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コバリ・アオヤマの華麗なる黙示録(疾風編)  作者: マツモト・ユウイチ
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世界の理

「そういえば」

「国際宇宙ステーションとかも高度400kmの低軌道を周回していましたね」

「そうだね」

「タイミングが良ければ、地上から見ることができたね」

 まずは、いくつか低軌道衛星を軌道に乗せ、その後、拠点として大型の宇宙ステーションを建設する予定のようだ。

「いくつかパーツを打ち上げて、軌道上で建設することになるが」

「宇宙空間の船外活動には、ロボットを使うことになるだろうね」

「というと、人型ロボットですか?」

「いや?人型にする利点は別に無いのでね」

「いらないでしょ、足とか」

「それもそうか」

「ジ〇ングにも無かったしな、足」

「?」

「ああ、気にしないでマレッサ」

「人が乗り込む2足歩行ロボット兵士が戦うマンガがあったんです」

「人が乗り込む、ということは、結構大きなサイズなのですか?」

「そうですね、17m強?ぐらいだったでしょうか」

「ジ〇ングは足無しで、17mチョイ、だったわね」

「あれ?そうだっけ」

ちょっと考えて、マレッサ

「…そんな大きな2足歩行ロボットが兵器として役に立つとは思えませんが?」

「そうね、役に立たないでしょうね」

んん?という感じのマレッサ

「二乗三乗則を気にしない、○○〇な××××の妄想の産物ね」

コラコラコラ、言い方!

「オイオイ、アオヤマエンタと青山重工で機動〇察っぽい2足歩行の巨大ロボットを作って、遊園地とかに設置してたじゃねぇか、乗れるヤツ」

「ああ、あれは客寄せパンダ」フンッと鼻で笑うコバリ

「全く実用性は無いけど、そんなことは気にしない大きなお友達が、お金を落としてくれるのよ」

「うっわー、薄汚いオトナ」

「ドタドタと走る2足歩行のロボットが戦場の主戦力となる世界や、マホウやらなんやらをフリフリの衣装を着た少女が操る世界がある、とか真に受けてるのは小学生低学年ぐらいまででしょうけど」

「そこに、チョイとリアリティやら人間ドラマを足してやると、大きなお友達は湯水のようにお金をつぎ込んでくれるのよ」ケッケッケと笑う薄汚い大人。

「ああ、あと、エロ要素ね」

なんなの、ビキニアーマーって、馬鹿すぎ。

 そういってくれるなよぉ、と思うアズマ。例えばゲンマがビキニアーマー着用して龍と飛ぶ姿は想像するだけで胸熱だ。でもまぁ、こんなに露出度が高いと戦闘に差し支える、と冷静に拒否されるのは必定だ。

 よく分からないが、ビキニ型鎧の話かと推測し、利点を考えるゲンマ。心臓や肺を守るためと考えれば有用か?とも思うが、今着ている服の胸にも防護用プレートが仕込んである。実用的にはこれで十分だ。


 何を隠そう、ゲンマに良く似た空飛ぶヒロインが活躍するマンガが近年この世界で流行っている。原作ではちゃんと軍服着用だが、マリア曰く、「薄い本」ではあんな格好やこんな格好、させられているらしい。見てみたいような見たくないような…いずれにしろ、本人は知らぬが仏だ。

 マリアやテンマの本もありそうだが、稀人に関しては、教会報道部の公式出版物以外の本は無い。例の第28特別規定に抵触するため、厳格に取り締まられており、「薄い本」業界でさえも絶対のタブーだ。

 「いや、私は全然かまわんのですけどねぇ」「むしろ読んでみたいッス」とか言う色ボケメガネ。私に文才や画力があれば、と本気で悔しがっているが、こんなんが世界最強なのかぁ、とちょっと残念になるアズマ。


