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見てくるだけの簡単なお仕事  作者: ヒコしろう


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第5話 美味しく頂かれる…

意識を飛ばした俺が再び目覚めたのは薄暗い場所であった。


『ボクチン神様の部屋ではなさそうだな…』


という雰囲気から、


『あれ?美味しく頂かれて死んだんじゃ…』


と混乱する俺だったが、俺の擦りむいた膝にナニやら手当てをした形跡があり、暗闇に目が慣れたのか辺りの様子が見えてくると毛皮の寝床らしい物などが目に入り、どうやら俺は獣に食べられずに何者かに助けられた様である。


「タスかった…ノカ…」


と俺が呟くとその声が聞こえたのか何者かが、入り口からゴソゴソと入ってきて、


「ウガッ!」


と言ったのである。


その姿は今の俺と同じ様な服装のオジサンで、意識を手放す前に聞いた鳴き声と同じではあるが、その時と違うのは「ウガッ!」という鳴き声と共に頭に直接、


「起きたかい?ハニー…2日も寝ていたから、強く殴り過ぎたかなって心配したよ」


という声が聞こえる。


あまりの情報量の多さに、


『よし、一旦棚上げにするか…』


と、悪い癖で目を反らそうとする俺が居たが、しかし…しかしである。


何故か俺の【食べて解析スキル】のヤツが、


【種族名 オジサン(仮)】


【男性のみのゴブリン種と女性のみのハーピー種のハイブリット種であり単一種族での繁殖が可能となった…】


などと、訳の分からない報告を始めたのである。


『いやいや、ちょっと待って!』


と、食べて解析スキルさんにお願いするが、スキルさんは俺に知りたくもない真実を次から次へと教えてくれ、目の前でニコニコしながら「ウガッウガッ」言っているオジサンの頭に直接響くセリフから、


『あぁ…俺…ちゃんと美味しく頂かれてるわ…コレ…』


と絶望するのであった。


凄く噛み砕いて説明すると、目の前のオジサンと俺は同じ種族であり、オスやメスと言った性別はなくオジサンという完全な性別を持つ希な種族である。


他種族のメスを拐って苗床にして増えるゴブリンと、人間などの男を歌声を使った幻覚などで魅了して子種を頂き卵を産むハーピーの混血種族であり、【誰とでも】の性質と【単一の性別しかいない】という性質を受け継ぎ、


【強いオジサンが弱いオジサンを孕ます】


という何とも凄いパワーワードの繁殖方法で何千年も繁栄している種族なのだそうだ。


ちなみにであるが、このウガッってる時に頭に直接聞こえる声は飛びながらでも風の音に邪魔されずに会話できるというハーピーの固有の念話スキルの様なものらしく、耳を塞ごうが今もニヤニヤしたオジサンの、


「僕たち相性が良いと思うんだ…卵が生まれるの楽しみだね…」


などという甘い囁きが聞こえてきている。


『はい、そうです…このオジサンはオジサン種の流儀にのっとり俺というオジサンを今回の繁殖のパートナーとして勝ち取ったのです…』


と自分でも変な事を言っているのは自覚しているが、食べて解析スキルさんの報告では、


【繁殖のシーズンに武器を掲げて叫ぶのがオジサンの求婚の合図であり、それを聞いたオジサンとの一騎討ちにより気絶させたオジサンが気絶させられたオジサンに…】


という事であり、悔しいが思いっきり身に覚えのある行動の結果、俺はニヤケ顔のオジサンのオスに倒されて彼専用のオジサンのメスとして…


『これじゃあ、【食べて解析スキル】ではなくて【性的に食べられて解析スキル】だよ…』


泣きそうになる俺だったが、彼の言葉が解るという事実から、


『何かしらの遺伝子情報を体内に…』


と知りたくもない事実に辿り着こうとするバカな俺と、


『気絶させて交尾するとは書いてあったが、記憶はないし…その点はファンタジーにしとこう…』


と諌める俺が同居するのだが、


「ハニーは初めてだったのかい?…」


などと言いながら俺の隣に腰を降ろしてウガウガ言っているオッサンの視線が抱いた相手を見る様なソレであり、


『最悪だ…』


と現場の証拠でなく犯人の自供により何の推理の必要も無く真実の扉が自動ドアばりに開かれてしまい、俺というオジサンが隣のオジサンと【穴る】な関係になったのは消せない事実であり、


