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幸せの桜吹雪に想いを乗せて

作者: 佐倉 花恋

1993年5月1日沖縄県那覇市の那覇病院で2つの小さな桜が咲いた。

名前は、さくらとさつき。

先に取り上げられたさくらは、健康そのものだったがさつきの方は、出産前から言われていた通り手足に麻痺と障がいがあるためやはり一生車いす生活になること告げられた。

両親は、しばらく心を痛めたが、2人に幸せな人生を歩んで欲しいと強く思い、試行錯誤を重ね育てて行った。


さくらも幼いながらも母や父と一緒にさつきのお世話をした。

さつきも幼少期からリハビリに励み、そのおかげで日常生活は、一人でおくれるまでになっていた。

互いにくじけそうになったときや間違ったことをしそうになったときは「それは違う!」と本気で怒ったときもある。

中学の頃さつきが障がいのことでいじめられて落ち込んだときもさくらは励ました。


―2020年4月―

春川さくらとさつきは26歳になっていた。さくらは東京港区の介護施設で理学療法士として働いている。

いっぽう、さつきは、車いすで生活しながら、心理カウンセラーとして小学校で働いて港区で暮らしている。                                   

さくらとさつきは、別々に暮らしているが、さつきは週に2回、桜が勤務している施設にリハビリを受けるため、通っている。


18歳のとき2人で上京してそれぞれの道を行きたい。と言ったとき両親から猛反対されたがさつき・さくら「2人で支え合うから大丈夫!と言って上京してきたのだ。


ところが上京して半年後両親が不慮の事故で亡くなった。

両親と最後に交わした会話を思い出して「2人で支え合って生きていこう。」と改めて誓った。


2人は以心伝心なので、何も言わなくても互いの気持ちが手に取るようにわかるので困ったときは何でも相談し合い乗り越え、それぞれが夢を叶えた。

―2020年8月―


ある日、さつきのリハビリの担当が新任の男性に代わることになった。さつきは、とても明るく前向きな性格で、誰とでも仲良くなれる方だったので新人の先生ともすぐに親しくなっていった。

新人の先生はドジなところがあるが、患者さんに一生懸命に寄り添う姿にだんだん、さつきはリハビリの先生に好意を抱くようになった。


ある日のリハビリ中に転倒したときもすぐに足の状態を確認したり、姉を呼んできて説明をしてくれた。彼の迅速な対応に姉と私は心から感謝し、さくら「誠実で良い人だよね!」さつき「本当にそうだね!」と話した。


いっぽうさくらは、新任男性の教育係を任されていた。さくらは真面目で心を開くまでに時間がかかってしまうが、不器用ながら何事も一生懸命にこなすタイプだ

ある日、さくらがリハビリの研究発表会の準備と練習のため、一人で練習していると

彼「大変そうですね。何か僕にできることはありませんか?」と声をかけてきた。


人に頼ることが苦手なさくらは、追い込まれているときでも平気なふりをしてしまう。このときも残業続きで心も体もへとへとだったが、

さくら「ううん。大丈夫よ。一人でやれるからあなたはもう帰って良いよ!」と明るく言った。しかし、

彼「僕は仕事中、ずっとさくら先輩のそばで働いてきたから、先輩は、本当に辛いときこそ、一人で抱え込んで我慢してしまう性格ってことは、見てたら分かります。新人でこんなこと言うのは生意気かもしれませんけど、僕で良かったら、辛いときや苦しいとき、遠慮なく頼ってきて下さい!」と真剣な眼差しで言われた。



今まで、自分がしっかりしなければいけない。と思っていたさくらは、その一言にとても癒された。そして、さくらも仕事のことはもちろん、今まで家族にさえ言えなかった悩み事も彼だけには、打ち明けることができた。


そんな風に親しくなり、さくらも彼と関わっていくなかで彼の人柄に惹かれていき恋心を抱くようになっていった。


-4か月後―

クリスマスを目前に控えたある日、さつきはリハビリ終了後に不意に彼に抱きつき、

さつき「患者と先生っていう関係だから気持ちを伝えたら迷惑かなと思って我慢してたけど、やっぱり大好きだからこれ以上自分に嘘はつきたくないの・・・。」と涙ぐみながら伝えた。

