第25話 ただの領主が魔王サノイと遭遇した件
アンデッドの大群、それも最低レベルがDランク冒険者相当という質と量の両方に振り切っているものの、俺とアラの相手にはならない。だが・・・
「ご主人、このままじゃジリ貧だよ!」
アンデッドの大群はとどまるところを知らない。最初のアラの一撃でどれだけの数を倒せたのかがわからないがすでに1万を超えそうな勢いだ。俺のスキルで大半を処理出来てはいるが、それでもそれなりの数が抜けてくる。アラがそれらに対処してくれているがやはり限界はある。どうする?おそらく大半を一気に消滅させるすべはあるがアラに影響が出かねない。
とにかく一旦荒を休ませないとだな。
「アラ、寄れ!」
「うん!」
アラが近くに来ると同時にスキルで神蔦で周囲を囲う。神蔦を突破できるようなモンスターは見受けられなかった。これでいったん安心できるはずだ。
「ありがとご主人。」
「当然のことをしたまでだ。ここまでよく頑張ってくれたな。」
「うん。さすがにちょっときついかも。」
「一旦撤退をするがこの状況だ。もうちょっとだけ頑張ってもらってもいいか?」
「うん。どうすればいい?」
「無理なら別の方法を考えるが挑戦はしてみてくれ。結界魔法を使ってほしい。」
「無理だよ。ひなっちゃんから教えてもらったのはホーリー・バーストだけだし回復魔法は適性がないって言われたよ?」
「結界は神聖魔法の基礎だ。特に自分自身だけを守る結界術は必須といってもいい。ホーリー・バーストができるのならできるはずだ。」
「って言われても・・・」
「俺は魔法が使えないから感覚はわからないが、ヒナツにいろいろと教えてもらったことはある。魔法は想像の世界だ。確固たるイメージがあれば使える。いつも見てきたヒナツの結界、自分自身を守るための結界を強くイメージするんだ。」
結界魔法というのは特別な魔法だ魔法適性がなくとも使用できる人間が存在している。これは他の魔法とは異なる構成をしているからだそう。ただ考え方は一緒で確固たるイメージを持っていれば結界適正があれば発動できる。
「やってみる。ボクだけにかければいいの?」
「あぁ。俺の攻撃に巻き込まれないようにするためだからな。」
「分かった。・・・結界!」
アラがそう唱えると同時にアラを薄く光る膜が包み込む。
「うまくいったみたいだな。」
「できてる?」
「あぁ。上出来だ。」
今度は俺の番だ。アラに魔力を分け与えた要領でアンデッドのいるエリア全域に魔力を放出する。マジックサプライの応用、純粋な高濃度の魔力による攻撃だ。これはアンデッドと魔力を帯びた植物にしか効果がない。この2種は人間と魔力の構成が異なる。ただ魔力濃度の高さが異常なため念のためアラには結界を張ってもらった。
「エナジー・バースト!」
あふれ出るほどの魔力を湧いたそばから外に押し出していく。寂寥の丘全体を飲み込むほどの範囲を覆える勢いで覆えるほどの量を吐き出し続ける。だんだんと周囲で聞こえていたアンデッドたちの立てる音が聞こえなくなってくる。神蔦を維持する魔力すら惜しい。
「アラ、これを解除する。俺を守れ。」
極限まで集中しなければ魔力のバランスが崩れる。余計なことを考えず、アラを信じて魔力を吐き続けろ!まだ寂寥の丘を覆うに全くと言っていい程足りていない!
「ご・・・ん・・・ご・・ゅ・・ん・・・・ご主人!」
「どうした?」
「どうしたじゃないって!あれ見て!」
なんだ?寂寥の丘の様子が・・・?
「魔王サノイの名において命ず。世界の理に反逆せし者よ再びこの世に生を受けるがいい。眷属召喚!」
魔王サノイ!?まさか本当にここにいるとは・・・
「アラ、撤退を急ぐぞ!」
そういいつつ世界樹を生やす。まだアンデッドの大群までは距離がある。だがあれだけの量がいた理由、そして魔王サノイの所在がつかめた。収穫としては十分だ。
「うん!」
アラと共に世界樹に飛び込み、それと同時に世界樹を消滅させる。これでひとまずは安心だ。
「これで安全だと思っただろ?」
「サノイ!?」
なんだこいつ?世界樹の中には確かに俺とアラ以外の気配が存在していない。こいつは実体がない?
「久しいね、アラ。さて勇者よ、まずはご挨拶だ。我は魔王が1人サノイという。といっても本体ではなく幻覚だがね。」
「何の用だ?」
「いや、ただの忠告だとも。今すぐに我への詮索をやめこの国から立ち去るがいい。3日以内に立ち去らないのであれば我の軍を率いてブレクルス王都を襲撃する。貴様の愚かさが故この国の国民をどれだけ死なせることになるであろうな。」
それだけ言い残すとサノイの幻覚は消えた。魔法か何かで映し出していたのか?だが王都への襲撃はシャレにならないな。すぐにでも国王に相談しないとな。
「アラ、すぐに王都まで戻る。俺のスキルの植物たちの移動まで含めて最高速で、だ。」
「うん!ボクもサノイの暴挙を許したくないもん!」




