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神の子の日常  作者: peekbox
伊藤美樹Side
7/11

深まる関係

学校生活は日に日に苦痛になっていった。


クラスでは、私と月人が付き合っていることは公然の秘密となっていた。


「詩織ちゃん、月人くんとはどう?」


「うまくいってる?」


女子たちが興味深そうに聞いてくる。


「うん、すごく優しくしてくれるの」


私の口が勝手に答える。頬を赤らめ、幸せそうな表情を浮かべながら。


——違う!全然優しくない!気持ち悪いだけ!


「いいなあ、月人くんと付き合えて」


「でも、他の子とも付き合ってるんでしょ?平気?」


「全然。月人くんが幸せなら、私も幸せだから」


——嘘!大嘘!


でも、クラスメイトたちは私の言葉を信じている。なんて心の広い彼女だと感心さえしている。


授業中も、私の体は月人ばかり見ている。


彼がノートに何かを書いている姿を、うっとりと眺める。時折振り返ってくれると、目が合ってドキッとする。


——やめて!振り返らないで!


昼休み、月人に呼ばれて屋上へ行く。


そこには他の「彼女たち」もいた。


「詩織ちゃんも来たのね」


美樹が笑顔で迎えてくれる。


「みんなで月人くんを囲んでランチしましょ」


私も輪に加わる。月人の隣に座り、お弁当を広げる。


「月人くん、これ食べて」


私の手が、おかずを彼の口に運ぶ。


「あーん」


——やめて!恥ずかしい!


でも、体は嬉しそうに彼に食べさせている。


他の女の子たちも同じように彼に食べさせる。月人は困ったような顔をしながらも、拒まない。


「月人くんって、本当に優しいよね」


「うん、だから好き」


「私も」


「私も大好き」


女の子たちの会話に、私も加わる。


「月人くんの優しさに、いつも救われてる」


——救われてない!苦しめられてる!


放課後のデートも増えていった。


公園デート、遊園地デート、ショッピングデート。


どのデートでも、私の体は完璧な恋人を演じる。


手をつなぎ、腕を組み、時にはキスをする。


「月人くん、好き」


何度もその言葉を口にする。


彼も私に優しくしてくれる。プレゼントをくれたり、頭を撫でてくれたり。


普通の女の子なら嬉しいのだろう。でも、私にとっては拷問でしかない。


ある日の放課後。


月人と二人で歩いていると、急に雨が降ってきた。


「あ、雨……」


(走ろう)


彼が私の手を引いて走り出す。


最寄りの建物に逃げ込む。それは小さなラブホテルだった。


——嫌!ここは……!


(雨宿りさせてもらおう)


月人がフロントで部屋を取る。


私の体は、恥ずかしそうにしながらも彼について行く。


部屋に入ると、二人きりの空間。


ベッドが大きく場所を取っている。


「タオル使って」


月人がタオルを渡してくれる。相変わらずボソボソと喋るが、静かな部屋では流石に聞き取れる。


「ありがとう」


髪を拭きながら、私の体は彼を見つめる。


濡れた制服が体に張り付いている彼の姿に、なぜかドキドキしてしまう。


——しないで!私の心臓!


「詩織」


彼が近づいてくる。


私の体も、彼に歩み寄る。


そして——


抱きしめ合い、キスをする。


今までより深い、長いキス。


舌が入ってくる感触に、本当は吐き気がする。でも、体は受け入れている。


「月人くん……」


甘い声で彼の名前を呼ぶ。


ベッドに押し倒される。


——やめて!お願い!これ以上は……!


でも、体は抵抗しない。むしろ、彼を求めているかのように振る舞う。


制服のボタンが外される。


肌が露出していく。


彼の手が、私の体に触れる。


——触らないで!気持ち悪い!


でも、体は快感を感じているかのように反応する。


「あ……」


甘い声が漏れる。


「月人くん、好き……」


「詩織も可愛いよ」


彼がボソボソと囁く。


最後まで、私の体は彼を受け入れた。


心が痛みを感じても、不快感を抱いても、体は「快感」を覚える。


涙が流れる。でも、それも「嬉し涙」として、体が流したもの。


終わった後、彼の胸に顔を埋める私。


「幸せ……」


そう呟く口が憎い。


本当は、死にたいくらい辛いのに。

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