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プロローグ


 …かつて、戦争があった。人類は宇宙に進出し、太陽系をその生存圏とすることに成功する。月、火星、それに木星の衛星エウロパ。更には土星の衛星タイタン。氷の惑星天王星や海王星。それらの星々を制し、その資源を利用した。科学技術も大きく進み、地球単体ではありえなかった技術進化と遂げていく。

 そうした繁栄の時期を享受した人類はその太陽系を舞台に二つの勢力に別れ戦い合った。その理由は利害の衝突とも、思想の違いとも、民族的な差別意識とも言われているが、恐らくはそのすべてだろう。

 その戦争は百年近く続き、あらゆる技術が進歩した一方で大半の惑星が大きなダメージを負う事になった。

 対立の主軸は自らの民族的優位を掲げ、独立を果たしたエウロパと人権、平等、そうした事を重視する地球。各々に正義があって各々に戦争を行う事による利益があった。


 地球の日本という島で産まれた俺は当たり前のように兵士となり、当たり前のように兵器を操った。幼いころから日本人としての思想を叩き込まれ、サムライ、そう呼ばれる戦士として成長を遂げた。


 宇宙に進出した人間たちの戦う手段は人型のロボットに乗り込んで戦う事が主流となっていた。宇宙空間の厳しい環境に耐えうるにはそうした新たな体が必要だったからだ。両軍ともに開発競争が進み、かつては大型だった戦闘兵器も小型化され、俺が従軍するころには高さ5m程度にまで小型化が進んでいた。

 それらの兵器はプロテクト・アームズと呼ばれ、いわゆる歩兵として宇宙を駆け巡った。


 俺も、15の従軍し、地球軍の兵士として各地を転戦した。終戦の報せを聞いたのは赤茶けた砂岩の星、激戦区の最前線だった火星での事。…俺は20歳になっていた。


 ――俺の名前は九条トオル、戦う事しかできない俺はこの赤い砂岩の星で、賞金稼ぎとなった。


「よぉ、トオル。仕事はどうだった?」


 そう言う保安官にメモリチップを投げ渡す。それを端末で確認した保安官は俺の端末にクレジットを振り込んだ。現在の火星は戦争時の最前線であった為、荒れ果て、まともな警察機構も存在しない。統合政府から派遣された保安官が現地で俺たちのような賞金稼ぎを募り、凶悪犯に対処していた。

 俺たち賞金稼ぎは軍人崩れがほとんど、軍の支給品のプロテクト・アームズをそのまま持ち出し使っている。そして、凶悪犯たちもそれは同様、軍人崩れ同士が殺し合う、今の火星はそう言う状況だった。仕事は保安官より預かったメモリチップを機体に取り付け賞金首を破壊した記録を持ち帰る仕組み、生存していた場合は連れて帰ればボーナスが出る。だが、ほとんどの場合面倒なので殺してしまう。それが俺たちの日常だった。

 俺の暮らす街、ライトブラザーズ・フィールドは西部開拓時代を模した街でおおよその施設が揃っている。街には自警団も存在し、お揃いのプロテクト・アームズに乗り込み、警備や巡回に当たっていた。俺は酒場でこれまでのツケを支払い、借りているガレージ付きのモーテルへ。そこで愛機である瑞玉の銀のアーマーを外して内部を点検していく。


 プロテクト・アームズは基本、フレームと呼ばれる可動部分にアーマーと呼ばれる装甲を設置して形を作って行く。フレーム自体は民間でも使われていて軍事用だからと性能がそこまで違うものではない。人が乗り込み、5mの巨体を自由に動かし、手足があるので作業機械としては万能、荷役から大規模な工事まで何でもできる。このフレームは広く流通していて、成人ならばほぼ誰もが所有している。特段珍しものではなかった。そのフレームに思い思いのアーマをつける事で個性も出せる、そうした要素も人気の一つだった。


 だが、俺の駆るこのプロテクト・アームズは違う。日本製の特殊フレームを用いているのだ。そのフレームは昆虫のような外骨格式で内部の筋繊維の配置も、構造もほぼ昆虫と同じ造りをしている。それらの構造体は人工的に作り出された生体組織で傷を負っても治癒能力が働き修復する。それらの生体組織に電気信号を送り、動かすのがパイロットである俺の役目だ。

 性能面から言えば他国の内骨格型フレームに比べ格段に軽く、その上出力も大きい。更には外骨格の強靭さも大きく上回る。足は複雑な機構の爪の生えた三本指で、これは崖に捕まって垂直に立つことも可能、その設計は昆虫のアリをモチーフにしていて、自重の重さの20倍程度は持ち上げられ、瞬間的であれば300倍程度の重さのモノを動かせる。つまりこのプロテクトアームズは生きているのだ。


 …だが、これは本当に日本人技術者の悪いクセであると思うが何事もやり過ぎてしまう。その外観はなぜか女性型。顔は装甲マスクに覆われた形であるが、その目は生物のそれだった。そしてご丁寧に光ファイバセンサーの髪の毛までもついている。もちろんプロポーションは完全に女性のそれだ。


 この件については一度技術士官に問いただした事がある。なぜこうも女性に近いフォルムなのかと。その技術士官はこういった。「君は知らないのかな? アリと言うのはその90%以上がメスなのだよ」と。それは関係ないだろうというと「生物をモデルにしている以上、その生態系には敬意を払うべきだ」と帰ってくる。そして、「…我々にもモチベーションと言うのが必要なのだよ。一応彼女たちにも感情らしきものがある、大切にしてくれたまえ」と言って去って行った。


