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エリシウム山の攻防


 二日後、終結地には俺たちの他にもいくつかの賞金稼ぎチームが着ていた。


「あいつらはキティ・ホーク。アメリカ師団崩れの連中だ。機体はP40、アメリカ師団じゃ良く見る汎用機体だな。そしてあっちはテンペスト、イギリス師団上がりの連中だ。連中の機体は俺たちと同じローラーダッシュを採用し、その速度には定評がある」


 そんな説明を聞きながらマヤの足に寄りかかりタバコを吸っているとそのキティ・ホークの連中が声をかけてくる。


「…よお、誰かと思えばヴェルナーじゃねえか。てめえらもチーム組んだのか? って、九条!」


「…ああ、」


「お前が誰かと組むとはな、んで、そこの嬢ちゃんは?」


「…そいつは俺の妹だ」


「うへ、下手にちょっかいかけたら殺されちまうな、だろ? サムライボーイ」


 ふふっと笑ってわずかに頷くと連中は肩をひそめて去って行った。全部で集まったのは10チームほど、それぞれ3~5機のチームになっていて、総勢は40機ほどだった。有名どころはさっきのキティ・ホークとテンペスト、後は他の街から来た連中もいて、知らない顔も多かった。そこに大型の輸送ヘリが3機、ローター音を響かせながら降りてくる。俺たちはキティ・ホーク、それにテンペストと同じ機体に収容された。


「はい、コーヒー」


「ああ」


 ヘリのキャビンでアスカが水筒に詰めてきたコーヒーを紙コップでもらい、それを啜る。


「うへ、なんだこりゃ。甘い!」


「うるさいな、しょうがないだろ、兄貴が甘いのが好みなんだから。いらなきゃ飲むなよ」


「なんだよすっかり懐いちまって、リーダーは俺なんだぞ?」


「だから? あたしの身内は兄貴だけ、あんたは他人じゃない」


「おまえ、ひどい事言うねぇ」


 アスカはなんだかんだで可愛げがあり、見た目も活発な少女。もう少し育てば美人になるだろう。そんなアスカはあれこれと俺の世話をしてくれるし、謎の生物であるマヤとも仲良くしていた。

 しばらくそうしているとカツカツと足音を響かせ、軍服姿の女が副官らしき男を連れて姿を見せた。


「注目!」


 そう副官が言うが俺たちは軍人ではないので、座ったまま目線だけをそちらに向ける。


「…私が今回の作戦指揮を執るレイラ・フォッカー少佐だ。貴様らには支払う金額に見合う働きを期待する。ではこれより作戦の概要を説明する」


 その説明によれば敵の本拠であるエリシウム山はかなり要塞化が進んでいて、これ以上放置しては手が付けられない状況であるという。敵兵力はおよそ100機、民間機がほとんどだが中には軍用機体もいるという。作戦としては正規軍60機が山の外側から攻め寄せるがこれは牽制、主攻となるのは俺たちで、要塞化された山の中腹に空挺降下するらしい。


「くっそ、あのジジイに騙しやがって!」


「うまい話には裏があるってね」


「けっ、どうせ正規軍の連中は外で適当にお茶を濁すだけ、俺らは敵のど真ん中に放り込まれて死んで来いと言わんばかりさ」


 あちこちで同じように動揺が広がって行く。それをフォッカー少佐が一喝した。


「黙れ! 貴様らは賞金稼ぎ、その命を我々が買い上げた。金を払うからには相応に働いてもらう!」


 ちっとあちこちで舌打ちが聞こえたが少佐は粛々と説明の続きをしていく。攻略ポイントは三つ、その一つに全機降着し、そのCポイントを攻略後、二手に分かれて進むという。俺たち賞金稼ぎグループのリーダーには一番名が売れているテンペストのリチャード・ファルマン元大尉が任命された。

 まずは空爆、先行している爆撃機がエリシウム山のあちこちに爆撃を仕掛けていく。そして正規軍による陽動も始まった。俺たちはそれぞれ機体に乗り込んで空挺降下の準備に入る。輸送ヘリはぎりぎりまで高度を下げて俺たちはパラシュートを使わず直接降下、高度を取ってしまえばパラシュートでの降下中を狙われる。それを回避するすべはなかった。


