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見てくるだけの簡単なお仕事  作者: ヒコしろう


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第7話 別れの時

子供のオジサン達は皆元気いっぱいに集落の中を走り回っている。


下克上を果たしたオジサンは、子育てシングルオジサンとして日中は狩りに出かける旦那チームに参加している為に俺を含めてご近所のママさんチームが手分けして子供の面倒を見たりしているが…


『やはり、我が家のオジサンが一番可愛い…』


と思うこの気持ちが【親バカ】というものなのだろうか…カメラさえあれば、転んで泣くオジサンや、自分でご飯を食べれる様になったオジサン…遊びつかれて草むらでお昼寝するオジサン…すべて写真にしてアルバムで部屋を埋め尽くしたい気持ちである。


『いや、自分でも何を血迷ってるんだ…』


とは思うが、


『お腹を痛めて産んだ卵から出てきたオジサンが可愛くない訳がない!』


というモノである。


しかし、成長が早いオジサン種の子供達であるが、1つだけウチの子供に心配事があるのだ…それは【言葉】である。


近所の子供のオジサンは、


「ウガッ」


と言えば、頭に直接、


「お腹、すいたの…」


と覚えたての言葉が聞こえて来る時期だというのに、ウチの子は、


「ウガッ」


という鳴き声のみで、その表情から察するしかないのである。


ママ友のオジサン達は、


「まぁ、遅生まれだから…」


とか、


「大丈夫だよ。強く育ってくれたら…」


などと言ってはくれるが、俺も念話が使えず、


『多分スキルは魂に宿るらしいし…俺が使えないだけだろう…』


と息子に遺伝するなんて考えて居なかった為に、


『あぁ、俺がウガれないから…』


と、自分を責めそうになってしまう。


しかし、ウチの旦那はそんな俺の事も気遣ってくれる優しいオジサンであり、


「たまに喋れない人も居るし、その人達が誰かに劣ってると感じた事は僕は無いかな…キミだって上手く喋れないけど立派に子育てが出来ているじゃないか…よし、この子がもう少し大きくなったら家族で狩りに出掛けて強く逞しい人に育てようよ」


と、眠る我が子を見つめて落ち込んでしまっていた俺の背中を優しく撫でてくれたのだった…


『惚れてまうやろ…』


とまぁそんな事があった翌日、俺は吹っ切れた様に気持ちが楽になり、我が子と遊びながら知らず知らずのうちに鼻唄が漏れていたらしく、


「ふふ、ふん♪」


と楽しげにしている俺の周りには、近所の子供のオジサンも、ママさんオジサンも集まり、


「何それ?」

「綺麗な歌」


などとウガッウガッと騒いでいるのである。


『あぁ、歌で魅了する方のご先祖様の影響か…』


と納得な俺の事を先ほど不意に俺から漏れ出た知らないメロディーに興味を持ったオジサン達が取り囲み、


「教えて」


と言われてしまう。


俺…というか基本「ウガッ」としか言わないこのオジサン種の声帯が発声に向かないのか歌詞はあえて唄わずにハミングのみで幾つかの曲を披露すると、集落はお祭り騒ぎの大合唱となり、狩りに出掛けていた旦那チームにも唄が届いたのか獲物をぶらさげて早めに集落に帰還して、更にお祭り騒ぎが加速したのだった。


その日から集落の中で【歌】というオジサン種の中でもかなり重要視される特技の使い手として一目置かれる存在となった俺は、息子の成長を見守りながらも歌を教える日々を送ったのであるが、やはり息子に念話の能力は発現しなかったのであった。


しかし、息子は成長の早いオジサン種の為か3ヶ月程で一通りの言葉は理解したらしく、今は俺の様に微妙に発声には向かないオジサンの声帯を使い、


「きょウ、えもの…トレタぁ?」


とお話してくれる姿に涙がでそうになってしまう。


そして更に元気にスクスク育った息子は一人前のオジサンになる為に罠などを使った狩りのやり方を旦那から教わるのであったが、実はこの狩りのやり方を学んでいるのは息子だけでは無い…


【家族で狩り】


という名目で狩りに付き添いとして出掛けては息子と同じく、この集落から旅立つ定めである俺も、


『えぇ…そんな基本的な狩りは知ってますが…』


みたいな顔で、ちゃっかり技術を盗み見て一人で生きて行く為に隠れて罠の練習や棍棒の素振りをして鍛えているのである。


たまたま素振りをしている所をママ友のオジサンに見られてしまい、


「下克上?」


みたいな顔をされたが、


「…カラダ…なまルから…」


と伝えると、ママ友のオジサンは、


「解る…子育てって旦那が色々してくれるから鈍るんだよ…自分が旦那になったらあれだけ働けるか心配だな…」


と、オジサン種のメスあるあるらしく、この時期になると繁殖パートナーとして暮らした集落からの旅立ちを前にカラダを鍛えだすオジサンのメス達がチラホラ現れるが、中には希に、


