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見てくるだけの簡単なお仕事  作者: ヒコしろう


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第10話 誰も知らない秘密

一歩間違えばこの空洞の天井を踏み抜き大怪我…いや即死の可能性もあり、今考えても、


『あの日、落ちなくて良かった…』


とドキドキする俺なのだが、この地下空間も住んでしまえば都であり、節約すれば1ヶ月ぐらいなら平気で暮らせるだけの量の我慢すれば食べられる苦い草もワサッと生えているし、水は豊富であり、なんと土混じりであるが塩の層も採掘出来るので、毛皮をバケツ代わりにして塩の地層を水に溶かして濃い塩水を作り、泥の沈殿した上澄みを焚き火等で水分を飛ばして結晶化する必要があるが、真ん中に窪みの有る石や、穴に落ちてお亡くなりになった動物の頭蓋骨など鍋やオタマ代わりになりそうな良い感じの物も見つけたので、塩もすぐに手に入り苦い草にちょいと塩味を足す事もできる。


採掘仕事で汚れたら地底湖にて水浴びも出来るし、この世界で一年程暮らしたと思うが夜は冷え込むが袖も無い毛皮の服一枚で過ごせる程度でちょっと暑いぐらいであり、焚き火で暖をとる必要もあまりないので薪としての木材も足りそうである。


なので物資としては十分であり、気長に床を踏み抜いた手堀りの横穴までの階段を作れば地上まで行く事も出来るが、今はあえてソレをしない…それは何故か…


『だってまだムラムラするんですもの…』


【出られない】という大前提があり何とか堪えているが、これが玄関ドア程度のハードルであれば、どんな引きこもりもお外へ飛び出しオジサンと刺しつ刺さされつの臭い関係になりたくなる程のムラムラなのである。


『もう、自分の中に潜むゴブリン遺伝子との本能剥き出しの戦い…そう…これは【性戦】なのだ!!』


誰にも見られない地下空間にて、


「ウガぁぁぁ!」


と声をあげ野生の本能のまま借り物の体の息子さんとの対話を楽しみ、賢者な俺が現れると塩を採掘したり生活の為の作業をし、またムラムラすると…という自分を客観的に見て、


『猿かよ…』


と呆れてしまうが、多分ゴブリンさんとハーピーちゃんという性に対して前向きな種族の遺伝子の性か、1日に何度も…【ヒトリエッチマン】という全身タイツのヒーローかと思うぐらいに何かしらのパワーが溜まるとボンバーする生活に、


『親兄弟が居る世界じゃなくて良かった…』


と涙と何かを垂れ流しながら堪え忍ぶ日々を送り…片手間で採掘され精製された大量の塩と引き換えに大事なナニかを手放した感覚のある俺は、


『ムラムラが…だいぶ治まったな…』


と安堵しているのであった。


一番症状が厳しい時は落ちている流木の手頃に丸くなった枝を見て、


「ゴクリ…」


と、無意識にお尻がうずき生唾を飲み込んだ時には目眩がする程に自分を殴ったのだが、何とか自分で地面以外の穴だけは掘らずに踏み止まれた事に賛辞を贈りたい…


『まぁ、己の竿から血が出るほどは色々しましたが…原始人なオジサンだからワイルドでも許して欲しい…』


そんな厳しい時間を耐えヌイた俺は現在…静かな気持ちで竿を握っている。


…いや、勘違いしないで欲しいのだが、比喩表現としての竿ではなくちゃんと釣りが出来る竿である。


まぁ、ムラムラMAXの時のゴブリンの血を引く俺のイチモツであれば魚の一匹や二匹は余裕なのだが…地底湖にて汚れた体を清めている時に、


『深い水場はデカくて怖い生き物が居るって言われたからな…』


と改めて地底湖の奥に敵が潜んでいないかと目をこらすと、澄みきっているが光が余り届かずに、ほの暗い水の中に魚影が見えたのである。


それからは、たんぱく質を撒き散らした分の補給の為に魚を食べようと、【ヒトリエッチマン】後は、竿を【作ってワクワク】状態であり、性教育番組と教育番組のような行動を交互に行った結果として今に至る…という流れなのだ。


『よい子どころか誰にも見せたくない…』


と自分でも思うが、おかげでコツを掴んだここ2日ほどは魚の塩焼きにありつけている。


食べて解析スキルさんにより【洞窟サケもどき(仮)】という名前がついたこの魚は、小川の流れにより、たまたまこの地底湖に閉じ込められて何代も地底湖にて命を繋ぎ、地底湖に順応した魚である。