すると

彼「ありがとう。俺もさつきさんのことはとても魅力的で好きだよ・・・。」といってさつきの頭を優しく撫でていた。

実は、その様子をさくらは目撃していた・・・。

さくらは、そろそろ彼に思いを伝えようと考えていたためかなり動揺し傷ついて、ひとりになるたびに泣いていた。

しかし、これまで障がいを乗り越えてひたむきに頑張ってきた妹の姿を一番近くで見てきたさくらは、妹に幸せになってもらいたいと思い、諦めようと誓った。


彼に告白後も、さつきは、リハビリにも仕事にも懸命に取り組んでいた。さつきは、姉が彼に好意を寄せていることを知らなかったため何でも相談できる存在である姉にラインで彼のことを報告した。


さつき:「お姉ちゃん元気にしてる?相談したいことがあるんだ。」


さくら:「元気だよ♪どうしたの?」


さつき:「実は好きな人ができてね…。思い切ってこのあいだその人に告白したんだ。」


さくら:「そうなんだ!頑張ったじゃん!それで彼はなんて?」


さつき「うん・・・・さつきのことはすごく魅力的な人だと思うけど他に好きな人がいるって。」

さくらはそれを見てえっ?と思ったが「そうなんだ…。今度ゆっくり話聞くからご飯でも食べに行こう!」と返信した。


するとさつきから「ありがとう。お姉ちゃんの都合に合わせるよ♪」ときたので「じゃあ日曜日の12時にいつものカフェで待ち合わせね。」と送るとクマがオッケーのポーズをしているスタンプが送られてきた。


そして、日曜日ハートマークの看板が目印のCafé「クローバー」へ向かった。

「クローバー」は、定番の場所でさつきとのランチはいつもここだ。


店に入ると既にさつきの姿があった。少し寂しそうにコーヒーを飲んでいたがをさくらを見つけると普段と変わらない明るい笑顔を見せさつき「お姉ちゃん♪」と声をかけてきた。


私は、ほほ笑みかえしてイスに座りさくら「大丈夫?」と声をかけた。さつきは無言だったのでさくら「このあいだの話詳しく聞かせて。」というとさつきは、好きな人は新人のリハビリの彼であるということを好きになった経緯とともに詳しく話した。

そして驚くべきことを口にした。

さつき「お姉ちゃんも彼のこと好きなんでしょ?」


意表をつかれたさくらは言葉を失った。すると

さつき「お姉ちゃんを見てれば分かるよ。だって双子だもん!」と涙を浮かべながらはにかんでこう続けた。

さつき「私も彼と仲良くなったからいろいろ相談に乗ったりもしてるんだ。恋愛相談にも乗ってるんだけどね、彼シャイだし、妹っていうことがわかってるからはっきりは言わないけど彼はお姉ちゃんのこと好きだと思うよ。」と言った。


それを聞いた

さくら「そうかな・・。仮にそうだとしても、どんな風にアプローチすればいいかわかんないし。」とつぶやくように言った。


すると

さつき「お姉ちゃん口下手だし、私と違って男の人と話すの苦手だもんね。」といたずらっぽく笑いさつき「大丈夫だよ。私がラインでアドバイスするから。」と言った。

少し不安そうな顔でさくら「気持ちは嬉しいけどさつきは、ほんとにそれでいいの?」すると、さつき「うん!大丈夫だよ。だってお姉ちゃん生まれたときからずっと私のこと支えてくれてたじゃん。」


さくらは、物心ついたときから、さつきの障がいのことを子どもながらに理解し、両親の見よう見まねでさつきの手助けをしていた。双子だったため、さくらは両親よりもさつきのことが分かっていたため、さつきはさくらと一緒にひとつずつできることを増やしていった。いつでも二人は一心同体で二人三脚でどんなことも乗り越えてきた。


さくらが理学療法士になろうと思ったのもさつきが生まれて、さつきのお世話をするようになり、リハビリをするために、近くの施設に少しずつではあるが、麻痺が残る足や手を動かせるようになっていく様子を見て感動し、さくらもリハビリの知識や技術を身につけて、誰かの生活のサポートをしたいと思い、理学療法士を目指すようになり、今その夢を叶え、理学療法士としてキャリアを積み、多くの患者さんの生活に寄り添いサポートしている。