『最後に勝負して巣を乗っ取ってやる!』


という野心家のオジサンのメスも居るらしく、若干集落はピリピリムードであった。


毎回違うパートナーと繁殖をし、巣立つ子供と同時に母親のオジサンも旅立たせる風習は、一族の血を濃くしないためのオジサンの知恵袋的なものであり、ルールとは言わないが旅立つ家族は必ず真逆の方角を目指すのが一般的なのだそうだ。


この旅立ちには弱いオジサンは自然淘汰され強いオジサンの遺伝子を残すという役割もあり、死にたくなければ強くなるしかなく、強くなれば次のチャンスにはオスとして巣を持つオジサンを解らせて卵を生ませる側になり、野良オジサンから巣を持つオジサンに成れるのである。


しかし、俺は強くなって気絶させたオジサンで穴りたいとは死んでも思わないので、今後、武器を掲げて求婚の雄叫びをあげる事は絶対に無く、卵を産んで子育るなど…たとえ今の旦那ぐらい優しいオジサンに出会ったとしても穴るをさせるなんて事は無く、


『本気で観察業務に専念する!』


と誓っている。


息子のオジサンも旦那に似て優しく、そして逞しく育ってくれており、最近ではヒゲなども薄っすら生えてきて、旦那も


「もうすぐ一人前だな…」


なんて喜んではいたが、一人前になると巣立つ運命を知っている為にその笑顔は少し寂しげであったのだ。


そして、卵が生まれるまで1ヶ月…その卵が孵化するのにまた1ヶ月…孵化して狩りの練習を始めるまで半年程…そして今日、全ての毛がボーボーに生え揃い、自分でトドメを刺した牙ネズミの毛皮を身に纏ったウチの可愛いオジサンが巣立つ朝がやってきたのである。


半月前より自分でコツコツ準備していた真新しい石斧と棍棒と革袋や水袋といった必需品の作り方も身に付け、何処に出しても恥ずかしくない立派なオジサンが、


「西に、ムカいます…」


とだけ告げて俺と旦那の元から巣立って行った…


俺は息子の勇ましい背中をしっかりと目に焼き付けたかったのだが、どうしても溢れてしまう涙でそれは叶わなかった…しかし、この何とも言えない満足感は俺の魂に深く焼き付いたのであった。


そして、それは俺の旅立ちの時でもある。


オジサン三人でギュウギュウ状態で眠っていた巣穴から俺も息子と並んで作った自分用の旅立ちセットを担ぎ、旦那に、


「デハ、東に…」


と、俺が告げると、旦那はポロポロと涙を流しながら、


「寂しくなるよ…」


と言ったあとユックリと誰も居ない巣穴へと入って行ったのである。


すると巣穴から、


「ウガァァ~!」


と切ない雄叫びが聞こえたが、何のメッセージも頭には届かず、彼が頭では無く心から悲しんで叫んでいる事が解り、俺はソッとこの集落をあとにしたのであった。


俺は彼と出会い、地球の感覚で一般的には大事なお尻にまつわる何かを散らされたのは事実であるが、それ以上の何か大切なモノを学ばせてくれたのも確かであり、この世界で生きて行く術や、食べ物の採集方法など、あの集落だったからシリ得た物全てに今は感謝している。


今になって言うのもなんだが、登場したのがオジサンばかりな事にだけ目を瞑れば、


『なんて感動する家族の物語だ…』


と思える程に短い様で長く、ひたすらに濃い10ヶ月であったと言える…


『いや、生前のダラダラした生活からしたらどんな生活でも充実してるだろ?…』


と云われたらそれまでであるが、それを差し引いても、オジサンに穴るされて孕ませられる経験なんてしたヤツは探しても地球に居るかどうかであるが…


『別に…知らないままでも…良かった…かも…』


と冷静になった頭で考えると思ってしまう自分も居るのは確かである…


『まぁ、息子が立派なオジサンになったし…』


と何とかプラスマイナスで考えてプラスを目指してみるが、


『立派なオジサンってワードよ…』


と、改めて振り返ると感動すら薄れる奇天烈なオジサンワールドを客観的に見てしまい、


『まぁ、アレも経験…か…』


と深く考えるのを止めた俺であったのだった。



読んでいただき有り難うございます。


頑張って書きますので応援よろしくお願いいたします。


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