 「皆様、そろそろお食事などいかがでしょうか?」と、頃合いを見計らって、若く有能な執事、マカグナがやってくる。立ち居振る舞いから何となく察してはいたが、かなりの強者(つわもの)で、博士の護衛も兼ねているとのこと。「お手伝いします」と自然に席を立つマレッサ、同じく腰を浮かすゲンマを、大丈夫、と軽く肩を押さえまた座らせる。

 すっかりあの2人仲良しだよなぁ、と思うアズマが、ハッとして、あれ、もしかして?とコバリを見る。が、

「アンタはやっぱり分かってない」とコバリにあっさり切り捨てられる。

えーそうかなぁ、と首を捻るアズマを、なるほど分かっていない、と眺めるゲンマ

 所謂「外堀を埋める」という意味合いが無きにしも非ずだが、あの2人は、ただただトマス博士大好き教の信者で、とても話が合うのだ。もう少ししたらマカグナはマレッサの野望に加担するかもしれない、とか思っているが、もちろん余計な事は言わないゲンマ。

 トマス博士は全てお見通しなのかもしれないが、穏やかに若者を見守る、というスタンスのようだ

「さて、晩御飯でもいただこうか」と皆を促し席を立つ。


最初の配膳などはマレッサも手伝っていたが、一緒に食卓に着く。

 トマス博士は昔から、食事は栄養補給ということでバランスさえ良ければ頓着しない、というスタンスのようだが、もちろんマカグナは不味いものを博士に供する事などしない。

本日は魚のグリルをメインに、野菜スティック、温野菜サラダ、具沢山スープなどなど。

食卓でも先程の話題が継続する。

「人型ロボットを実用化するとしたら、人と同じサイズのものになるだろうね」

「兵士とかですか?」使い捨てられるしなぁ、とアズマ

「いや」

「私なら戦闘用に人型のロボットは使わない」

「どう思うかね? マレッサ君」

「そうですね」

「目的にもよりますが、私ならヒトより小さくて機動性の高いものを設計します」

「そちらのほうが開発期間も短く、コストパフォーマンスも良いですね」

 この面子で内緒にする必要もないかもだが、プロトタイプとしてゲンマにテストしてもらっているものがある。一見すると小さな穴が全面に開いている、拳大の黒い球。ゲンマの重力操作で浮かして、移動は穴からエアーを吹き出し、位置を制御しながら目標に忍び寄る。球の中には爆薬、炸裂弾や毒薬、麻酔薬などを仕込む。もっと小さいサイズで自在に操れるものが開発できれば、かなり戦術の幅が広がるだろう。

「超人的なパワーを持つ兵士」野菜スティックをコリコリ齧るコバリ

「西方系民族は生体回路(サーキット)が身体能力向上に偏っているから、まさに私達のイメージする超人兵士そのものだけど」

「そんな彼らも、300年前でさえこの世界の覇者にはなれなかった」

「つまり?」このお魚のタレ?ソース?美味しいなぁ、と舌鼓を打ちながらアズマ

「近代では兵士の白兵戦で勝敗が決まるような戦争なんかない、ということよ」

そりゃあね、無敵の剣豪だって、200m先から狙撃されれば、抵抗する術もなくやられるだろうしな。

「ましてや」

「巨大ロボットが殴りあったり、刀で斬り合うとか、馬鹿すぎるわね」

「ニッポン人は日曜の朝に、デカいロボットは殴り合うもんだと、刷り込まれるんだよ…」

そんな知識を刷り込まれる世界があるのか、とゲンマとマレッサはちょっと気の毒になる。

 17m級の大型ロボット兵団を想像するゲンマ。動力源や制御装置が何処に配置されるかに関わらず、2足歩行のロボットなら片足を撃ち抜けばそれで終わりだ。対重装甲超電磁銃(レールガン)を使えば、私一人でも殲滅できるな、とか考えている。