目は退化し、音や匂いを頼りに洞窟内に住む虫などが誤って水面に落ちたところを補食して生活している為に、運悪く地上から転落して大怪我をして死んだと思われる動物の骨をコスコスと自分の息子をコスコスする合間に石などで擦って不恰好だが釣り針を作り、革袋に入っていた罠用の紐を釣り糸にして、近場に落ちている枝を竿にすると釣竿の完成である。


持ち手がツルンとしていると良からぬ事を考えそうなので、


『こんなのは流石に突っ込んだら怪我するよ…』


と思える歪な形の持ち手の竿で大変扱い難いが、そこら辺にいるコオロギの親分みたいな虫【食べていない為に正式な名称は知らない】をペッと捕まえて針をブッ刺して地底湖へと投げ込めば、重りなどで魚の鼻先にエサを届けなくても虫から微かに漏れ出る体液の香りや針をブッ刺されて踠く水の波紋が彼らを刺激して、あっという間に食らいつくのである。


そうとなれば後は釣り手と魚の命懸けの勝負となり、


『竿は腕の延長、つまり腕で釣るんだ!』


というアニメで知った【釣り好き、東北、麦わら帽子少年】のデェベテラン声優さんの声が脳内で再生され、


『見ててくれ、ゆりっぺ!』


とばかりに洞窟サケもどきを釣り上げ、数日前よりムラムラ症状は軽い為に、釣り好き少年のヒロインであるゆりっぺを思いだしながら軽く…そう、そよ風の様に我が息子を一瞬だけ触ってなだめてやる…


『病気だな…』


とは思うが、それもこれも【発情期】の仕業であり、最盛期にはデェベテラン声優さんの方でも平気でヌケそうだった自分に驚愕したのである。


『なんと恐ろしいゴブリンの性か…』


しかし今ではそんな狂喜じみた性欲も抑制出来る様になり、


『そろそろ地上に戻る階段を作るか…』


と、この誰にも知られていない秘密の地下空間での誰にも言えないタダレにただれ切った淫らな生活を終わりにする事にしたのであるが、俺としては、


『これを毎年か…』


と思うと憂鬱になるが、いつもの様に、


『とりあえず洞窟サケもどきの塩焼きを食ってから考えよう…』


と、問題を一旦棚上げしてみるのであった。


鼻歌まじりに焚き火をおこして、枝に鱗と内臓を取ってから軽く塩をまぶした洞窟サケもどきをブッ刺して遠火でじっくり焼いていく、地底湖は深い部分が塩水なのかその新鮮な身からは懐かしい【海】を感じることが出来る…というか個体によっては若干塩がキツイのも居たので大きさや普段縄張りにしている深さに影響されるのかもしれない…


『今日のは甘いか、塩っぱいか…』


などと楽しみな部分ではあるが、味が安定しないのは不安な要素でもある。


しかし、たんぱく質が足りていない筈の俺はそんな小さい事は気にしない…


『焼けたのをこう持って、こう!』


という具合にかぶり付くだけである。


魚が釣れるとなってからは、日陰苦草君には見向きもしていない為に、


『食べきって絶滅させなくて良かった』


という名目で、


『あんな糞不味い草、二度と食うか!』


という本音を隠しているが、地味に洞窟生活の序盤からずっとあの苦さに文字通り苦しめられたのである。


なので焼きジャケが甘塩だろうが、この際ぼだっこ程に塩っぱかろうが気にしないのだ。


しかし、人とは欲深いもので、


『あと数日は、塩の層から回収した塩分を焚き火で塩にしてから旅立ちの準備に入ろう…絶対に肉を塩漬けにしたいし、肉ならば塩と森に生えてる香草で焼いて食べたいからね…魚はちょっと飽きちゃったよ…』


などと贅沢な事を考えてしまい、


『怠惰だったし、欲深いし…閻魔様…俺って地獄行きで良かったのでは…』


と、ある意味既に地獄のような罰を受けている俺は、


『地獄のような罰と本当の地獄って…どちらが大変なんだろう…』


と、この世界で誰も答えの知らないであろう疑問を抱えながらモリモリと焼き魚を頬張るのであった。



読んでいただき有り難うございます。


頑張って書きますので応援よろしくお願いいたします。


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