第30話 ただの領主が英雄王の本気を見た件
サノイの姿が視認できる距離まで来た。ここまでサノイはこちらに接近してくるだけで何か行動を起こすような様子はない。
「不味いな。物量で押すつもりはないみたいだ。」
「完全に想定外だな。アラの知っているサノイ本人の力というのは偽りのものかもしれないな。」
「いや、ボクの知ってるサノイと雰囲気が違いすぎるよ。多分ボクと最後にあってから何かあったんだと思う。」
「勇者が種を発芽させるんだ。魔王にも種があるのかもな。」
「そう考えるのが自然だな。アラン、どうするつもりだ?」
「まるで俺がこれを想定していたような口ぶりで聞いてくるな。」
「実際そうなのだろう?」
「まぁ、そうだけどさ。俺とブレクルス王を俺のスキルで一気にサノイの近くまで吹き飛ばす。ヒナツは結界での守りを頼む。アラは万が一漏れたモンスターがいたり襲撃があった時にヒナツを守ってくれ。ヒナツは俺たちが世界樹に取り込まれるまでは結界の維持に集中してくれ。」
「うん。気をつけてね。」
「あぁ。アラもいいか?」
「ほんとはボクも戦いたいけど・・・わかったよご主人!」
「聞き分けてくれてありがとな。相手の強さがわからない以上下手なことはしたくないんだ。それじゃ、ブレクルス王、多少手荒だが失礼するぞ。」
ヒナツに目で合図を送り俺とブレクルス王に結界を展開させる。そして神蔦で俺とブレクルス王の背中を思いっきり最高速で叩く!
「「グフッ」」
神蔦での最高速の一撃はヒナツの結界を持ってしても俺たちに多少ダメージが入った。というかめっちゃ痛い。
だがこれで3秒もしないうちにサノイと俺たちが世界樹に取り込まれる範囲に入った!
「なんだこの空間は?」
「うまく行ったみたいだな。一応説明はしといてやる。ここは世界樹の中、それも俺が作り出した特別な世界樹だ。」
「世界樹?あぁ、この世界に伝わるダンジョンだったか?なるほどな。樹である以上お前のスキル対象なのか。だが我と自分自身をこんな狭い空間に閉じ込めてよかったのか?それに国王まで。」
「問題ないさ。」
「そうか。では眷属召喚!」
何も出てこない!世界樹の結界がうまく機能しているんだ。この世界樹は俺がスキルを使えなくなる以上生えてから一瞬で消滅、15分後に同じ場所に生えるよう作ってある。つまり15分以内に倒せなければヒナツやアラに危険が及んでしまう。
「なるほど。アラの入れ知恵か。確かに我は眷属召喚を失ってしまえばそこまで強くはない。アラと最後にあった時点ではアラにすら負けてしまうほどに。だが・・・」
「種を発芽させた、だろ?」
「勇者も同じということか。その通りだ。我は魔王の種を発芽させ数段強くなっている。勇者といえど一般人を連れている人間に負けることなどないのだよ。」
「一般人か。俺のことがそう見えているのなら貴様の命運はここまでだ。」
ブレクルス王は闘気を隠していた。だが俺ですら僅かに漏れ出る闘気からその闘気を隠し通せるほどの技量をうかがえる。それなりの実力者であればこのくらいは見ればわかるものだ。
「なんだと?」
「俺はブレクルス王国 国王ブレクルス。ブレクルス王国で最も強くこの世界で勇者に並ぶ力を持つ者だ。」
「おっさん、調子に乗るのもそこら辺にしときな。恥をかくだけだ。」
ボトッ ポタッ・・ポタッ・・
ブレクルス王の本気はここまでなのか!
一瞬の間にサノイの腕を切り飛ばした。見えない速度で切り飛ばし剣の血を払い鞘に納め元いた位置に戻ってきている。俺はかろうじて追えたがサノイには無理だろう。
「グアァァァァァァァ」
再生は始まっているがそれでも痛いものは痛いのだろう。世界樹に悲鳴が響く。
「これでも俺を一般人と呼ぶか?」
なんだかブレクルス王が楽しそうに見えるのは気のせいだろうか?




