第2話 ただの領主が冒険者パーティーに加入した件
「アランよ。天啓に従い魔王を討伐せよ。」
あの神様にあって数日、話はトントン拍子に進み、早くも勇者と国王様との謁見式が執り行われた。こういう式典も初めてというわけではないから冒険者が勇者認定されるよりは俺のような貴族が認定されてよかったのかもしれない。
「国王様の仰せのままに。このアラン、からなずやすべての魔王を討伐して御覧に入れましょう。」
「頼んだぞ。すべての魔王を討伐した暁には貴様の望みをなんでも1つ叶えてやろう。」
「ありがたき幸せ。全力で事に当たらせていただきます。」
こういう式典は苦手だ。だが、勇者として活動する以上これまでよりは減るだろうか?
「それでは勇者アランよ、旅立つがよい。」
国王様のその言葉を受け、謁見の間から退出する。もちろん退出時の一礼も忘れない。不敬を働けば最悪魔王討伐後に死罪だってあり得る。気を付けなければ。この後は国が集めた冒険者との顔合わせだったか。まぁ、案内についていくだけだな。
「初めまして。この度勇者に認定されました、アランと申します。」
「初めまして。私は冒険者パーティー『黒狼』のリーダー、弓使いのレナよ。よろしくね。」
自分に対して敬語を使われないというのもなれないがこっちのほうが気楽でいいな。きゃしゃでいかにも後方支援担当といった感じだが立ち振る舞いからも熟練の冒険者だということを感じられる。まだ若いのにすごいな。
「同じく『黒狼』の戦士レンゾだ。よろしくな!」
こっちは歴戦の戦士って感じだな。ベテランから感じる強さだ。
「ボクはプリーストのヒナツです。同じく『黒狼』の所属です。」
小柄だが、耳としっぽがあるし獣人族の少女か。植物以外には詳しくないがトラのような耳を持つおそらく虎人族だろう。数が少ないと聞いたことがあるな。
「最後に私ですね。私はウィザードのチョスと申します。こちらの3人同様『黒狼』に所属しております。」
丁寧な口調の男だな。ウィザードか。弓使いにプリーストに戦士。前衛に不安が残る構成だな。
「改めまして。私はアランと申します。勇者に認定されたのみで、実戦においての戦闘経験は一切ございません。」
多少は剣術や武術もたしなんでいるが、本職から見たらお遊びみたいなものだろう。神様の言っていた通りスキルを獲得するまでは彼らに頼る形になるのだろうな。
「そうらしいね。一応僕たちは腕利きとして通ってるんだけど、仲間が1人家業を継ぐって言って田舎に帰っちゃったところなんだよね。だからアランにはその子のやってた前衛をお願いしたいかな。」
「やはりそうだったのですね。言い方が悪いかもしれませんがバランスの悪いパーティーだと思っていましたので。」
「そうだよな!まぁ、あいつはもともと家業を継ぐまでってことで内に入ってきたメンバーだからな。こうなることはわかってたし、ちょうど帰ったタイミングでこの話をもらえたしな!」
「本当に運がよかったですよね。」
「そうですね。ですが、話がそれていますし戻しますよ。」
「そうだね。ってことで基本は前衛として頑張ってもらいたいんだけどいいかな?」
「もちろんです。」
少し聞きたいことがあるがそれには少し人が多いな。
「すまない。使用人たちは皆一度席を外してもらえないだろうか?」
「かしこまりました。」
「どうしたの?」
「いや、冒険者や先頭に関しては無知なものでしてね。それをさらしたくないもので。」
「なるほどね。それで、何を聞きたいの?」
「まずはスキルに関してでしょうか。」
「オッケー。まずこの世界には人が操れる力として魔法とスキルの2種類があるんだけど、まず魔法は生まれ持った力が影響してて魔力量は生まれた時から変わらないし、その素質次第で扱える魔法も変わってくるね。これも鍛錬でどうにかなるようなものじゃないかな。」
「それに関しては少しですが私も学があります。私は魔法の適性がありませんでしたが。」
「そうなんだね。で、次に本題のスキルについてだね。スキルは神からの贈り物とされてて、生まれ持つものだったり、力をつけると後天的に得られるものだったり色々あるね。戦闘に特化したものから家事が楽になるようなものまでその効果は様々だね。」
「ありがとうございます。使用人たちをはけさせたのにはもう1つ理由がありまして、信じていただけないかもしれないのですが・・・」
「なんでもいいから言ってみて!」
「それでは。実は昨日、天啓が下りたとされる時間の少し前、私はこの世界の創造神、リア様とお会いしているのです。」
「それで?」
さすがは熟練の冒険者といったところだな。同様すら見せないとは。
「そこで勇者の種を持つ唯一の人間が私であること、それが発芽すれば様々なスキルを得られることなどを教えていただき、私は私の野望のために戦うことを決め、創造神はそれを見て天啓を下されました。」
「成程ね。それが本当の神様だとして、後天的に得られるスキルは最大で3つって言われてるけどそれを超えるなんてことがあるのかな?」
「そうなんですか?」
「そこは足りてなかったね。生まれ持つことができるスキルは最大で1つ。後天的に習得できるスキルは3つって言われてるんだ。私はスキルを4つ持ってるよ。」
「すごいですね。最大数じゃないですか!」
「俺は3つだ。生まれ持ったものがなかったからな。」
「ボクは2つ。その代わりといっては何だけど、回復魔法と治癒魔法、浄化魔法とか神聖魔法は一通り使えるよ。」
「私は1つですが、神聖魔法以外の魔法であれば基礎的なものは使用できます。基礎的なもの以外にもいくつか使用できる魔法はありますが・・・」
「あんたは話長いからそれは今度ね。って感じで強さがスキルにだけ依存するってわけじゃないから神様の話といえど信用しすぎないほうがいいかもね。結局は自分で磨き上げてきた技術に勝るものはないから。」
「そうですね。」
「まずは訓練場でいろんな武器使ってみてアランに合ってるものを探そ!」
「そうだな!俺みたいに大剣を振り回すようなタイプでもないだろうしな!」
声がでかいな。まぁ活力があふれているのはいいことか。
「それじゃ早く行こ。」
これまであんまりしゃべっていなかったが訓練場の話になった瞬間ヒナツが食いついてきたな。何かあるのか?
「そうだね。アランもついてきて。」
外に出ると控えていた使用人たちも引き連れて訓練場へと向かうのだった。
「そういえば今更だけど、一応うちのパーティーに加入って形でいいんだよね?」
「もちろんです。よろしくお願いいたします。」
「そんな硬い口調じゃなくていいよ。敬語の子が現状半数のパーティーだけどみんな仲はいいし、もっと楽でいいから。」
「すみません。普段の癖が抜けず・・・しばらくはこのままだと思います。」
「ゆっくり慣れて行ってくれればいいからね。無理はしないでいいから。」




