第22話 ただの領主が冒険者に絡まれた件
パーティ会場には貴族と思わしき人々と一部冒険者らしき姿も見受けられる。英雄国というだけあって貴族たちも鍛えているようで皆実力者のようだ。
「見ない顔だな?お前が勇者ってやつか?」
「お初にお目にかかります。勇者アランと申します。」
「いけ好かねぇな。それにいい女を2人もつれやがって。」
この会場は貴族が多いこともあって上品さを感じさせる。その中でこいつとその取り巻きだけが冒険者らしい風貌で品性がない。
「こちらは仲間のヒナツ、そしてこちらがアラです。」
「お初にお目にかかります。ヒナツと申します。」
「アラと申します。」
最低限の言葉遣いは教えた。厄介そうな相手が来たときは丁寧に話すように、と言いつけておいてよかったな。
「プリーストに武術家、そして勇者と聞いてたからどんな奴かと思えば大楯使いとはな。拍子抜けもいいところだぜ。」
話しているのは1人だけだがこいつがリーダーか?まぁ、後ろにいる4人もこそこそと話しているし、俺を見て嘲笑しているようだ。
「お気に召さないことがあるのでしたらお話はお聞きしましょう。アラ、ヒナツ、下がって食事をしておきなさい。」
「「はい。」」
「あくまでも女は下がらせる気かよ。」
「彼女たちに不快な思いをしてほしくないものでしてね。これでも勇者になる前はエルミーア王国コリスからアラバルを預かる領主でしたので。」
「元貴族かよ。どおりでいけ好かねぇわけだ。おい、俺と決闘しやがれ。」
「ブレクルス王に認められ王との決闘が決まっている相手に決闘を挑むとはよほど腕に自信がおありなのですね。」
「当然だ。俺は英雄国ブレクルス最強の冒険者パーティ・モスタンのリーダー、カルドだぞ?大楯使いごとき敵じゃねぇよ。」
王はこちらをうかがってはいるが俺の好きなようにしろってことみたいだな。明日からは俺の訓練をって話だったしせっかくの機会だ。試したいこともあるしな。
「素晴らしい肩書をお持ちのようですね。かしこまりました。決闘を受けさせていただきます。ただし、いくつか条件があります。」
「条件だぁ?」
「はい。1つ、決闘ではなく、あなた方全員と私で戦うこと。2つ、ここにいる貴族の方々で見学を望む方と私の仲間の見学を認めること。3つ、スキルの使用に制限をつけないこと、4つ、戦闘範囲を決めその外に影響が出ないよう結界を展開することに同意すること。以上の4つを守っていただけるのでしたら戦いましょう。」
結界に関してはヒナツが操ることが出来る。試したいことは貴族に影響が出ると問題になりかねないからな。
「いいだろう。モスタンを敵に回したことを公開させてやるよ!」
「それではこちらで闘技場の手配を行おう。明日正午、王立騎士団が所有する闘技場にてモスタンと勇者アランの戦闘行為を認める。この場にいる者の中で見学をしたいものがいれば我に申し出よ。」
ブレクルス王がそう宣言するとぞろぞろと手が上がる。おそらく俺の戦いを見たいだけでなくこのモスタンというパーティーがこの国では実力を認められているということだろう。王の招待客にこれだけ無礼な行いをしても許されているだけでも相当寛大だし、実力を物語っているといえるだろう。
「せいぜい勇者として最後のパーティーを楽しむんだな。」
嫌味だが、実際その風格、素振りから実力の高さはうかがえる。ただ少し変な感じというか何かおかしいような気がする。あとで国王に確認するか。
「よかったの?」
「まぁ、負けはしないさ。それに試したいこともあったからな。」
最近毒や特殊な力を持った植物や植物型モンスターについてスキルで交配を繰り返しているのだが、その中で検証してみたいものが完成した。ただその性能が性能だけに検証したり使ったりできる状況が限られるのだが今回はうってつけだ。
「ご主人がそういってるしいいんじゃない?うーん!こっちもおいしいよほらひなっちゃん。」
アラがヒナツを引っ張って行ってしまった。おっと、国王がこっちを見て何か言いたげだな。行ってやるか。
「いかがしましたか?」
「うちの冒険者がすまんな。国最強の称号を与えてしまってからずっとあの調子でな。」
「それまでは違ったのですか?」
「あぁ。どちらかというと強さを求める寡黙な男という様子だったのだがな。仲間もそろって最強の称号によっているのだろう。」
「それがどうかは明日分かります。」
「どういう意味だ?」
「私には彼らの様子がおかしいように感じます。実際おかしいのですが、そういう意味ではなく、どちらかというと魔族などのようなものに近いと思っておりまして。」
「それを明日の決闘で見極めると?」
「いえ。私には植物たちがついていますので。」
「何をするつもりかは知らんがやりすぎでないぞ。あんなのでも一応我が国の最高戦力なのだからな。」
「国王様以外で、ですよね?」
「もちろんだ。俺を倒せるのはきっとお前だけだろうよ。」
そういってニヤッと笑う国王に1人の貴族が近づいてきていたので俺は席を外した。おそらく俺の推測は正しいがその中でも最悪のパターンとまだましなパターンがある。
まず、魔族に支配なり精神操作・誘導をされているパターン。これは植物たちでどうとでも解除ができるから問題ない。次に魔王と手を組んでいるパターン。何かしらで接触して俺を抹消しようと手を組んでいる場合だ。これも面倒ではあるがまだマシだ。
一番厄介なのは肉体を魔族に乗っ取られているパターンだ。魔族というのは生来魔法を得意とし、魔法は魂に根付いた魔力と技術がもとになっている以上どんな肉体に宿ったとしても人間を超えた身体能力と魔法の力を操ることが出来る。通常の魔族というのは肉体を持つため、魂の分離などという技術を持っていない限りあり得ないが、それができる上位魔族もしくはソウルレイスというレイスの特殊個体、魔族へと至ったレイスであれば人間との意思疎通を可能にしたまま肉体を乗っ取ることも可能だろう。
まぁ、そんな上位魔族を魔王が操っているとしてこんな危険なことはさせないか。