『まぁ、ハーピーの下半身は鳥さんだから交尾は卵の出てくるお尻だよね…』


と要らぬ納得する事になった俺は、


『お父さん、お母さん御免なさい…貴方の息子は自堕落な生活の罰として異世界で知らないオジサンに穴るの初めてを奪われました…』


と謝罪混じりの涙の報告をしたのであった。



さて、月日は流れて俺は今、涙を流しながら作られ、更なる涙を流しながら生んだ卵を温めながら、


「元気ニ、生まレテねぇ~♪」


と、すっかりママの顔で卵を撫で回しているのである。


借り物であるこの体の持ち主であったオジサンも、


『きっと普通のオジサンとしての幸せを夢見る純真無垢なオジサンだったかも…』


という事で、


『遺伝子だけでも未来に残してあげよう…』


というのは建前であり、最初の穴るにより見事に孕まされた俺は、何度か脱走を企ててはみたものの、鑑定の結果、旦那であるオジサンが【10レベル】であるところ、自分に食べて解析スキルは使えず、鑑定もはじかれていたのは、


『あぁ、自分は鑑定出来ない仕様か…』


と納得していたのに、どうやら未知の生物である【オジサン(仮)】の情報が無かっただけであり、今では自分の手や足を見ながら鑑定しようとすると、


【種族名 オジサン(仮)】

【レベル 7】


という文字が頭に浮かぶので、


『旦那より弱いからなぁ…』


と、脱走を諦めたというのが一番の理由である。


しかし、不思議なもので卵を産んでしまうと、その卵に愛着?…というか母性みたいなモノが湧くもので、今では孵化してもない只の物体なのにも関わらず卵に耳を当てると、


「トックン、トックン」


と自分の心音とは違ったリズムがするだけで笑顔になってしまう自分がいる…


『いや、なんかキモい事を言っている自覚は薄っすら有るよ…でも何だかこの卵の事を考えるとお腹の左側が熱くなる様な感覚がして、【温めないと…】という指令が頭でない体の芯の方から溢れてくる気が…』


という事で、立派にママをしている俺である。


まぁ、一時は苦しんだオジサンのメスとしての生活ではあるが、腹を括ってしまえば良いことばかりで、特にご近所の子育てママであるオジサン…いや、タチかネコで言うとネコの方のオジサンというべきか…とにかく弱くて孕まされたチームのオジサンの組合は皆さん良いオジサン達であり、オジサン社会の様々なルールや、


「いずれは孕ませる方になりたいから…」


という野望に燃え、下克上を恐れて奥様達にレベルを上げさせないように馬車馬の様に働き、朝から狩りに出かけて獲物を倒してくる旦那に隠れて、奥様チームは協力して集落周辺の大型の虫等をこっそり倒してレベルを上げているのである。


それもこれもオジサン種の繁殖において巣は重要な要素であり、巣を持っているオジサンだけが発情した野生のオジサンからの挑戦を受ける権利を持ち、その求愛行動の決闘の結果、巣を持ったオジサンが負けた場合は、勝った野生のオジサンに所有していたその巣と、自らの穴るを差し出し、産卵した子供のオジサンが巣立つと同時に明け渡した巣からも追い出される定めであるのだ。


まぁ、時折子供のオジサンに巣を残して両親のオジサン共に巣を離れる場合もあるが、その時にもパートナーのオジサン達は別々の場所を目指すのがオジサン種の暗黙のルールだそうで、要するに来年の今頃には俺は旦那であるオジサンとのお尻の関係から解放される予定であり、成長が早いらしいこの卵の巣立ちを見届けてから、本格的なこの世界の調査に乗り出す予定なのである。


ちなみにだが、集落の端のママさん組合のオジサンは、


「あの日はちょっと体調が悪かっただけだから…卵が孵化したら決闘を申し込んで、あの威張り散らすクズ旦那を…」


と、これまたオジサン種の流儀として下克上をしかけて巣穴を奪い旦那を追い出す計画らしく、旦那組合のオジサン達が狩りにでかけた隙に棍棒を素振りしたりしているのを見かけると、


『ウチの旦那は…優しい言葉をかけてくれる分…マシ…なのかな?』


などと思ってしまう俺は、完全に妻のオジサンとしての思考になってしまっているのかもしれない…


『しかし、閻魔様…人生経験を積む為に何事にもチャレンジと仰いましたが…気絶する程ブン殴られ、お尻の初めてを無理やり奪われて、妊娠からの出産(卵)って…』


とタメ息混じりに心の中で呟いた俺は、声に出さずに、


『チャレンジの項目がアブノーマルですよぉぉぉ!!』


と、今も日本のあの世で裁判をしているであろう閻魔様に『届け…この思い…』とばかりに叫ぶのであった。



読んでいただき有り難うございます。


よろしけれはブックマークをポチりとして頂けたり〈評価〉や〈感想〉なんかをして頂けると小躍りする程嬉しいです。


頑張って書きますので応援よろしくお願いいたします。


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