第21話 ただの領主が隣国に到着した件
初日の馬車の護衛以降は特に問題も起こることなくすんなりとブレクルス王都につくことが出来た。馬車の運転手とは名残惜しいが別れ、俺たち3人はブレクルス王の待つ王城に向かった。
「何者だ?」
門兵に止められる。まぁ、当然だろう。
「勇者アランと申します。仲間のヒナツとアラも同行しております。ブレクルス王の招待に預り、お伺いさせていただいた次第でございます。」
「勇者?王のお話ではまだ数日はかかるはずだが・・・勇者の名を騙って何を企んでる!」
そうか、護衛はしなくていいとは言われたけど勝手にモンスター避けだけはしていたせいで予定よりも3日早くついてしまったのがあだになったのか。
「道中モンスターに襲われずトラブルもなかったため早く着いた次第でございます。」
「そんな嘘がまかり通るかよ!勇者とブレクルス王への不敬、万死に値する!」
こういうやつって忠誠心だけは高いけど頭が固いし確認をするという発想がないんだよな。もう1人の門兵は止めるか悩んでるし・・・悩むくらいなら止めろよ。
「そうは言いますが、本当に本人なので・・・何ならあなたの望む方法で確認していただいて構いません。」
これで確認に行ってくれるだろう。
「そうか。それなら俺を倒してみろ。俺はこの城に仕える者の中でも5本の指に入る実力を持っている。仮に本物の勇者だというなら倒せるだろ?」
「それでいいんですか?そこの方、見てないでさっさと上の人を呼んできてください。」
「おいおい、俺の部下に指図してんじゃねぇよ。おい、戻らずに立会人をしろ!」
「は、はいぃ!」
こりゃダメな上司タイプだな。おそらく相当位も高いのだろう。こんな細事で王の信頼を失いかねないということもわからないのか。
「それじゃかかってきな。」
「その舐め腐った面を吹き飛ばしてやるぜ!!」
なるほど。魔法で作った槍か。どうりで武器を持っていなかったわけだ。魔法を扱えるがおそらく武器を作り出す魔法に特化している。その分自身の肉体を魔力で強化し、武器の強度を上げているのだろう。
俺は進化蔦の強化版神蔦で盾を作りそれを腕に巻き付けガードする。
「そんなちゃっちいもんで何ができる!」
変わらず突っ込んでくるが、そりゃぱっと見ただのツタだもんな。
ガキィィィィン
ガタッ
金属が固いものにぶつかる甲高い音が響く。それの直後何か重いものが落ちる鈍い音がした。
「な、な、なんでだ!?なぜ盾を突いた槍が落ちる!?」
「この盾がそれだけ硬いってことだ。俺のスキルは植物を自在に操ることが出来る。それでこんなものだって作れるってだけの話だ。もういいだろ?そこのお前、上の人間を呼んできてくれ。」
「は、はいっ!」
はぁ、やっと呼びに行ったよ。
「な、なぜそれほどの力を持ちながら勇者を騙る・・・」
「だから騙ってないって言ってるだろ?」
「アラン様、うちの兵士がご迷惑をおかけしたようで。」
どうやら騒ぎを聞きつけて呼びに行くまでもなかったみたいだな。
「ターモ様・・・!」
どうやらターモのほうが位が上のようだ。おおよそ兵士団の団長レベルか。
「スイン、あなたにはあとでお話があります。さて、アラン様ご一行、想定よりもお早い到着でしたね。」
「あぁ。すまないな。道中モンスターに襲われないように馬車を守っていたら早く着いてしまった。」
「さすがの実力でございます。国王様がお待ちですので、こちらにどうぞ。」
スインと呼ばれた男は顔を青ざめているが知ったこっちゃないな。
ということでターモに案内されたのは謁見の間ではなくブレクルス王のプライベートルームのようだ。寝室などはまた別になっているようだが公務などとも別れた空間みたいだ。
「アラン、早かったな。さすがというべきか。」
「ブレクルス王、ご無沙汰しております。」
「ここではもっと楽にしてくれ。なんせ俺以外基本的に立ち入りを禁じている。外に音が漏れることも、魔法による盗聴すらも対策しているのだからな。」
「それでこちらに。」
「そういうことだ。どこに内通者がいるか分かったものじゃないからな。それではさっそくだが話を進めよう。わが国では3日後から勇者が滞在すると告知をしていたが今日のうちに今日到着したことを国民に知らせようと思う。いいか?」
「もちろんです。」
「敬語は無しでいい。そのほうが端的に話せるだろ?」
「・・・あぁ。わかった。」
「それでいい。外以外では俺に対しては今後もそれでいいからな。それで話の続きだ。俺とお前の決闘をコロシアムで行う予定は5日後に組んでいる。国民に勇者が我が国にいることとその強さを見せることが目的だ。」
「なるほど。」
「明日からそれまではアランは自分自身の訓練を、騎士団も可能な限り協力する。アラとヒナツは騎士団の訓練を手伝ってもらってもいいか?」
「いいよー」
「私もですか?」
「あぁ。わが国には魔法を使えるものが少なくてな。回復魔法があれば多少無理のある訓練だろうと行える。人はそのくらいのほうが成長できるのだ。」
「分かりました。」
「頼む。そして決闘の翌日からは騎士団を交えた戦闘訓練だ。わが国にある最大の訓練場を使用する。実際に国同士の戦争であろうと想定して実践訓練を行えるほどの広さがある。それを用いてアランと我が国の騎士団との連携を図る。そして魔王の情報が入り次第出撃だ。」
「内容はわかった。だが、対魔王に騎士団を出して問題ないのか?」
「あぁ。魔王は大量のモンスターを指揮できるのだろう?それならばこちらでそれらのモンスターを受け持つ。敵戦力が少ないうちに本体を叩くんだ。」
「確かに合理的だな。具体的な連携はまた訓練の時でいいな。」
「あぁ。そろそろだと思うが・・・」
コンコンコン
誰だ?さっき入室を禁じているといっていたが・・・
「入れ。」
「失礼いたします。」
金髪の美しい長髪をなびかせた好青年が入ってきた。鎧を見るに騎士団か?