 鎧を全て外し、その女体、いやフレーム素体をふきあげていく。フレームのエネルギー源は砂糖水、人工筋繊維が必要とする糖分は一か月に濃度25%の砂糖水を1リットル。股の間の給水口にペットボトルをセットする。なぜ、ここなのか。

 13歳で軍の養成所に入り三年間、こうしたフレーム素体の世話と、乗り込んでの実施訓練、そして座学での戦術論を学び、体を鍛えることに費やした。フレーム素体はそれぞれの遺伝子情報を元に作られていて、俺以外は扱えない専用機でもある。

 俺の機体の型番はアマテラスtypeⅢ、機体番号は701。戦争末期に作られた最新型でもある。戦国武者を模した銀の鎧は所属していた部隊内でエースとなり、その褒賞としてもらったものだ。その兜は桃形と呼ばれる先のとがった形でエースの証である金色の小さな竜の前立てが付いている。

 足の爪の先まできれいに磨き上げ、フレーム素体を屈ませる。そして今度は上半身の手入れ、まずは邪魔にならないようにファイバー素材の黒髪をゴムで束ね、顔から丁寧に拭いていく。稼働してなくても生きていて、その琥珀色の瞳が付いた人口眼球はじっと俺を見ていた。顔の下半分、鼻と口はマスクのような装甲に覆われているが目の周りには特殊な人工皮膚が張り付けてあり、質感は人の肌のよう。…だから、なぜ?

 それらをふきあげ首回り、そして肩から腕、乗り込まなくとも簡単な支持ならば自立稼働で動いてくれる。胸回り、というか乳房のあたりは柔らかい素材で出来ていて、ご丁寧に乳首までが付いている。ホント日本の研究者のやる事は意味が解らない。内部にはコクピットから体を動かすために必要な電力を供給する小型の水素エンジンに必要な精製水が入っている。だから、なぜそこ?

 そのエンジンは人間で言えば子宮のあたりに取り付けられていた。…確実に導線が長くなるよね、絶対心臓の位置とかにあった方が良いよね。

 ともかく腹回りまでをふきあげて今度は背中。背中には俺が乗り込むための首元から開く形のハッチが付いている。とはいえ全高5mの機体ではそこまでのコクピットスペースを確保できるはずもない。中にはポリマージェルパックが配されていて、バイクのシートのような座面に跨るとゆっくりとハッチがしまり、俺は肉感的なポリマージェルパックに包み込まれる形、情報はヘッドマウントディスプレイに全て表示され、操縦は腕に施されたイメージ・フィードバック・システムにより操縦桿代わりの丸く柔らかな物体にダイレクトに伝わり、思い描いたとおりに機体を動かせる。つかこれおっぱい!

 もちろん俺は技術士官を問い詰めた。彼によればコクピットの形状は女性器に包まれる男性器をイメージしていてあらゆる衝撃からパイロットを守るためのデザインであるという。操縦の為のアダプターは女性の胸を触る時、男性は一番その意思を伝えようとしているという研究結果に基づいての事であるらしい。

 なんか、判るけど、そう言う需要もあるかもしれないけど、戦時中に兵器に組み込む事じゃないよね?普通にロボット型にすればもっとスペース取れるよね! 操縦デバイスはおっぱいである必要ないよね?

 そう言ってはみたが「…察しろ」と一言言って技術士官は去って行った。


 そしてすっごくどうでもいい話だが俺の腕にはナノマシンが注入されていて、それが意思伝達の大きな役割を果たしているんだってさ。へえ、すごいね。


 そしてこの機体には戦略的情報処理を行うAIの他に体を動かす司令塔的な役割を持つ生体脳が付いている。その生体脳は俺の意思をフィードバックし体の各所に電気信号を送る役目。…だが。


『ペットボトルぬいて、はずかしい』


 そう言うたどたどしい言葉で何故か話しかけてくる。無論は発声装置などはついていない、イメージフィードバックを逆流して俺だけに聞こえる声を送ってくるのだ。これは体のどこを触っても起こる現象だった。

 ふっざけんなよ、お前、そう言う事はないって言ってただろ!と技術将校につかみかかるが「命の可能性は無限だよ? あり得ないという事があり得ない。君の機体の脳はかなり生育が進んでいるね。まあ、スペースには余裕があるし問題はないよ?」…いや、問題しかないよね?「ふふ、君はシャイ・ボーイだね。それだけ君は機体に愛されてる、そう言う話さ」と言って技術将校はにっこり笑って去って行った。


『ねえ、ペットボトルとって、はずかしいよ』


「てめえでやれよ! 何でもひと様の手を煩わすんじゃねえ!」


『だって、おんなのこがおまたのペットボトルはずすすがた、ちょっと』


「なんでそう言う事だけ知ってんだよ!」


『あなたのいしきをよみとってるから』


「…はい、わかりました、そうですね、今すぐ作業します!」


 外に出て股にずっぽしハマっているペットボトルを抜き去った。その給水口もやたらに肉感的。ホント技術の無駄遣いだよね。だが、高性能なパッキン、それを追い求めるとこうなったらしい。


 ともかく整備を終え、鎧を着せていく。何故かブラとパンツ的なパーツがあった。絶対研究者たちは狂っている。「…パッキンにはきちんとした蓋をしないと劣化するから。最適解を求めたらたまたまこういう形になっただけさ」…ならブラはいらねえだろ!「そこは君、様式美という物があるだろう? 色は私の趣味で白にしておいたよ」 技術将校の答えはいつも完璧だった。

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― 新着の感想 ―
やたらと下ネタよりのロボット物なんですね。 ちょっと斬新です。
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