第13話 闇夜の怪盗
ブロンズは弓を構えたまま、ペイジンを鋭く見据えた。
月明かりに照らされるその瞳は、氷のように冷たかった。
ブロンズ「魔法少女ペイジン……お前は――大罪人と共に仲間であったようだな」
ペイジン「な……なにを言ってるの……!?」
ブロンズは矢を下ろし、わずかに視線をそらした。
ブロンズ「……まぁ、ここでは伏せておく。だが我々は忘れてはいないぞ。
お前の存在が何を意味するのかをな」
ペイジン「なんでそれが……!?」
彼女の声が震えた。
心の奥底に、まだ触れられていない記憶の断片が微かに疼く。
ニィ「ペイジン……まさか、心当たりがあるのかニィ!?」
ペイジン「そんなはず……ない……私が……大罪人と……?」
ブロンズの言葉は告発でもなく、嘲りでもない。
ただ、過去を知る者だけが持つ冷たい確信が込められていた。
ブロンズ「だからこそ、貴様を放置はできん。ここで決着を――」
彼女の言葉を遮るように、遠くで雷鳴が響いた。
次の瞬間、怪盗ジュンが屋根の上に再び姿を現す。
ジュン「へぇ……面白くなってきたわね」
ブロンズ、ペイジン、ジュン。
三者の視線が交錯し、夜の空気が一気に張り詰めた。
ブロンズは弓を下ろし、ジュンを真っすぐに見据えた。
ブロンズ「もちろんお前もだ、ジュン。お前は詳しいことが分からない……だから尋問させてもらう……!」
だが次の瞬間――
ジュンの瞳が赤く光り、細長く鋭い猫の目へと変わった。
その背後に狼のような巨大な影が浮かび上がり、赤いオーラが一気に噴き上がる。
ブロンズ「……これが……闇夜の怪盗というべきか……!」
ペイジン「……綺麗……!」
ジュンは月明かりを背に立ち、マントをひるがえす。
ジュン「美しさと華麗さと勇気が私の全て――
そして、夜も!!!」
その言葉と同時に、彼女の指先から赤い斬撃が放たれた。
狼の咆哮のような衝撃波が屋根を砕き、一直線にブロンズへと迫る。
ブロンズ「くっ……!!」
彼女は弓を盾のように構え、瞬時に魔力の障壁を展開。
赤い斬撃が防御壁に激突し、閃光と爆音が夜の街を照らし出した。
衝撃で瓦が飛び散り、屋根の端が崩れ落ちる。
赤いオーラを纏ったジュンは、その光景を涼しげな微笑みで見下ろしていた。
ジュン「さぁ、追撃の時間よ……!」
ペイジン「ジュン……あれが本気の力……!?」
ブロンズ「……確かに尋問どころじゃないな。力づくで止めるしか……!」
夜空の屋根の上、三者の戦いが本格的に始まろうとしていた。
夜の街の屋根の上。
赤い斬撃が再びジュンの手から放たれ、空気が火花のように裂ける。
ジュン「終わりよ、ブロンズ!!」
ブロンズは弓を捨て、瞬時に短剣を抜き、斬撃を受け流す。
赤と銀の閃光が交錯し、屋根瓦が雨のように飛び散った。
ブロンズ「……この力……尋問どころじゃないな。お前は本当に人間なのか……!」
ジュンは狼の影を背負い、月光を浴びて一段と妖しく輝いた。
ジュン「人かどうかは関係ないわ。私が美しく、そして無敵であることが全てよ!!」
斬撃が連続で放たれ、ブロンズは次第に押し込まれていく。
そのすぐ横で、ほうきに乗ったペイジンが必死に体勢を整えた。
ペイジン「二人ともやめなさい!このままじゃ街が――!」
しかし叫びは届かず、赤い斬撃が彼女のすぐ横を掠め、屋根を粉砕する。
ニィ「ペイジン!離れろニィ!!ここ危険すぎるニィ!!」
ブロンズは一瞬だけペイジンを見た。
ブロンズ「魔法少女……ここから下がれ!!
これはお前の戦いじゃない!!」
ペイジン「いいえ……これはもう私の戦いよ!」
彼女はスリーピィーステッキを構え、ピンクの光が夜空を照らした。
その瞬間、三者の魔力がぶつかり合い、屋根の上に嵐のような衝撃波が広がっていった。