さつきが一人暮らしをするようになってからもさくらは時間を見つけてさつきの家に行き、お風呂掃除や晩ごはんのしたくなどひとりでは難しいところを一緒にこなしていった。2人で料理をするのが共通の趣味になっている。

お互いがいるからお互いの今があるといえる。


さつきは、そんなことを思いだしながらこう続けた。

さつき「だからね今度は私がお姉ちゃんの力になりたいの。お姉ちゃんの幸せが私の幸せだから。」と言ってさくらの手を優しく包み込むように握った。

さくら「ほんとに・・・ありがと」とさくらが目に涙を浮かべて言った。

さつきが「あっこのレインボーパフェめっちゃかわいい!お姉ちゃん一緒に食べよ!」と無邪気に笑ったのでさくらは、さつきらしいなと思いながら頷いた。


それからというもの2人はラインで

さくら:「彼からデートに誘われたんだけどこんな服でいいかな?」

(ピンクのスカートに白のニットの写真)

さつき:「かわいいと思うけど上から黒のカーディガンを羽織ったほうが甘辛ミックスコーデになって良いと思うよ!」


さくら:「さすが!さつきはおしゃれだし男友達も多いからアドバイスが的確だねぇ」

さつき:猫がいばっているスタンプを送る


後日


さつき:「お疲れ様♪このあいだのデートどうだった?」

さくら:「お疲れ♪今日の服雰囲気違ってなんだかいいですね!って褒めてもらえたよ!」

さつき:「良かったね♪私のアドバイスが良かったのかな(笑)」

さくら:「かもね(笑)ありがと^^でね、私、彼から結婚を前提にお付合いして下さい。って言ってもらえたよ!」

さつき:「やったね!ほんとにおめでとう!」

さくら:「ほんとありがとう!さつきのおかけだよ!」




-1年後の5月ー

さつきは心を躍らせながら、新幹線から見える景色を眺めていた。ちょうど見ごろを迎えた桜が美しく咲き誇っている。

桜の見ごろは、3月下旬から4月中旬のところがほとんどだが、さくらの結婚式が行われる北海道蝦夷では、蝦夷桜が5月に満開を迎える。


さくらのたっての希望で、さつきとさくらの名前が両方入っている季節と場所で式を挙げることになり、5月に桜が咲き誇る北海道での挙式が決まったのだ。

さつきと祖父母が家族の控室で、これまでの家族の思い出を語っていると、桜色のウエディングドレスに身を包んださくらが現れた。


その瞬間、祖父は涙を浮かべ、祖母は、そっとさくらにハグをして祖母「とっても綺麗よ。本当におめでとう。お父さんとお母さんも絶対喜んでる。」と言った。

さつきは、いつものいたずらっぽい笑顔を浮かべ親指を顔の前に立てた。それを見たさくらも同じポーズで返した。


式は、桜が吹雪が2人の門出を祝うような幻想的な景色の中で行われた。


みんなに祝福されるなかさくらはさつきと目が合い2人は抱き合って喜んだ。そして、さつきは、目に嬉し涙を浮かべながらさつき「お姉ちゃんこれ…。」と言って小さなギフトボックスを渡した。

少し驚きつつもボックスを開けてみると中にはウエディングドレスを身にまとった小さなくまのぬいぐるみが入っていた。足の裏には、「Sakura&Satuki」と刺繍が施されていた。


クマのぬいぐるみは、小さい頃よく母が手作りして2人にプレゼントしたものなのでかたみだった。

さつき「手が上手く動かせないからところどころ糸がほつれてるけど・・・・。」と照れ臭そうにさつきは言った。

さくらはふたたびそっとさつきを抱きしめ、

さくら「ほんとにありがとう!さつきは世界一の妹!!」と言った。


桜吹雪が2人をそっと包んだ。その桜吹雪はまるで互いを思いやるさくらとさつきようでもあり両親の愛情のように優しく暖かかった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 意中の人物が一緒というのは関係がこじれてしまっても仕方がないほどの問題だというのに、揺るぎない姉妹の愛情が伝わってくる二人に心温まりました。 しかし、どんな思いで振られたほうは相談に乗り、…
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