第1話 ただの領主が神様に勇者認定された件
俺は神様にあったことがある。
庭を散歩していたある日、使用人たち以外いるはずのない庭に明らかに異端な存在を見た。風貌は普通の少女。だが、魔物に関して無知な俺でも内からあふれ出るエネルギー量に背筋が凍った。
「貴様、何者だ!」
周囲に使用人たちはいない。本来はだれか呼ぶべきなのだろうが、そうすべきでないと何かが訴えかけてきているように感じた。
「おっ、うまくいったみたいだね。私のこと見えてるね?」
「見えているとは?通常見えないような言いぶりをするのだな。」
「実際そうだもん。あなたはエルミーア王国コリスからアラバルまでを収める領主様、アランで間違いないかな?」
「この俺を呼び捨てする不敬を考えないのならそうだな。」
「事前に調べてはいたけど、すごい自信家みたいだね。いいことだ。」
「いい加減質問に答えてもらおう。貴様は何者だ!」
「そうだね。名前を聞く質問であるのなら私の名前はリア。聞き覚えはあるでしょ?」
リア、その名はこの世界の創造主の名であるとされており、その名を子に名付けることや騙ること教会によって禁じられている。
「その名を騙るとは、度胸のあるやつだ。」
「本名だからねー。私がここに来た理由はただ一つ、あなたにお願いがあるんだよね。」
「お願い?」
「さっき言った通り、私はリア。この世界を作り出した存在だよ。神様っていうにはちょっと大げさだと思うけど。ここだけじゃなくてほかのすべての世界を管理してるのが私だよ。で、わざわざ自分のいる世界じゃなくてこの世界まで来た理由なんだけど・・・」
こいつは何を言っている?自分のことを神だと思っている異常者なのか?だとしてもなぜ庭まで侵入できているのだ?
「その顔、信じてないでしょ?まぁ、信じないなら信じないでもいいよ。でも、この頼みはあなたにしかできないから話をつづけるね。ちなみに無視するようならこの世界が滅びるだけだからね。」
滅びる?なぜそんなことになる?
「ちょっと最近この世界の気配がおかしいから調査してたんだけど、そしたらびっくり。この世界には存在すらしてなかったはずの魔王が誕生してたんだよね。それも7人も!そこに別の世界から魔王が3人も迷い込んじゃったみたいで全部で魔王が10人になっちゃったの。私が1人で処理することもできるんだけど、そういうの好きじゃないからさ。あなたに頑張って倒してもらいたいの。」
「なぜ俺に?」
なぜだろう。こいつの話を信じていいと感じてしまっている。そして聞き入ってしまっている。本当に・・・
「それはね。あなたに勇者の種が宿ってるから。私の作った世界には必ず常に1人以上、勇者の種を持ってる人が存在するようになってるんだけど、この世界の今の時代にはあなたしかいないみたいでね。だからあなたのもとに来たってわけ。」
「勇者の種?そもそも勇者とは何だ?」
「勇者っていうのは魔王に対抗できる力を持つ人類のこと。あくまでもまだ種だから力をつけないと勇者にはなれないけどあなたが勇者になる以外に魔王を倒す手段はこの世界にはないみたいなんだよね。」
「状況は大まかではあるが理解した。だが、何をすればいいのだ?」
「そうだね。まずは勇者の種を芽吹かせないといけないからとにかく戦闘の経験を積むところからかな?まずは戦闘経験を積んで戦い方を覚える。そうしてれば自然と種は芽吹くだろうからそうすればいろんなスキルとか戦いに特化したものが獲得できるんじゃないかな?」
「分かった。魔王同士が戦争をしたりはしないのか?」
「なんか魔王同士の協定ができてるみたいなんだよね。現状魔王たちが支配できてる領域が人類の活動領域まで及んでないんだけど、その現状の支配領域を10人で分けて、そこから先、自分で獲得した領土はその魔王のものでお互いに干渉してはいけないって感じ。多分人間の領域を全部支配するまでは争わないと思うよ。」
「そうなのか。」
「ってことで、君には勇者になってもらうよ。まぁ、いやならこの話を聞かなかったことにすればいいよ。その時はこの世界が滅びるだけだから。私は今後この世界に干渉はしないし、どうなろうと助けもしない。あとは君の頑張り次第だよ。まぁ、魔王の存在がまだ人類に認知されてないからそれと君がいいというなら君が勇者の種を持つことだけは神父にお告げを出しとくけど・・・」
「俺の野望をこんなところでつぶされるわけにはいかない。やるさ。」
そう。俺の野望をこんなところでつぶされるわけにはいかない!そのために兄弟に押し付けられた領主という地位と向かい合ってきたんだ。
「いいね。まぁ、その野望ってのが調べたうえで、私には理解できないけど」
「他人に理解されるとは思ってないさ。」
俺の野望、それは・・・
「ほんとだよ。まさか植物の研究のためだけにここまで頑張る人がいるとは思わないって。領主にならなくたってできたでしょ?」
「予算がない。」
「まぁ、それもそうだけど・・・」
俺は現実を見て、領主として個人資産の貯蓄を行い、あとを継いでくれる人物が見つかったらその貯蓄を使って植物や植物型モンスターの研究を行いたいのだ!そのためにもこんなところで世界を滅ぼされるわけにはいかない!
「まぁ、その予算も魔王を全員倒せたらもしかしたらどこかの国が負担してくれるかもね。」
「それなら俄然やる気が出てくるものだな。」
「それじゃ神父にはあなたが勇者の種を持つことまで含めて天啓を出しとくよ。それじゃ、私はこれで。あと、この話してた時間の間周囲の時間は止まってたから誰かに見られてたりとか言った心配はしなくていいよー。」
少女はそう告げると目の前から姿を消した。文字通りそこにもともと存在しなかったかのように姿が描き消えた。感じた圧倒的なエネルギーにこの人間にはできない芸当、その瞬間俺は彼女が本当に神だったのだと悟った。




