第35話 ただの領主が魔王と我慢比べをした件
ガクっ バタっ
2つの音がほぼ同時に聞こえてきた。少し離れた場所で倒れ伏すアラ、そして大きく斬られ膝をつく魔王サノイ。
「グハッ」
サノイが血を吐き出すが、それどころではない。仕留めきれていない以上アラに危険が及ばないように!
ゴゴゴゴゴゴゴ
世界樹を生やす。そして神蔦で引っ張る!激痛が走ってるだろうが死ぬよりかはマシだ!
アラが世界樹に入ったのを確認すると同時に世界樹を消滅させる。
「よくもやってくれたな。」
「思ったよりも速かったな。」
「魔王を舐めているのか?」
「あぁ。お前のような雑魚を気にかけるバカがどこにいる?」
「でかい口を叩いているが我に勝てるとでも?」
「確かに魔力を失おうとあんたはモンスターの召喚による手数がある。だが、いつから俺の手札が全て見えたと錯覚していた?」
俺に残された手札はいくつかある。ただ、有効なのは1枚だけだ。
「その手札を叩き潰すと言っているんだ。ほら、きてみろ。」
「植手流 彼岸籠」
菖蒲籠と彼岸花を合わせた型。発動と同時にサノイの間合いまで接近する!
「背後に気をつけなくていいのか?」
「いいさ。」
その言葉を皮切りに俺とサノイに神蔦による大量の斬撃が降り注ぐ!サノイも魔王だ。すでに魔力が回復し始めているが、そこにさらなる攻撃。わずかに回復した魔力など一瞬で無くなる!
「貴様ぁぁ!」
モンスターを召喚するが、あたりは静かなままだ。それも当然だ。菖蒲籠で囲っている範囲内は内側を攻撃する刃に、範囲外も彼岸花による殲滅が行われている。
だが、この作戦は諸刃の剣だ。俺にも刃が食い込む。
「はっ!人間が俺と耐久力で張り合おうってのか!勝てると思うなぁ!」
確かに魔族はそもそもの皮膚も固く、耐久力は人間とは比にならない。だが・・・
俺の傷はたちどころに癒えていく。賭けだったし、1回きりだがうまくいって良かった!
「なぜ傷が癒える!?」
「あんたの再生能力をとある植物モンスターに学習させ、取り込んだのさ。まぁ、俺が魔改造したモンスターだがな。」
解析草。一見ただの雑草にしか見えない草だが、モンスターだ。自分で動くこともでき、触れている相手が使ったスキル、技術を学習する。学習済みの解析草を取り込めば一時的に学習した技能を使用できる。
「さっきも言った通り俺は魔力が無尽蔵に湧いてくる。致命傷だろうと毎秒再生してみせるさ。さぁ。我慢くらべと行くか!」
神蔦剣による攻撃の密度はあまりにも高く、お互いに攻撃したり脱出できるような状態ではない。手を少しでも前に出せば切り刻まれる。
「こんな・・・こんな・・ところ・・・で・・ほろ・・・ぶ・・・など・・・・」
もう限界のようだな。再生も完全に止まっている。モンスターの召喚も止まった。あとは止めまで行くだけだな。
数分で魔王サノイはその命を終えた。だが、さすがというべきか魔王がそういうものなのかわからないがその体は肉片とはならず、かろうじてではあるが原型をとどめていた。




