、反動が来て、膝をつく。
「勝者 勇者アラン!!!!!」
「いったい何をした?」
「時間をかけて神盾を削ってくれている間に神蔦での攻撃を仕掛けてただろ?あれの根元でこっそり魔力を抑えた神盾を作ってたんだよ。だから異常に太い奴ばっかりだっただろ?そして神盾に新たに能力を加えた。」
「それがさっきのか。」
「あぁ。全反撃、神盾に触れた瞬間大量の神蔦剣が飛び出してくる。それもその神蔦剣には擬態能力が付与されていて、体に触れるまで気づくことはない。」
「この数日でスキルをそこまで進化させるとは、見事だ。」
「戦えなかったからスキルと向き合っただけだ。多分まともに戦ったらあんたが勝つよ。」
「そうだといいがな。」
救護班に念のためと運ばれていった。
「勝者のアラン殿にお話を伺いたいと思います。先ほどの試合、いかがでしたか?」
「正直、まともに戦えば俺が負けると思います。ブレクルス王の力はすさまじいものです。だからこそ、スキルを全力で活用し、そのうえでブラフまで仕掛けて勝利したのです。」
ブレクルス王を立てるのを忘れない。会場は皆ブレクルス王を応援していただろうからな。