 おそらく大型の翼竜やオケアノスよりも御しやすい、動きの鈍いデカい的だ。


「マリア君は人の形をしているが…」

「人の形をしているから強い、わけではない」

「まぁ」

「あの()は特別ですから」

とか言ってるコバリも、おそらくその気になればゲンマやマカグナぐらいなら瞬殺だろう。

アズマさんとならいい勝負なのかな?と考えるゲンマ。やはり稀人は特別なのだ。


「セクション3では、悪路や狭所向けに蛇やムカデ、毛虫の移動機構を模したロボットなど開発しているが」

「やはり立体的な場所の移動は6本足が最も合理的だろう」

「時間があれば見せてもらうといい」

「そうですね、ぜひ」頷くコバリ

なるほどなぁ、とアズマ、やはり昆虫のデザインは伊達ではないのだ。


「ヒト型ロボットなら」

「今のところ、ラカビナ所長の領分かな」

所長の専門分野、セクション4、医療部門。

「義肢の開発、ということでしょうか?」

「そうだね、マレッサ君」

「今のところメカニカルな物が主だが、そのうち有機物で作ることになるだろう」

「将来は身体の全てが有機物の代替パーツと交換可能、になるかもしれない」

「脳も含めてね」トントンと自分のアタマを指で突っつく博士

それはもう、ロボットではないなぁ、と皆が思う中、アズマは異様に若い外観の所長について尋ねてみる

「ラカビナ所長は」

「勤続25年ぐらいと伺っていますが…」

「そうだね、彼は非常に優秀で、飛び級で高等学校に入り、一度も主席を譲ることなく卒業して、すぐに中央技術研究所に入所した」

「マレッサ君も同じような経歴だね?」

いえ、そんな、私なんか足下にも…と恐縮するマレッサ。

するってぇとやっぱり40歳弱かぁ、とアズマが考えていると、何かを察したか博士

「所長とコバリ君は、話が合うだろうね」

コバリの金髪が天然じゃないのはお見通しのようだ

「ええ」

「仲良くさせていただいております」

ニッコリ微笑むドS金髪

「明日から、アズマの超高高度における耐性をテストするのですけど」

「所長以下、研究所の皆様にもいろいろお手伝いしていただく予定です」

怖~、と内心慄くアズマ。

ドSの本領発揮というところだが、いずれにしろやらざるを得ないので、諦めてはいる。

 マレッサは先程の身体パーツ交換の話に思いを馳せる。ほぼ歳を取らない博士といつまでも共にいるためには…

 ゲンマは、超高高度の耐性テストの内容をチラッと小耳にはさんで、私なら死んじゃうかも、と思っていたが、楽しそうなコバリと、泰然としているアズマを見て、さすがだな、と感心する。

 話題は尽きないが、明日もあるので本日はお開き、別れ際に博士は、コバリとアズマだけに小声で囁く

「もう少し落ち着いたら」

「この世界、について話そう」

「はい、よろしくお願いします」素直にペコリと頭を下げるアズマ

「…はい、博士」若干、含みのある笑顔のコバリ

内心では、いよいよか、と思っているが、特に余計な事を言わず、優雅に会釈しその場を辞する。


帰り道、アズマの肩をパーンと叩く

「さ、忙しくなるわよ」

「お?おぅ」

 楽しそうなドSの様子から、明日、俺、五体満足で帰れるのかな…と暗澹たる気分になるアズマだった。




「えっ!ココに這入るの?」

「そッスね」

「そうよ」

「もの凄くコワイんですけど」腕組みをしながら、眉根を寄せ、穴を覗き込む。

「コワイッスね」

「そうでしょうね」

顔を見合わせる3人

「じゃあ、先に行くッス」

「続いて飛び込んで来てね」

マリアとテンマは何の躊躇もなく、漆黒の闇へと続く穴へ飛び込む。


 ここは教会本部居住区、テンマの部屋。マリアと待ち合わせして連れてきてもらい、先程、着いたばかりなのだが、待ってました、と床にポッカリ開いた得体の知れない穴に案内された。

