母は強し
無事ダンジョンを脱出した俺達は当主こと父に事の経緯を説明する事になった。
「ふむ、命のパワーアップはできたけど想定外も発生か……うちの社員に間引かせるにしてもあそこは秘匿ダンジョンだからね」
「そうねぇ、私が出向いてもいいだけど流石に下層まで行くのは大変よ」
「専門部隊に任せるかい?」
「修治を送り込めばいいと思うわ」
「じゃあそうしよう」
はい、ダンジョンに関しては数秒で結論が出ました。
実際習字を送り込めば大体終わるだろうレベルだしな。
食事会での投擲技能と、道場で見た動きなら1000や2000のゴブリンくらいなら余裕だろう。
その先だってオークやオーガ、上位種のゴブリンにと物理攻撃が通用する相手ばかりだ。
散歩感覚で中層、だいたい10階から15階くらいまで行って帰ってくるだろうさ。
さすがにその先は近接格闘術のスキルだけじゃきついと思うけど。
ゲームと同じなら15階層までが中層扱いされて、15階層からは物理攻撃に耐性のあるモンスターも出てくるはずだ。
確か○○シードって言われる植物型モンスターで、トラップシードという罠に擬態する奴や、ゴーレムシードっていう植物ゴーレムなんかだ。
火属性に弱いという共通点があるけど物理攻撃半減させてくる。
そいつらもエロい事してくるけど、それらを乗り越えた先にエロトラップダンジョンの入り口がある。
「あぁ、けど下層はむずかしいでしょうし……レベリングのために命も一緒についていくのはどうかしら」
ヱ?
「お、お母さん。残念ながら私はまだ実力不足ですし下兄さんの足手まといになるのは間違いないかと……」
「蓮野の録画映像を見せてもらったわ。あれなら修治の足手まといにはならないと思うわ。むしろ修治みたいな格闘一辺倒のいい援護ができると思うの」
待て待て、流石にこの程度であのダンジョンの奥に行くのはきついぞ?
「あ、でしたら蓮野も同行させてほしいです! 本当に私じゃ実力不足ですから!」
「そうね……うん、確かにそれがいいかも! 修治を前に出して、後方支援に命、その命の護衛を蓮野ね! バランスもいいじゃない!」
「待った母さん! だったら兄さんも連れて行きましょう! あれで魔法のスペシャリストよ! 間違いなく役に立つわ!」
お、道連れにした蓮野が更なる道連れを望んでいる。
この調子なら上兄も巻き込まれることになるな。
「確かに最近あの子は会社経営の勉強ばかりだったわね。いい運動になるし兄妹水入らずで遊んでくるといいわ」
……エロ攻撃仕掛けてくる奴がいるダンジョンを遊び感覚かぁ。
この人、たぶんだけど今現在月神家の中で最強なんじゃねえのかな。
「……母さんはね、一人で複数のダンジョンのスタンピード防止を担っているの」
「……マジで?」
小声で話しかけてきた蓮野だったが、やべー事実である。
ゲームならまだしもリアルで複数のダンジョン掛け持ちして、その上でスタンピードを起こさないようにモンスターの間引きをするとか一日複数回ってようやく間に合うかどうかだぞ。
「ちなみに対応部隊は3日かけて一つのダンジョンのスタンピードを防ぐわ」
化け物確定じゃねえか。
「……生きて帰れるかな」
「命の心配もそうだけど、私達は尊厳の問題もあるわよ。母さんには無縁だけど」
そうだよなぁ、初体験の相手がオークとか普通に死にたくなるわ。
むしろ死ぬわ、物理的に。
あいつらのイチモツ、成人男性の腰回りくらいのサイズあるからな。
ちなみにゴブリンは幼稚園児のそれと大差ない。
「やはり男衆を前に出して私達は後方支援が無難か……」
「いざとなったらあの二人を囮にして逃げましょう」
グッと握った拳をカチ合わせて、外道戦術を取ることが決定した。
あえてゲーム的な言い方をするなら上下兄のパーティがメイン、私と蓮野は範囲外からアシストする役割に徹するという事だ。
ピンチになったら逃げる、これ鉄則。
「あぁ、けどその前にパーティがあるのよね。それが終わってから本格的に動くといいわ。それまでは私が瀬戸際で食い止めておいてあげる」
「そこは攻略してくださいよ……」
「いい特訓になると思えばいいわ」
ウフフと笑う母にこちらも乾いた笑みを浮かべるしかできなかった……。