「騎士団長ルアミール招集に応じて参じました。」
「あぁ。」
「勇者アラン様とそのご一行、お初にお目にかかります。英雄国ブレクルス騎士団長を務めております、ルアミールと申します。」
「アランだ。こっちがヒナツでこいつがアラだ。」
「そのお方が噂の・・・」
「ルアミール、今日呼び出したのは他でもない勇者との顔合わせと今後の話をするためだ。わざわざこの部屋な理由は、分かるな?」
「心得ております。」
「ならいい。」
「それではアラン様、改めまして。今回の魔王討伐に際してこちらからいくつか戦術を用意させていただきましたので、そちらの提案を聞いていただきたく。」
「もちろんだ。こっちとしても軍との共闘は初めてのことだからな。」
「はい。まず、魔王が既存のモンスターを使役するのみの場合かつ魔王がモンスターを集めていない場合です。その場合、こちらの騎士団、貴族のもとにある騎士団を総動員しまして各所モンスターが多数出没する場所を抑えます。その間に周囲の掃討を担当する我々の一部と共に魔王を倒していただきたく存じます。次に同じ場合でも魔王の周囲に大量のモンスターが集まっている場合、アラン様のスキルで一度敵の陣形を崩していただき、動き出したところをこちらで叩きます。アラン様は後ろに控えていただいて機を見てご自身の判断で動いていただきます。」
「分かった。アラ、魔王サノイはモンスターを召喚できたりするのか?」
「ボクの知る限りでは無理だけど、サノイのことはよく知らないし、ボクがほかの魔王に接触しなくなってから強くなってる可能性だってあるしね。」
「それもそうか・・・」
「そちらについても。魔王がモンスターを召喚できる場合、我々が参戦すると敵も物量に対抗してくる可能性があるため、我々は出陣せずにアラン様とブレクルス王のお二人で出陣していただきます。」
「俺とブレクルス様?」
「あぁ。先に言っておくが、俺はどの作戦においてもお前たちに同行する。何があってもこの世界の生命線である勇者を死なせるわけにはいかん。」
「ということで、ブレクルス王と2人での出陣となります。ヒナツ様とアラ様が出陣しない理由につきましては、ヒナツ様は本人が近接戦闘が得意でないと戦いが成り立たない可能性が高いこと、アラ様はアラ様がいることで魔王サノイがモンスターを大量に召喚するのを避けるためでございます。」
あくまでも強い人間が来るだけだというほうがモンスターの質や戦闘のしやすさを優先するだろうからということか。実にいい作戦だ。が・・・
「いい作戦だとは思うが、1つ修正をさせてくれ。」
「なんでしょうか?ヒナツは常に騎士団のサポートをさせてくれ。今回は最前線の敵の力が未知数だ。召喚できないふりをされる可能性だってある。万が一を考えて自力で逃げ切れない可能性があるヒナツは安全圏にいさせたい。それにそちらとしても回復役が増えるのはいいことだろう?」
「私もそのほうがいいかも。多分今回はアランと一緒にいても足手まといだし。」
ヒナツもわかってくれているようだ。
「かしこまりました。それではそのように修正しておきます。」
・・・・・・・・・・
そんな感じで話は続き、あっという間に夕食、俺たちの歓迎会だということで俺はタキシード、ヒナツとアラはドレスを着せられあくまでも自然体で過ごしてくれていいとだけ言われパーティー会場に放り込まれた。




