第23話 ただの領主がソウルレイスと遭遇した件
「逃げずに来たみてぇだな。」
「逃げるわけがないでしょう?あれだけの人数の前で宣言して勇者が逃げるなんてことできませんので。」
「俺たちを前にしてまだそんな口が利けるとはな。まぁいい。英雄王、もう始めていいのか?」
「構わん。」
「それじゃ行くぜ!」
動き出す瞬間、闘技場全体に花を咲かせる。
「なんだ!?体が・・・」
モスタン全員が脱力したように膝から崩れ落ちる。
「誠弱花。私はこの花にそう名付けました。私の力は植物を自在に操ること。もちろんその中には交配して強度を上げたりといったことも含まれています。この花は様々な毒草を組み合わせることで致命的な効果のみを打ち消し触れたものが脱力し力が入らなくなるよう交配を進めました。特定の条件においてその効果が発揮しませんが、私が衰弱していないのはそういうことです。そしてもう1つ。この花に触れている間人は嘘をつけず黙秘ができません。これは衰弱を無効化している私であろうと対象になります。」
「この花を燃やし尽くせば・・・」
おっと、火の魔法で燃やすつもりか?だが・・・
「なんで燃えない!?」
「植物というのは何も草花だけではありません。植物型のモンスターであろうと対象にできます。誠弱花の本体は植物ではなくモンスターであり、炎に強い耐性を持っています。そのため分体として地表に姿を現している花も燃えることはありません。貴族の皆様方、心配なさらずとも地下にモンスターを埋め込んでいるわけではなく、その力だけを私が顕現させております。」
ざわついていた貴族たちの声が少し落ち着いた。モンスターが真下にいるとなると恐ろしいことこの上ないだろうからな。
「くそったれが・・・」
「さぁ、ここからは尋問の時間です。あなたは何者ですか?誠弱花から伝わってくるあなたの皮膚に触れた感覚が妙に冷たいのですが・・・」
「そんなことまでできるのかよ。そうだ、俺は人間ではない。魔族だ。」
それが確認できたのならいい。
「そうか。ならば・・・」
俺はとあるモンスターを召喚する。ここ100年以上姿が確認されておらず絶滅したといわれているモンスター
「そ、そいつは・・・!」
「聖なる樹人、対霊結界を展開しろ。」
聖なる樹人は神聖魔法を扱うことが出来る特別なモンスターだ。その存在自体が珍しく個体数が少ないものの不定期的に観測されていたがここ100年は観測されていないため絶滅したとされている。
「さて、これで安心ですね。あなたが依り代から出たところでこの結界の外に出ることはできませんね?」
「その通りだな。だがお前は大きな間違いを犯した。」
モスタンのパーティーメンバー全員の体からレイスが飛び出してきた!リーダーからはやっぱりソウルレイスか。
「我が眷属たちよ、我に力を・・・」
ソウルレイスがレイスを吸収する。こいつのパーティメンバーから言葉を聞いていなかったのはそういうことか。こいつが全員を操っていたわけだ。
「完全体となった我に人間ごときでは敵わない。」
「そうでしょうか?まぁ、仮にそうだとしてもあなたはここで死にます。私が相手で不満があるのでしたらふさわしい相手に変わりましょうか?」
「ふさわしい相手だぁ?」
「アラ、出番です。」
槍を手に持ったアラが結界内に飛び込んでくる!結界は霊体にしか効果がないからアラは問題なく通り抜けられる。
「ご主人、呼んだー?」
「あぁ。だがちょっと待ってくれ。聖なる樹人神聖武装を施せ。」
槍を向けると神聖魔法が槍に付与された。これで霊体にも問題なく攻撃を当てられるだろう。
「その小娘が俺の相手にふさわしいだと?舐められるにもほどがあるだろ。」
「名乗ってやりな。」
「はーい。ボクはアラ。勇者の従魔であり、この世界に現存する魔王が1人。君と遊んであげる。」
「魔王?貴様のような小娘が?笑わせるな!」
ソウルレイスが剣を構え宙を舞い突撃してくる!
「のろまだね。そんなんじゃ当たらないよー。」
そんな一撃をあっさりと槍でいなしてしまうアラ。
「小手調べをいなしたくらいで調子に乗るな!」
ソウルレイスはだんだん速度を上げるものの、攻撃は命中しない。どれだけ突撃してもいなされてしまう。
「てめぇ、なにもんだ!?」
「だから言ってるじゃん。魔王だって。」
「なんで魔王が勇者の従魔になってやがる!」
「そのほうが面白そうだから?」
「そんな理由で・・・」
「ご主人、もう終わらせていい?」
「構わん。」
「それじゃ一思いにやってあげるね。槍舞・殺戮連打!」
剣舞・殺戮連閃の応用か!さすがアラだな。しかも完璧だ。
「おのれ・・・」
何か言い残そうとしたみたいだがアラの連撃に耐えられずにあっさりと消滅してしまうソウルレイスなのだった。




