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第9話 瞳も覚めてしまう夜

ほうきはゆっくりと窓から飛び出し、夜風を切った。ペイジンのマントが月光を受けてひらりと舞い、ニィはその後ろでしっかりとしがみついている。


ペイジン「……やっぱりこの街、ただの悪夢じゃない。闇の核の力が広がってる」


夜空の下、街の明かりが川のようにきらめいていた。

昼間は人々の生活で満ちていた街が、今はどこか冷たく沈んでいる。


ニィ「ブロンズ姉さんも気になるニィ。次会ったら敵か味方かハッキリさせないとニィ……」


ペイジン「そうね……それに“怪盗ジュン”もまだ動いてる気配がするし」


ほうきがビルの屋上すれすれに飛び、二人の影がガラス窓に一瞬だけ映る。

月明かりを背にして飛ぶペイジンの姿は、まるで絵本の一場面のようだった。


ニィ「それにしても……さっきの子、笑って寝てたニィ」


ペイジン「ふふ……悪夢がもう来ないように、

眠り粉を少し多めにしておいたの。きっと朝までぐっすりよ」


風が頬を撫で、遠くで雷鳴が小さく鳴った。

街の外れに黒い雲が集まり始めている。


ペイジン「……嫌な予感がする。行きましょ、ニィ。今夜はまだ終わらないよ?」

ニィ「了解ニィ。次はどこに行くニィ?」


ペイジンは遠くのビルの屋上を見据えた。

そこに、一瞬だけ誰かの影が横切った気がした。


ペイジン「……あれは……まさか……」

ニィ「怪盗ジュン……ニィ?」

ペイジン「行くわよ、ニィ。作戦、続行よ!」


ほうきは一段と速度を増し、夜の闇を切り裂いていった。


夜空を飛ぶほうきの上。

ペイジンは風を切りながらふと思い出したように口を開いた。


ペイジン「そういえばさ……悪夢を取り除いたら、夢の中にある悪夢の化身が宝物に変換されて、現実世界に飛び出て貰えるって……朝、ニィから聞いたんだけど」


彼女はちらりと後ろを振り返る。

夜風に毛をなびかせながら、黒猫はあくびを一つ。


ニィ「あー……確かにそうだニャンね〜?」

ペイジン「出なかったよ?宝物なんて一つも」


ニィ「う〜ん……もしかして条件があるのかもしれないニィ。悪夢が強すぎたとか、浄化が足りなかったとか……あるいは...誰かが既に盗んだとかーー」


ペイジン「えぇ……なんか肩透かし感すごいんだけど……。せめて宝石くらい落としていけばいいのに」


ニィ「夢の中のルールは現実とは違うニィ。昔はちゃんと宝物が出てたはずニィけど……今は闇の核が絡んでるからねぇ……」


ペイジン「じゃあ……闇の核を完全に浄化しないと、宝物は現れないってこと?」


ニィ「かもしれないニィ。どっちにしろ、面倒なことになってきてるニィ……」


ペイジンは深く息を吐き、夜の街を見下ろした。

ビルの明かりが点々と続き、遠くには黒い雲が広がっている。


ペイジン「……面倒ならまとめて浄化すればいいだけよ。ね、ニィ」

ニィ「それができれば苦労しないニィ……でも、やるんだニィ?」


ペイジンは口元に小さく笑みを浮かべ、ほうきを加速させた。

夜風が強くなり、街のネオンが一気に流れ去る。


夜の屋根の上。

月明かりの下に、ひとりの影が立っていた。

マントを翻し、白い仮面の下から涼やかな声が響く。


ジュン「あら?ごきげんよう……」

ペイジン「……ジュン……!」


ペイジンはほうきを止め、屋根の上に降り立った。

風がふたりの間を通り抜ける。黒猫ニィはペイジンの肩の上で警戒を強めていた。


ジュン「今日も頂いたわ……宝をね。

さっきの女の子からーー」


彼女の手には、悪夢の中で本来なら浄化されたはずの“宝物”が、淡い光を放って握られていた。


ペイジン「それを……どうする気!?」


ジュンは答えず、口元だけで微笑んだ。

月光がその瞳に反射し、神秘的な輝きを宿す。


ジュン「悪夢を浄化するだけで満足?……ならあなたは優しいのね、ペイジン」


ペイジン「言ってる意味がわからないわ……」


ジュン「この宝はね……夢と現実の境を越える“鍵”になるの。

悪夢が残した欠片……それは力にも、災いにもなる。使い方次第でね」


ペイジン「鍵……?それをあなたはどうするつもりなの!?」


