第15話 ただの領主が植物型モンスターを使役した件
スキルを使用したガメテのステルス攻撃の応酬が繰り広げられる。そこまで速くないから当たらないことはないが攻撃してからすぐに消えるせいでこっちの反撃の隙も無い。
「どうした勇者!防戦一方じゃないか!」
見た目から戦うの好きそうだし、発言もパワー系なのに能力はトリッキーなんだよな。
「まぁ、そう焦るな。」
こっちにだって仕込みが必要だ。スキルで出す植物は現実にないものの場合、一度能力内で作り出さないといけない。具体的には、雑草と薬草を合わせたものを作ろうとした場合、それらを交配させ、新たな植物として生み出す必要がある。スキル内だけでそれ自体は一瞬でできるのだが、欲しい要素を持った植物を生み出すのに試行回数は必要だ。
戦い始めてからすでに30パターンを試したが欲しい力を持った植物は生まれてこない。何が足りないんだ。
いったん整理しよう。今掛け合わせていたのは現存する植物型のモンスターで最強と言われるヤテベオとあらゆる種族に有効な毒を持っている毒草のヤテベオの触手草だ。伝承上は異世界から渡ってきたものだとされており、人間や中型のモンスターを主食とし、喰った数だけその力を増していく。ヤテベオの触手草はその名の通りヤテベオの触手によく似た植物で、それを構成する細胞の1つ1つにまであらゆる生物に有効な毒素が詰まっている。
ヤテベオの触手草という名前にはもう1つ理由があり、ヤテベオがこれを摂取することで触手が増え、食事をした時と同様その力を増すといわれている。ほかにも強度を増すなどいろいろな植物を掛け合わせているが、メインはこの2つだ。植物として掛け合わせても意味がないのか?いや、ヤテベオの触手草自体が毒素が詰まっていることとヤテベオが摂取することで強化されること以外よくわかっていない植物だ。ヤテベオの一部だということもあり得るのか?
「口だけのようだな!これで終わりだ!」
危ねぇな。とっさに進化蔦で防壁を作ってなかったら死んでたな。
だが、こいつを相手に時間もそう稼げるものではないだろう。面倒だがこの研究課題は持ち帰るとして、いったん一番簡単な方法で倒すとしよう。
「召喚 ヤテベオ」
ほかの魔王に監視されている可能性を考えて、1つのスキルか魔法に見せかける。20体のヤテベオを召喚し、19体に俺の周りを守らせる。そして残りの1体に・・・
「厄介なもんだしやがって・・・だが、これが秘策だというのなら甘すぎるぞ勇者!」
周囲のヤテベオの触手がどんどん切り落とされていくのがわかる。間に合うか・・・
「終わりだぁぁぁ!」
俺の首にオーガロードの剣の刃が触れる直前、その刃と俺の首の間に1本の触手が割って入る。
キィィィィィィィン
「何!?」
ガメテの力はすさまじく、そのうえで周囲のヤテベオたちは簡単に切り刻まれて倒されてしまった。ではなぜ、このヤテベオのツタは切れなかったのか。
「何をした!このレベルは数千人の人間は食ってるだろ!」
「残念。エサは人間じゃないんだ。ヤテベオの触手草。名前くらいは知ってるだろ?」
「ヤテベオを大幅に強化できる草だと・・・どこでそれを!それは人間の立ち入れるような場所に生息していないはず!」
「だからさっき言ったろ?俺は植物を自在に操れるんだ。その場に顕現させるなんて簡単なことなんだよ!やれ!」
ヤテベオがガメテに襲い掛かる。大量のヤテベオの触手草を摂取した結果、ツタの数の上限に達し、それ以降のものはツタの強化にエネルギーが消費された。
そのツタの速度は音速に達する。
「グハッ」
魔王とはいえ、体のつくりはあくまでもオーガだ。どれだけ防御が固かったとしても心臓を音速を超える速さのツタに貫かれれば無事では済まない。
「どうだ?お前が舐めていた勇者の力は?」
「これの・・・どこが・・・勇者だ・・・むしろ・・・魔王だろ・・・」
「もう虫の息みたいだな。」
「こん・・な・・・化け物を・・生み出して・・おいて・・・何をのんきな・・・」
「大丈夫さ。見ろよ。」
この結果は俺ですら誤算だった。ヤテベオが一度に大量のヤテベオの触手草を摂取するとその大半が職種の強化に使われ本来のヤテベオの限界以上の力を引き出せる代わりに摂取後2分でその命が尽きてしまう。
「そこまで・・・計算済み・・だったわけか。」
「いや、完全に誤算だ。まぁ、消滅させることもわけないがな。」
「そうかよ・・・せいぜい・・・ほかの・・・魔王討伐も・・・頑張りやがれ」
そう言い残すと瞼を閉じた。呼吸も心臓の鼓動も止まっているようだ。
「アラン!大丈夫!?」
世界樹を生やした瞬間ヒナツが飛び出してきた。後ろでアラも心配そうにこっちを見ている。
「この通り大丈夫だ。2人とも相手と相性が悪かったからな。急に引っ張ってすまん。」
「ご主人が無事ならいいけど・・・その様子だとガメテは・・・」
「あぁ。倒した。」
「よかったよ。それじゃちょっと待ってもらってもいい?」
「いいが、どうしたんだ?」
ガメテの死体にアラが近づいていく。一応は顔見知りだもんな。弔うのか・・・
「いただきまーす。」
!?ガメテの体を持ち上げたと思ったら溶かすように吸収した!?
「何をしたんだ・・・?」
「ボク蜘蛛だからね。なんでも食べれるし、魔力がこもったものを食べれば強くなれるんだよ。これでちょっとは強くなれたかな?」
「ちょっとグロテスクだったけど、確かに魔力が増えてるね。」
「ヒナツが言うなら本当に強くなれてるんだろうが、なんというか人型のものが溶けるっていうのはなかなかにグロいな。」
「今度から入ってからやるようにするよ。ごめんね。あと、先に言っとくけど、ガメテとボクって魔王たちの中でも一番弱い2人だからね。正直ガメテを吸収したうえでもほかの魔王と1対1で勝てる気しないくらいには実力差あるから。」
「そうか。まだ強くならないとな。吸収に関しては・・・まぁ、仲間が強くなるわけだしいいさ。それじゃ、今からなら夜には町に戻れそうだし、戻るか!」
こうして俺の初の魔王討伐はぱっとしない感じで終わった。




