闘技場
ボスは瞬殺した。
というか蓮野が憂さ晴らしと言わんばかりに瞬殺した。
私の出番はなかった。
いや、ここのボス普通に弱いんよ。
ヒロインの悲鳴を集めるためだけのダンジョンだから、雑魚は出てこないしボスは弱い。
そして経験値もアイテムも、得られるスキルもしょっぱいのでヒロインの悲鳴をコンプしたらみんな立ち寄らなくなる。
マジで面倒くさいスロットをするだけなので、ただニヤニヤするためだけのダンジョンなのだ。
「あー! 疲れた!」
「おつかれ。悲鳴上げると……ていうかでかい声出すと入口に戻されるし、蓄えがないと死ぬ。得られるスキルも恐怖耐性、そんなもんだから封鎖してもいいと思うぞ」
「そうね……正直、危ないだけのダンジョンね……キレそう」
キレてたよね、というのは言わぬが花。
本気でボスぶち殺してたもん。
でかい洋風の人形をグーパンで砕いてた。
雄たけびあげながらだったので、私の装備も全部無意味だ……せっかくのチャンスだったのに、蓮野に全部持っていかれてしまった。
「あ、じゃあ次のダンジョン行くか?」
「やだ」
私の提案を蓮野が一蹴する。
なんだよ、まだ楽しいダンジョンはあるのに……。
「言っておくけど、普通1日で何個もダンジョン潜らないからね?」
「それは知ってる」
ゲームではターン制で、1日1か所しかダンジョンに潜れない仕様だった。
逆にダンジョンにいる間は時間経過が無いので潜り続ける事ができるが、現実になるとそうはいかない。
以前一カ月潜ったようにダンジョンの内外は普通に時間が経過する。
そういう「あたりまえ」を大切にしないと今後命取りになるんじゃねえかな……。
「しかしこれじゃ力試しができないな……」
「じゃああれは? 闘技場」
「闘技場? ……あぁ、あのダンジョン」
「そうそう」
「1日何か所も入るのは非常識じゃなかったか?」
私の言葉に蓮野が顔を逸らす。
ただ事ここに至ってはまぁ、問題ない。
闘技場というのは特殊なダンジョンで、ボクシングのリングみたいなフィールドがビルの屋上にある。
ここでは対戦者に合わせた強さのモンスターが出現し、5体倒せばクリア扱いでランダムなスキルが得られる。
別名スキルガチャと呼ばれたそれは、最強の主人公を目指すうえでは避けられないし、CGコンプのためにエロスキル取得に奔走するより効率がいいと言われていた。
とはいえゲームでも100を超えるスキルがあり、現実となった今は数百数千と確認されているのでガチャの効率はだいぶ違うだろう。
何より出てくるのは私基準に合わせたモンスターだ。
レベルという概念を持ち出すなら、中盤で戦える程度の強さという事になる。
これがどのくらいかと言えば、警察官でも機動隊とか特殊部隊と言われるレベルの強さだ。
それを女子中学生が、というのは少し目立つかもしれないが、月神をはじめとする各種神の家系と王の家系が手を組んで賭場もしている。
リングの上での戦闘だから回復や救助が楽で、挑戦者がリングの外に出たら攻略失敗扱いでモンスターも消えるからだ。
昔はヤクザが取り仕切ろうとしていたらしいが、スタンピードを起こしそうになったのを名目に建物ごと取り上げたという。
……月神に残ってた記述だと、実際はいちゃもんつけて組を潰して、残党も残さず消して奪い取ったらしいけど。
「けど目立つよな」
「今更でしょ」
蓮野の言葉もごもっとも。
というか月神の一族なら少しくらい目立っておいた方がいいかもしれん。
まだ功績と言えるほどのものがないからな。
ダンジョン踏破はいくつかあるが、その程度じゃまだまだ侮られる。
それを考えると……うん、力試しも悪くないかもしれんな。