ジュンは一歩、屋根の端へと歩いた。

マントが風に揺れ、影が月光に伸びていく。


ジュン「答えはまだあげないわ。でも――この街の夜はこれからもっと騒がしくなる。

あなたが思っている以上に、ね」


次の瞬間、ジュンの姿は屋根の上からふっと消えた。


ペイジン「……待ちなさい、ジュン!!」

夜風だけが返事の代わりに吹き抜けた。


ジュンの影が消えた夜空に、突如として別の声が響いた。

それは怯えた少女の悲鳴。どこか遠くからだが、確かに届いてくる。


「……たすけて……誰か……」


同時に、街の北の方角に黒い光柱が立ち上った。

まるで夜の空を突き抜けるような、闇の光だった。


ニィ「この特徴の悪夢……まだ宝物が夢の中に埋まってるニィ!!」


ペイジンは眉を寄せ、その光の方向を見据える。

宝物が現実に出ないままなら、あの少女はずっと悪夢に囚われ続ける――。


ペイジン「……ほうきですぐに行こう!!!」


彼女はほうきを呼び寄せ、足をかけるや否や一気に夜空へ飛び出した。

ニィもすぐに飛び乗り、尻尾を高く掲げる。


夜の街を見下ろしながら、ビルの屋根と街灯の明かりが流れ去っていく。

その先に待つのは、悪夢の核か、それとも新たな敵か。


ペイジン「今度こそ――宝物を解放するッ!」

風を切り裂き、ほうきは闇の光柱へ一直線に向かっていった。

86伝説のみんなが読む

ここまでのあらすじの感想


86伝説エーペックス

小説家になろうで公開中!!!


夜。峠の休憩所”ヤマブキモーターズ”にて。

黒いEVO9MRのボンネットに腰をかけた黒川海斗が、一冊の小冊子を読んでいた。

隣では青いWRXのドアにもたれかかる山吹花が、ストロー付きの缶コーヒーを飲んでいる。


黒川「……おい花。これ読んだか?

魔法少女ペイジンの話。」


花「読んだよ。いやもうさ、最初のブロンズってポニテの女騎士がいきなり殴ってくるとこで腹抱えて笑ったんだけど」


黒川「なぁ?普通、初対面でオラァァァ!!はないだろ。あの魔法少女、よく生きてたな」


花「しかも昼になったらゲームセンターで86伝説コラボやってんのよ?あれ、うちらの走りがアーケードにされてるの、めっちゃシュールじゃない?」


黒川「ペイジンがハンドル握って“魔法少女だから優雅に”じゃなくて“オラァァァ!!”だからな。うちの相川が見たら泣くぞ」


花「しかもジュンって怪盗も出てきて、宝物とか闇の核とか出てきて一気にシリアス……と思ったら料理で油はねて悶絶してるし」


黒川「おまけにブロンズが再登場して“次会ったら覚悟しろ”って去っていくしな。展開カオスすぎるだろ」


花「いやでも……ペイジン、悪夢に囚われた子をちゃんと助けてるのは偉いと思うよ。眠り粉のシーンはちょっとジーンとしたし」


黒川「わかる。あの子、根は真面目なんだろうな。ただ……騒がしすぎるだけで」


花「騒がしいのはニィもだよ。あの猫、ツッコミとメタ発言のプロだし」


黒川「結論。ブロンズとジュンとペイジン、あの三人揃ったら絶対まともに話進まねぇ」


花「次どうなるんだろうね。闇の核バトルか三つ巴か……。でもペイジンなら“オラァァァ!!”って解決しそうで怖い」


黒川「いやマジでありそうだから困る」

二人は顔を見合わせ、同時に吹き出した。


黒川「にしても……こんなの好きだなんて、

バブーおかあちゃー」

花「それやめろやああああああ!!!」


花のツッコミが峠に響き渡る。

自販機の明かりの下、缶コーヒー片手に本気で怒鳴る花と、肩を揺らして笑う黒川。


花「誰がバブーやねん!!

魔法少女は真面目に楽しんでんのにぃぃ!!」


黒川「いやぁ、ペイジンの“オラァァァ!!”は

名シーンだっただろ。あれはバブーおかあちゃ

案件だわー...」


花「次言ったらマジで雷落とすからな!!?」

黒川「こわ〜。でも続きは気になるだろ?」


花「……まぁな。ジュンもブロンズも動いてるし、宝物も闇の核もまだ謎だし……」


黒川「ほらな。だから――」

花&黒川「続きをお楽しみください!!!」


夜の峠に、二人の声が仲良く重なった。

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