ダンジョン前だよパルプンテ
「よし、行くか」
準備は万端、装備は諸々揃えたし、月神の財力で防御力もアップしている。
うん、新しいアクセサリーと装備を整えてもらったのだ。
特に溶けてしまった制服は代わりを用意してもらって、更に服を溶かすスライムでは分解できないようにした糸を複数仕込んでいる。
おかげで萌え袖になってしまったのは不覚だが……まぁいい、これはこれで使い道がある。
拳のタイミングをずらすとかな。
さて、新しく手に入れた装備を見ておこう。
まずワイヤー並みに太い『キラー』と名付けた糸、目に見える分警戒させるための物であり、同時に殺傷能力も高い代物。
こいつを鞭のように扱うだけで敵は死ぬ。
表面にはノコギリ状の刃をつけてあるので、触れるだけでも危ないし捕獲してから刻むこともできる優れもの。
次に『アラクネ』と名付けた極細のワイヤー、こいつは名前の通り蜘蛛の糸を模したもので罠として優秀だ。
もちろん切れ味も抜群で、防御性能も高いので制服には余すところなく編み込んである。
最悪の場合こいつを胸と腰に巻き付ければギリギリ見えないレベルになるだろうという計算もされている。
そして最後に『アサシン』、アラクネ同様極細だがこっそりと相手に近づけてから首を狙うためのワイヤーで、全部使っている金属の種類が違う金属糸だ。
アサシンは小さな溝が彫られており、毛細管現象で毒を流す事もできるので絞めてよし、切ってよし、流してよしの殺しに特化している。
その分アラクネより強度が落ちるので防御には向いていないが、ともあれ糸を武器として扱う準備は万端である。
他にも普通の糸とか、毛糸とかも手持ちで用意してあるので見せ札も切り札も山盛りだ。
そして普通の武器としては拳銃と刀、そしてナイフ。
この辺は鉄板で、忍術スキルに統合された近接格闘術にも対応している。
ついでにキラーを拳に巻き付けて火力増強してぶん殴る事も可能。
また糸を外骨格に見立てて、筋肉のように編み込んで伸縮させることで一時的な攻撃力上昇も見込める。
ただまぁ、その後筋肉痛で酷い目に合うんだけどな。
師範殴り飛ばした時に腕が全く動かなくなった。
あとは暗器をいくつか仕込んであるのと、毒の類だ。
錬金術を覚えた結果、様々な毒や薬を作る事が出来たのだが……思わぬ副産物というか、後遺症が残ってしまった。
毒にあてられたとかではなく、錬金術のスキルに歯止めがきかなくなった。
苦労はしていないが、そのうちどうにかした方がいいよなという程度の問題。
月神をはじめとした神の名を持つ系譜の人間は基本的に家事全般ができるように仕込まれる。
いつ跡取りがいなくなって代用として表に立つかわからず、その逆で跡取りとしての立場を剥奪される可能性もあるから金銭管理や運用、それから家事全般に最大限の仕事に関わるシステム関係を学ぶ。
その修行中に事件は起こった。
私が料理をしていた時だった。
肉じゃがを作ってみろと言われ、しらたきや玉ねぎを炒め、ジャガイモに肉にと投入していき煮込みながらみりんや醤油を入れて蓋をした直後、スパイシーな香りがしてきた。
不思議に思いながらも規定時間煮込むと、しらたきが消えて美味しそうなカレーが出来上がっていたのである。
スパイスなんて入れていないにもかかわらずだ。
続けざまにオムライスを作った結果、なぜかライスが消えて焼きそばが入ったオムソバになっていたのは序の口。
茶碗蒸しを作っていたらプリンができた、カップラーメンを作ったらお茶漬けになっていた。
インスタントラーメンを茹でたら素麺になった。
極めつけは冷凍からあげをレンチンしたら今川焼が出てきた。
こうして私の作る料理は何がどうなるのかわからなくなったのだ。
紅茶をいれたときにココアが出てきた時は本気でビビったね。
演算系スキル持っている連中集めてどうなるか検証した結果「見当違いの物体が出来上がる」という結論に至ったので察してほしい。
今は料理修業は中止となっているが、出来上がった代物は材料はともかく味は全く問題ないどころか一流と言っても過言ではない出来栄えなのでどうでもよくなってきた。
なんなら義父なんかはよくお茶を淹れてくれと何が出てくるか楽しみにしているようだ。
今のところ一番のハズレは暖かいのに型崩れしていないゼリーが出てきたくらい。
温かい炭酸ゼリーとか言うよくわからない物体が出てきて全員困惑した。
なお「人格排泄ゼリー」と口にした下兄は私と蓮野でボコボコにしておいた。
「で、そっちは」
「万が一の猿轡OK」
「なら行くぞ」
こうしてドッキリ系ダンジョンに突撃を決めたのである。
……多分蓮野のミスで何回かやり直しになるのは覚悟してくべきだろうな。