『チームテンペスト、ダイブ!』


 そう言ってテンペストの5機が降下する、次いでキティホークの5機、それに続いて俺たちデュランダルが降下した。俺の装備は対物ライフルとアサルトライフル、それに腰の太刀。ヴェルナーはアサルトライフルに盾と剣、アスカもアサルトライフルと盾、それに質量のある斧を背中に背負っていた。

 ズシャっと衝撃があり、地表に降着する。既に戦闘は始まっていた。


『へへ、景気よく始まってやがる。俺とアスカは前に出る。トオル、お前はポジションを取って狙撃しろ』


「…了解だ」


 荒れた山肌を走り、通常の機体では移動できない崖を登る。その崖の上でポジションを取った。敵は遮蔽物を多用し、状況は不利。奥の高台に対物ライフルを構えた奴が居たのでそいつを狙撃する。弾丸はそいつの機体を貫き、その機体は高台から落下した。


「奥のスナイパーは倒した」


『了解、流石だな!』


 ヘヴィ・アーマーに盾を構えたヴェルナーとアスカの機体が血路を開き、他のチームがなだれ込む。ここの制圧は完了、すぐさま二手に分かれて進んでいく。アルファチームはテンペストリーダーが率い、俺たちブラボーチームはキティ・ホークリーダーが率いた。


『へへ、こっちの拠点は洞窟になってる。間違いない、物資の集積所だな。ここは俺らが先に行かせてもらうぜ』


『くそ、アメ公が、いいとこどりしやがって』


 そうヴェルナーが愚痴った瞬間、ドンっと大きな音がして洞窟から爆風が噴出した。USSF、アメリカ宇宙軍の特徴的なデルタエンブレムの付いた腕や足が一緒に吹き飛ばされてきた。


『ちっ、欲張るからこうなる! テンペストリーダー、聞こえるか、こちらブラボーチーム、洞窟はトラップ! ブラボーチームは壊滅した!』


『…そうか、健在なのは?』


『俺らデュランダル3人だけだ』


『…こちらも情勢が厳しいな、ポイントAは完全に要塞となっている。血の気の多い連中が何度か攻めたがすべて撃退された。敵機のエンブレムは鉄十字、君の古巣、コンドル団だ。連中は攻めては来ないが守りは固い』


『くそ、判った、うちのサムライをそっちに行かせる。こういう場面での戦いは得意だからな』


『九条を? いいのか?』


『いいも悪いもねえだろ? こっちに置いといても役立たずだからな。行けるな? トオル』


「…問題ない」


『って事だ、こっちは生存者の捜索、ってやべえ、下に居た連中が上がってきてる!』


『…なるほどな、挟み撃ちか。それでコンドル団は仕掛けてこない』


『下の連中は民間機ばかりだ、洞窟でやり過ごして俺たちはケツに食らいつく、そっちも兵を向けてくれやこっちも挟み撃ちさ』


 そんな話を聞きながら俺は爆撃で荒れた斜面を駆け上がる。こうした不整地での戦いは俺とマヤにとっては得意だった。


「マヤ、情報を」


『レーダーはジャミングがかかってます。サーマルと嗅覚で敵位置を算出、表示します』


 コミュニケーションを取るようになったことにより、片言だったマヤの会話スキルは大幅に上昇、そして俺の思考の先を呼んでヘッドマウントディスプレイに情報を表示してくれる。Aポイントは通信であったように要塞化が進み、奥の二つの高台には対物ライフルを構えたスナイパーが配置されていた。そこで俺は崖の垂直面を登り、突き出た尾根になっている場所の裏に身をひそめる。そしてその尾根にさかさまにぶら下がり、ギリギリ狙撃出るだけ身を下から乗り出した。


「気づかれた様子はないな」


 そう言って息を整え、すっと引き金を引いた。スパンっと尾根で銃を構えたスナイパーがひっくり返る。もう一体は射角が厳しいがマヤの助言でその足場を撃ち抜くと高台が崩れそいつは落下していった。