もう、しょうがないと腹を括る。

「フンッ!」と気合を入れ飛び込む。


 本日の会議、打ち合わせなど一通りこなし、ここのところ恒例となっている、博士のお宅での晩御飯の後、一旦、宿泊施設の部屋に戻り、アズマに、

「ちょっと、テンマのところへ行ってくるわ」

と、内緒にする必要もないので正直に告げる

「おう、いってらっしゃい」ちょっと訝し気な表情のアズマ

「…特に揉め事では無いよな?」

「もちろん。これからマリアも一緒に、ガールズトークよ」

「そうか、ならいいんだけどな」

「なんなら、アンタも混ざる?」

「いや、遠慮する」

ちょっとまだ何かを疑っているようだが、ま、こちとら嘘はついていない。

ただ、ガールズトークするのは3人ではなく、4人だ。


 ストーンという感じで滑らかな壁面のダクトの中を腕組みして落ちて行く。バサバサと金髪ツインテが上方へ靡く。ミニスカワンピも豪快に捲れ上がり、パンツ丸出しだが、誰も見ていないので気にしない。上を見ると穴がゆっくり閉じていくのが見える、周囲は漆黒の闇だが、下方にマリアとテンマの気配がするので、ちょっと安心だ。

 長い間落ちている感覚だが、実際はそうでもないのだろう。下方に光の穴が見えてきた。マリアが、おそらく念のためだろうが、下で重力操作しているのが分かる。自らも制御発動し落下速度を抑え、ちょっと身嗜みを整える。女性同士とはいえパンツ丸出しは、さすがに憚られる。

 「おぉ?」ダクトから抜けると、そこは30m四方の巨大な部屋に出る。ゆるゆると降下しながら見回す。壁も床も天井もすべて、金属光沢のある青みがかった鈍色の素材だ。下で待つテンマとマリアの横にトンッと降り立って、その場にしゃがみ、ツルツルの床をコンコンッと叩いてみる。

「これは何?」

「え、床ッス」

そうじゃねぇ!素材、素材!とマリアにアイアンクローをかまして、テンマを見るが

「さ、こっちよ」シレっとスルーし、ツカツカと壁面へ向かう。

まぁ、いいや、後で博士に訊こう、と諦めて後へ続く。


 ツルツルの壁面はどの面も同じようにしか見えないが、テンマは迷わずある一面に向かい、目線の高さに手をかざす。と、どこにも継ぎ目が無かったように見える壁の一部が、ガコンッと少しへこみ、横にスライドする。

 音もなく開く扉の先、左手の空間には、漆黒で金属光沢のある素材の巨大な箱が設置されている。高さは3m程度、幅と長さは5mぐらいかな?

 チラリと一瞥し、人が1人寝ているだけ、にしてはデカイ箱だな、と思うが、それはさておき、だ。

 右手を見ると、ここは地下深くにあるはずの室内だが、穏やかな陽光が差す庭園に、地上の宿泊施設のようなテラス席が設えられている。

 そして、青いベレー帽を洒落た丸テーブルに置き、立ち上がる栗毛色の巻毛、ショートカットの小柄で華奢な色白少女。こちらを見る瞳は鮮やかなアメジスト色。

身長140cm程度だろうか、若草色のマキシ丈ワンピが良く似合っている。


「ごきげんよう、コバリ・アオヤマ」

と、落ち着き払った挨拶、見た目とのギャップがすごい。

「…今晩は、夜分に失礼いたします」

優雅に会釈するコバリ。はっきり顔を見たのは初めてだが、なるほど、面影はあるな、と改めて思う。

「初めまして、ではないんスね?」

「そうね」

「1度、ジャイアプールで、お会いしているわ」

ああ、そッスね、とポンと手を叩くマリア

「あと」顔を上げ、少女と視線を合わせるコバリ

「私を()()()()、でしょう?」


「そうね」

「良く、覚えていたわね」

少女の姿が、次第に消える。

と、白い靄のような塊になり、やがて大人の女性の姿へと変貌する。


再び、優雅に、そして深く会釈するコバリ 

「改めて、ご挨拶致します」

この世界に来てから、そこかしこで見る、馴染みのあるその姿


「初めまして、聖イリヤ」


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