表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/26

第19話 夜のパーティ開幕!

一方、その頃――王国の城のメインホールでは、夜のパーティが華やかに開幕していた。


高い天井から吊るされたシャンデリアが黄金の光を放ち、磨き上げられた大理石の床に無数の光の粒を映し出す。壁際の楽団が奏でる弦楽の旋律に合わせ、貴族たちが笑い、踊り、煌びやかな衣装と宝飾が会場を彩っていた。


その片隅に、ペイジンの姿があった。グラスを手にしていたが、その瞳にはどこか心細さが漂っていた。


ペイジン「正直……ひとりで心細かったんですよ、私。七人から一人になっちゃったし……魔法学校でも、友達……いい人ができなかったから……」


彼女の言葉に、隣でニィがそっと視線を向けた。


ニィ「ペイジン……」


ペイジンは笑おうとしたが、その笑みはどこかぎこちなかった。遠い仲間たちの顔が脳裏に浮かぶ。クロス、セノ……あの騒がしくて頼もしい面々が、今はもうこの場にはいない。自分だけが取り残されているような孤独が、胸の奥に広がっていく。


ブロンズが静かに近づいてきた。


ブロンズ「……だが今夜は一人じゃないさ。

ここにいる誰もが、お前が来るのを待っていた」


ペイジンは小さく目を見開き、そしてグラスの中の赤い果実の泡を見つめた。遠くで、シャンデリアの光がまたひときわ強く輝いた。


ニィ「大丈夫!ボクもついてるニィ!!!」


ニィは大きな声でそう言うと、ペイジンの肩を軽く叩いた。まるで重くなった空気を吹き飛ばすように、明るい笑顔を見せる。


ペイジンは一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに小さく笑った。


ペイジン「……ありがとう、ニィ」


グラスの中の赤い果実の泡がしゅわしゅわと弾け、その音がやけに耳に残る。遠くで奏でられる弦楽の調べと貴族たちの笑い声が混じり合い、会場は相変わらず華やかさに包まれているのに、どこかで不思議な緊張が忍び寄っていた。


ブロンズはそんな二人の様子を見て、ゆっくりと頷いた。


ブロンズ「その調子だ。今夜は長い夜になりそうだ……怪盗ジュンがいつ動くか分からんからな」


ペイジンはグラスを握りしめ、遠い扉の影に目を向けた。そこに何かが潜んでいる気がしてならなかった。


そこへ、バタバタと軽い足音が響いた。銀色の髪を揺らしながら、まだ幼い少女が人混みをかき分けるように走ってきた。年の頃は小学生くらいだろうか。


カイン「お姉ちゃん……ジュース組んでー!!」


無邪気な声が会場の喧騒の中に溶けていく。


ペイジン「いいよー!」


ペイジンはにこやかに答え、テーブルの上のグラスに手を伸ばした。氷の入った透明なグラスの中に果実のジュースを注ぎ、軽くかき混ぜる。


グラスの中でしゅわしゅわと泡が弾け、その音がどこか緊張感を和らげた。カインは嬉しそうに目を輝かせ、ペイジンの隣にちょこんと立った。


カイン「わー、ありがとー!」


ニィは小さく笑って肩をすくめた。


ニィ「この会場の中で一番無邪気な声かもしれないニィ……」


だがその時、ペイジンはふと気づいた。窓の外の闇に、まるで星のように一瞬だけ赤い光が瞬いたような気がしたのだ。まさか……怪盗ジュンが――。


ブロンズはしばし黙っていたが、グラスを置きながら低い声で言った。


ブロンズ「そういえばだが……ジュンは、相手に変身することもできるんだ。当然、声もな」


ペイジン「えっ……!?」


その言葉は、会場の華やかな音楽の中でもはっきりと響いた。ペイジンは思わずカインとニィを見やり、周囲の顔を一人ひとり確かめる。


ブロンズ「だから警備は難しい。誰が本物で、誰が偽物か……姿も声も完璧に真似られる。ジュンの潜入に気づいた時には、もう遅いだろう」


ニィ「そんな……つまり、この会場の誰かがもうジュンかもしれないってことニィ……?」


ブロンズは小さくうなずいた。その表情は冗談ではなく、真剣そのものだった。


ペイジンは胸の奥に不安が広がるのを感じた。彼女の仲間の姿をした怪盗が、赤い果実――アルカードジュエリーを狙っている。誰が本物で誰が偽物なのか……その見極めが、この夜のすべてを決めることになる。


ニィ「きっと大丈夫ニィ!ブロンズさんもペイジンさんもいるから!!!」


ニィの明るい声がメインホールの緊張感を一瞬和らげた。彼の言葉は、まるで闇の中に差し込む光のようだった。


ペイジンはそんなニィの言葉に小さく笑みを返した。だが胸の奥の不安は消えない。怪盗ジュンが変身能力を持ち、この会場のどこかに潜んでいるかもしれない――その事実は重くのしかかっていた。


ブロンズは腕を組み、警備兵たちに鋭い視線を送った。


ブロンズ「気を抜くな。奴は必ず来る……

今夜、この城に」


シャンデリアの灯りが揺れ、バイオリンの音色が響く中で、宴は続いている。しかしその華やかさの裏に、誰も知らない静かな戦いが始まろうとしていた。


ペイジンはグラスを片手に、明るい顔でニィを振り返った。


ペイジン「にしてもニィ! 今日絶好調だね!」


ニィは胸を張り、耳まで届きそうな笑みを浮かべた。


ニィ「えへへ! そうでしょ?」


彼の尾を思わせるようなマントが軽く揺れ、その仕草が会場の空気を少し柔らかくする。貴族たちのざわめきや音楽の旋律が続く中で、ニィの無邪気な声がどこか安心感を与えていた。


ブロンズはグラスを傾けながら、二人の様子を静かに見守る。だがその目は常に鋭く、会場の隅々まで視線を走らせていた。怪盗ジュンの影が、どこかでじっと狙いを定めていることを、彼は確信していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