「スナイパーは始末した、突撃するなら今だ」


『了解、我らが勇猛なる大英帝国の騎士たちよ! その名誉にかけてゲルマンの野人どもに礼節を叩き込め!』


 そう言ってチームテンペストの五機は剣を抜いて敵陣に突撃を開始、他のチームのメンバーもそれに続いた。…確か、ヴェルナーがこっちに敵を追い込む的な事、言っていた気がする。…まずいなっと思い崖に上がって向きを変えた。すると向こうからふもとに居た敵のアームズたちが迫ってくる。その数は10機は居た。そこに狙いをつけてタン、タンっと一気ずつ撃破していく。相手は民間機、アーマーに派手なペイントこそしているがその装甲は薄く、脆い。アサルトライフルでも十分に貫通できるだろう。そう思っていると後ろからもヴェルナーたちの攻撃が始まり、背後を取られた敵の一団は混乱状態、そこに斧を掲げたアスカの機体が飛び込んで敵機を次々と破壊していく。ヴェルナーの機体も剣を抜いて盾を構えて突撃した。

 これでOK、そう思い再び要塞を振り返るとこれが大惨事、コンドル団は精強で、味方の機体は次々とやられ、まともに動いているのはテンペストの五人だけ。敵機はまだ10機以上健在でこのままではマズい状況だ。なので岩肌を伝い、敵の背面から対物ライフルを撃ち込んだ。更に一機、走りながら高みを取って狙撃していく。こちらに注意が向いたところで身を隠し、グレネードを投げ込んだ。


『うっしゃあ! 騎兵隊の到着ってな!』


『へへ、ここからは任せて!』


 ヴェルナーとアスカも戦場に到着、これで戦力的には五分と五分。


『ぐうう、隊長!』


 そう言って一機のテンペストが動きを止める。その機体の腹には深々と剣が突き刺さっていた。刺した方はコンドル軍団の制式装備、銀色の騎士だった。その兜には赤いふさふさの羽根飾りがついていた。


『ちいっ! こいつは私が相手をする!』


 その機体の前に飛び出したのは白い羽飾りで兜を飾ったテンペストリーダー、リチャードだった。その間に俺は組みあう敵機の背中を対物ライフルで撃ち抜いていく。ズシャっと崩れ落ちた敵機を踏み越え味方機がまた違う敵と組みあった。


『パワーダウンだと! ちぃぃ!』


 その時テンペストリーダーの腕が切り落とされ、ジャンプして後ろに下がった。


『俺が代わる、コイツとは因縁もあるんでな!』


 代わりに前に出たのはヴェルナー。そのヴェルナーはオープン回線で敵機に呼びかけた。


『シュペルレ団長、俺は、あんたを尊敬してた! なのになぜ!』


『…ヴェルナーか、久しいな。俺がなぜ盗賊にって? …決まっている戦い足りんからさ! その兜はギュンターのモノか、だとしたらお前には俺に挑む資格がある』


『…くそ野郎が、だったらここで死にやがれ!』


 ガチっと噛みあう剣と剣、だが接近戦では盾を持つヴェルナーが有利、そう思えたが敵は機動力をうまく使って優位に立っていた。その間こちらではテンペストの騎士たちがまた一人やられ、その敵をアスカが斧でカチ割っていた。そして俺もポジションを捨て、抜刀して切り込んでいく。高台からジャンプし、落下速度を利用してテンペストの騎士を組みあう敵機の首元から俺の太刀で突き刺した。そして返す刀で隣でもみ合う敵機の足を切断する。そいつはテンペストの騎士によって止めを刺された。これで残りは二機、だがこちらのテンペストの騎士たちもあちこち破損し、これ以上の戦いは無理、アスカが前に出て敵を引き付けそれを俺が後ろから、そう言う形で一機を仕留め、もう一機はじりじりと後退するところを片腕となったテンペストリーダーが射撃、怯んだところをアスカの斧で肩から胴体部分を断ち割られた。


『ふっ、ここまでのようだな。腕を上げたじゃないか、ヴェルナー』


『おとなしく死ね!』


『ふ、また会える日を楽しみにしておく』

 

 そう言って敵機は地面にスモークグレネードを投げつけ、その煙に紛れて撤退した。


『くっそ! 逃がしちまった!』


 こうしてエリシウム山の攻略戦は終わり、生き残ったのはテンペストの三人と俺たちデュランダルの三人だけだった。

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― 新着の感想 ―
初の本格的チーム戦ですね。 斧をぶん回すアスカの勇姿は、是非に録画を。 ……と、冗談はさておき、チーム戦の白熱した感じが出ていて良かったですし、色々因縁もあるんでしょうから今後が楽しみです。 大英帝…
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