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TS爺、百合エロゲ―の世界のダンジョンに挑む  作者: 蒼井茜


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これから曇れ

 それからの学生生活の大半は闘技場で過ごす事になった。

 およそ3年、蓮野や静江に呆れられながらも着実に強くなっているという実感を得ながら、闘技場では常連のおっちゃんからジュースを貰うくらいの仲になったりした。


 そして、ついにゲームが始まる。


「初めまして、私は日傘アキラだよ!」


 隣の席で元気に挨拶をしてきた初対面女子、これが主人公である。

 気さくで明るく、そして元気で強い。

 このゲームにおいては貧の部類に入る胸部装甲の持ち主だが、ファンからは挙って美であると言われているそれは目の前で存在感をアピールしている。

 つまり座っている私の前で仁王立ちして右手を差し出しているのだ。

 一周目、つまり実力が足りない状態で命というキャラにアピールをしたとしても反応は無い。

 無視される事になるのだが私は前世の記憶らしきものも持っている。

 なので社交的なのだ、比較的。


「よろしく、月神命」


 握手はせずに挨拶だけ返しておく。

 この後起こるであろう事件に備えて、というよりは早めにルートから外れて貰おうという算段である。

 端的に言うなら彼女は性的な意味で食われる、今日、放課後蓮野に。

 私はそれを知っていて放置するのだ。

 その罪悪感がないわけではないのだが……世は弱肉強食、今日の昼は焼肉定食と決まっているのだ。

 だからなんだ、その、頑張れ!

 百合の花を咲かせて、私は彼女と距離を置く。

 それが一番傷が浅く済む方法なのだ。


「月神ってあの月神? 確か担任の先生も……」


「あれは姉、義理ではあるけれど。私は叔父夫婦に引き取られた養子」


「あ、ごめん……」


「大したことじゃない」


 ある程度話をしつつ、それでいてどこかそっけない。

 そんな雰囲気を演出する。

 というより他の方法を知らない。

 前世らしきもの含めて、貴女の姉に取って食われました! なんて状況は経験が無いので対処法がわからないというのも大きいけど……それ以上にこの世界独自のルールが細かすぎて面倒くさい。


「あれ、でも叔父夫婦ってことは……」


「月神の血はひいてるはず。検査結果とか知らないから断言できないけど」


「はー、上流階級は凄いんだねぇ」


「お貴族様にでも見えているかもしれないけど、本質は一般人と変わらない。私の日課はダンジョンアタックだから」


「え? お嬢様がダンジョン?」


「神の名を持つ系譜は強くあれというのが、形は違えどどこも同じ事言ってくる。私は自分の目的のために強くなりたかったから丁度良かった。闘技場の小さな彗星とは私の事」


 通ってたら二つ名ついたんよ。

 小さい水星、誰のどこがどう小さいのか具体的にと締め上げようか迷って、面倒だったからやめたのだ。


「聞いたこと有るような無いような……」


「闘技場の動画を見れば大体どこかで出てる」


「有名人だ!」


「それほどでもある」


 実際闘技場周りじゃ有名だからなぁ。

 ほぼ毎日通ってたし、たまに一カ月くらい別のダンジョン探索してから闘技場で腕試ししたりとかが日常だったから。

 おかげで闘技場から得られるスキル沢山手に入れて、ほとんど忍術スキルに吸収された。

 そのせいか最近すこぶる体の調子がいい。


「あ、闘技場と言えばうちの近くにも土俵って言われてるダンジョンがあったなあ」


「あった?」


「うん、私が子供のころ遊びに行って、出てきたクマと相撲とって勝ったら消えちゃった」


 ダンジョンが消えるのは、まぁありえない話じゃない。

 だがクマと相撲する子供というのは……金太郎かな?

 いや、それはどうでもいいけど。


「何かスキルは得られた?」


「うん、阿頼耶識っていう」


 なるほど、そういう経緯か……主人公の背景とかゲームじゃ語られなかったからな。

 そういう経緯で阿頼耶識という協力無比なスキルを得て、こうして特待生という立場についたと。

 ……探せばその手のダンジョンも見つけられるかもしれないな。

 今度蓮野か上下兄に頼んでみよう。


「あ、先生来たよ!」


 来たか、百合ゲー諸悪の根源にして我が姉蓮野、そしてこのクラスの担任教師が。

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