第14話 スリーピィステッキ
屋根の上でぶつかり合う赤と銀の光。
ジュンの赤い斬撃とブロンズの鋭い剣技が交錯し、瓦が次々と崩れ落ちる。
ペイジン「もうやめてッ!!」
ほうきを急降下させ、ペイジンは屋根の中央に着地した。
スリーピィーステッキを高く掲げると、杖の先端に星型の宝石が光り、夜空に大きな魔法陣が展開される。
ペイジン「――スリーピィスター!!!」
魔法陣から無数のピンク色の光弾が星の雨のように降り注ぎ、屋根一帯を覆った。
光は鋭い赤い斬撃を次々と打ち消し、ジュンの動きもブロンズの攻撃も一瞬だけ止まる。
ジュン「なに……この光……!」
ブロンズ「くっ……視界が……!」
星の雨は斬撃を弾くだけでなく、屋根の亀裂を修復するように淡い光を残していった。
まるで夜空そのものがペイジンの味方をしているかのようだった。
ペイジン「この街をこれ以上傷つけさせない……戦いはここで終わりよ!!」
彼女の声が響き、星の雨がさらに強く輝きを増していく。
ニィ「ペイジンが本気ニィ……この技で二人とも止まるはずニィ!」
だが、光の中心でジュンの瞳が再び赤く光り、狼の影が一層濃くなるのが見えた。
ジュン「……終わり? いいえ、これは――
始まりよ……!!!!!」
赤いオーラが星の雨を押し返すように広がり、屋根の上の空気が一気に張り詰めた。
星の雨が降り注ぐ屋根の上。
ジュンの赤いオーラが広がり、夜空が不気味な光で満ちる中――
ブロンズは静かに剣を収め、鋭い眼差しでペイジンを見据えた。
ブロンズ「……甘いな、魔法少女」
次の瞬間、彼女の姿が一瞬で消えた。
ペイジン「――えっ!?」
見えたのは閃光のような動き。
ブロンズは一気に間合いを詰め、鋭い回し蹴りをペイジンの腹部へ叩き込んだ。
ガッッッ!!
ペイジン「ぐはっ……!!!」
衝撃が全身を走り、ペイジンの身体がほうきごと吹き飛ばされる。
屋根の端に叩きつけられ、瓦が粉々に砕け散った。
ニィ「ペイジン!!!」
ペイジンは必死にスリーピィーステッキを杖代わりに立ち上がろうとするが、足がふらつく。
ペイジン「な……に、この力……」
ブロンズは構えもせず、ただ静かに歩み寄ってくる。
ブロンズ「魔法だけでこの夜を制せると思うな。現実はもっと冷たいぞ、ペイジン」
彼女の蹴りには一切の迷いがなく、戦士としての研ぎ澄まされた技と殺気があった。
ペイジン「まだ……終わらない……!」
それでもペイジンの瞳は消えておらず、杖に再び光が集まり始める。
ジュンも赤いオーラをまとったまま、再び屋根の上に立ち、三者の戦いはさらに激しさを増していった。
ブロンズの蹴りがペイジンを吹き飛ばし、屋根の上に火花が散った。
その光景を見ても、ジュンの赤い瞳は微動だにしなかった。
ジュン「ふーん……王国の騎士も大したことないわね」
その声は静かで、しかし刃のように冷たい挑発を含んでいた。
ブロンズは振り返り、弓を再び構える。
ブロンズ「言ってくれるな、怪盗風情が……!」
ジュンは微笑み、月明かりを背に赤いオーラを纏う。
ジュン「騎士の名を背負っているなら、私を止めてみなさいよ。もっとも……できるならだけど」
ブロンズの眉がわずかに動き、怒気が漂う。
ブロンズ「いいだろう……次は手加減しない」
ペイジンは体を起こし、二人の間に走る緊張を見つめていた。
ペイジン「待って……!二人とも、このままじゃ――」
だが、赤と銀の光が再び激突し、屋根が爆発するように砕け散った。
三者の戦いは、止まるどころかさらに加速していった。
赤いオーラを纏ったジュンは、屋根の端で立ち止まった。
彼女の瞳が淡く光り、口元にはかすかな笑みが浮かんでいる。
ジュン「……今日はこの辺にしときましょう」
マントが月明かりを受けてひるがえり、ジュンの姿が夜の闇へと溶けていく。
追おうとしたペイジンだったが、その動きは一瞬で見失っていた。
ペイジン「待って……ジュン……!」
だが返事はなく、ただ夜風だけが彼女の声を攫っていった。
一方でブロンズも、弓を背にかけながら別の方向へと歩き出す。
ブロンズ「次に会うときは……決着をつける」
その背中は騎士らしく真っすぐで、しかし言葉には複雑な色が混じっていた。
ペイジン「ブロンズ……ジュン……二人とも、いったい何を……」
残されたのはペイジンとニィだけ。
壊れた屋根の上で、夜空の月が静かに輝いていた。
ニィ「ペイジン……あの二人、ただの敵じゃないニィな」
ペイジンはスリーピィーステッキを握りしめ、遠くの夜空を見上げた。
ペイジン「……絶対に、真実を確かめなきゃ」
風が彼女のマントを揺らし、夜は次の物語の幕を静かに開こうとしていた。




